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ババア☆レッスン(その4・ため息ごとの、ジュ・テームな声)

 先日、昼の歌舞伎町を歩いていたら「やたらと前髪に命かけてるみたいな女」を見かけた。ヘアアイロン使って、しっかり可愛くアイドル風味に仕上げている。推定年齢19〜20歳くらいだろうか。小動物のようなクリクリの目に、チークを効かせたメイクで幼さを前面に出している。
そんな女が「どうもありがとうございましたぁ〜〜♡」と、ジジイにお礼を言ってる所に出くわしたのだ。
「元・社会科教師」のような風情の、70代くらいの白髪のジジイがその女に「いいんだよ、いいんだよぉ〜〜」と返している。
女の声があまりにも「アニメ風な可愛い声」だったので「あ、これがいわゆるパパ活ってやつか」と、ピンときた。てか、ジジイだからジジ活か。
はたから見てたら「爺さんとその孫」である。
孫ほど齢の離れた女が「きゃ〜〜ん!!」とかアニメ声で甘えてくれるんだから、爺さん、相当カネぶっ込んだろうな。「赤子の手をひねるようなもの」とは、まさにこの事。
 女にとって可愛い声は「武器」になるし「商売道具」としても有効だ。
そして、声が可愛くない女より明らかに得をする。
とはいえ、それで幸せになれるかどうかはまた別問題だが。

 というわけで、お察しの通り、私は自分の声がコンプレックスだ。
「きゃ〜〜ん♡」とか「きゅんきゅん☆」とは程遠い、女の声の裏街道みたいな所を生きてきた。てか、もしかしたら自分に「キャ〜〜!!」という黄色い悲鳴をあげるメンタルがあったとすれば、もうちょっと可愛く声を装ってたのだろうか?どっちにしろ、小学校に上がる前から、私は、きゃあきゃあきゅんきゅんした女の振る舞いが苦手だった。こういう奴は当然のように、スクールカーストの最下層の住人へと成長する。

 ところで「声」と言えば「木嶋佳苗」である。平成時代に起きた佳苗による複数の愛人殺害事件。佳苗の見てくれが「アレ」だったもんだから、世間が「なんでそういう女にたくさんの男達が貢いだのか」これは当時、なかなかの話題になっていた。
 で、結論から言えば、やはりここでも注目したいのが「声」である。
佳苗の裁判を傍聴した、知人の女性編集者が、声を潜めてこう言った。
「・・・・佳苗、声、めっちゃ可愛いんですよ・・・!!」
彼女曰く、自分の近くで傍聴してた男性達も、同じような感想を漏らしてたらしい。
「・・・声、可愛いよな?」「うん、声可愛い・・・」
 佳苗、見た目は確かに「アレ」だったが、自分の声を最大限に武器にして美味しい目にあったのは間違いないと思ってる。その持ち前の「可愛い声」で幸せになれたかどうかは知らんけど(てか、結局なってない)。

 さて、こんな事ばかりツラツラ書いてると「じゃあ、声が可愛くない女の人生は一体どうなるんだ!?」と言われそうなので、いやいや書かせて頂きますよ。
 実は私「自分の声が可愛くなかったおかげで、九死に一生を得た」経験がある。確かあれは24歳くらいの時だったか。
その時私は、若者に人気の「ロフト付きワンルーム」に住んでいた。
それまでは「砂壁・和室・風呂なし」という、若い娘にとっては相当激渋な、湯飲みにこびりついた茶渋のような部屋に住んでいたので、当然私は浮かれてた。毎晩浮かれながら、梯子をのぼったロフト部分に布団を敷いて寝ていたわけだが・・・・・そんなある晩。
とっぷりと熟睡していたはずなのに。
何故か突然、意識が覚醒して目が覚めた、本当に突然に。
当然、なんで?と思ったその直後に、ロフトの梯子の方から「・・・カタン」という音がした。なんだろう?と思って覗いてみたらそこには。
・・・・・下から「知らない男」が、梯子をのぼって来てたのである。
「うおおおおおおおっ!!!うおおおおっっっっっっ!!!うおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!」
部屋中に響く、獣のごときドスのきいた叫び声。
これ、その男の叫び声ではなく「私の叫び声」、である。
私の野太い吠え声を聞いて、男、相当たまげたらしく(そりゃ、いきなり目の前に、寝てると思った住人が顔出して吠えたら腰抜かすわ)とにかく泡食った状態で、玄関ドア外れる勢いで逃げて行った。
 これ、今でこそ笑い話として話せるネタだが、それにつけてもこの状況で「キャアア〜〜〜っっ!!!」という悲鳴だったら、間違いなく男に組み伏せられてたのではないか。もとより「ひいっっ!!!」程度の声しか出なかったら、確実にレイプされて殺されてたかもしれない。
 私は自分の、「野太くて可愛くない声」に救われたのである。
いや、それ以前に、熟睡してたのに突然覚醒させてくれた背後霊とか?ご先祖様に感謝なのだが。

 ところで、これまた全然脈絡のない話なのだが。
昔から個人的に思ってるのが「可愛い声プラス、フランス語、イコール最強」という図式。シャルロット・ゲンズブールやらカヒミ・カリィとか。
なんというか、「ずるい」という感情が湧き上がってくる(笑)。
可愛いウィスパーボイスにフランス語、木嶋佳苗もフランス語を習得してたら、世界を股にかけたパパ活が出来てたかもしれない。
ああ、私も昔は、シャルロットやカヒミみたいな声の女になりたかった。
・・・・などと「過去形」として書いてるが、まぁそういう事だ。
 以前、すごく美形の女性に取材した事があるのだが、彼女はポロリと「キレイとか可愛いって、別にいい事ばっかりじゃないですよ」と漏らしてた。
曰く「子供の頃は、痴漢は当然、さらわれそうになった事もある」「大人になってからもストーカー対策とかめんどくさい」「女受けが悪い」などなど・・・これは多分可愛い声に関しても言えるのではと思ったりもする。
きっと同性から「カワイ子ぶってる、男に媚びてる」と誤解を受けそうだし、「アニメ声うざい」とか「自分の内面てもっとオッサンぽいんだけど」など、人それぞれ思う所があるかもしれない。
 あとは、自分の周りに「別に可愛い声とかじゃないけど、魅力的な女がたくさんいる」というのもデカい。
  
 年齢を重ねる事の良きところって、こんなふうに柔軟に、自分とは違う、そちら側の方々の気持ちも考えられるようになる所か。若い頃よりも楽になれたのは、そういうとこ。

 てなわけで、シャルロットやカヒミもいいけれど、私のダントツ推しのおしゃれウィスパーボイス、小池玉緒「鏡の中の十月」をどうぞ。

 



 

 

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