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自分の看板で仕事に挑む-太陽光発電所のデベロッパーの仕事-

六本木ヒルズライブラリーのオフィスメンバーの磯井俊昭さんは、太陽光発電所の開発を担う四ツ谷キャピタルを2022年10月に起業されました。この度は、磯井さんが起業されるに至った経緯や、発電所の開発とはどのような仕事なのかについてお話を伺いました。

再生可能エネルギーとは…

資源に乏しい日本は、石油、石炭、天然ガスなどの化石燃料がエネルギー供給の8割以上を占めていること、そして、そのほとんどを海外に依存しており、エネルギー自給率は現在10%を下回っていることをご存じですか。
東日本大震災の前は20%近い自給率でしたが、福島の原子力発電所が停止したことにより低下が激しくなったようです。
日本政府は、2030年度に再生可能エネルギー比率を22~24%に引き上げて、自給率も上げていこうとしています。また、2050年までに温室効果ガスの排出を全体としてゼロにするカーボンニュートラルを目指すことを2020年に宣言しています。
このように、再生可能エネルギーの市場は政府の後押しもあり拡大傾向にあります。
※再生可能エネルギーとは、「太陽光・風力・水力・地熱・太陽熱・大気中の熱その他自然界に存する熱・バイオマス」と政令で定められています。
※再生可能エネルギーについては、資源エネルギー庁のサイトをご参照ください。

太陽光発電所の開発

磯井さんは、第二新卒で入社したメーカーでGTCC(ガスタービン・コンバインドサイクル発電プラント)や地熱発電のEPC契約(設計エンジニアリング、調達、建設を一括してプロジェクトとして設備建設工事を請負う契約方式)の担当になったことより電力分野のキャリアをスタートしました。起業する直前は、外資系太陽光デベロッパーの日本のカントリーマネジャーを務められ、2022年10月に起業されました。
では、太陽光発電のデベロッパーとはどのような仕事なのでしょうか。
磯井さんの話を伺い、様々な関係者によって成り立っていることが分かりました。

主な関係者は以下になります。

  • 地権者・地元住民:発電所を作る土地の確保のために、地権者や地元の住民の方々の理解・協力が欠かせません。そのために説明会を開催して、お一人お一人丁寧にお話をされるそうです。

  • 出資者:発電所の開発は莫大な初期投資が必要になるため、その出資者を募ることが必要です。四ツ谷キャピタルも出資していますが、市中銀行などからプロジェクトファイナンスとして出資を促しています。

  • 電力会社・日本卸電力取引所(JPEX):電力会社と系統接続契約をして、JPEXへ発電所で生成したエネルギーを供給しています。

  • 電力需要家:そして最後に電力を購入いただく消費者がいます。

その中で、一番の課題は「発電所を作る土地の確保」だそうです。そのために、地権者や地元の方々のご理解・ご協力が必須となります。
特に農家にとっては、発電所の建設で環境、特に水流が変わる可能性があり、センシティブな問題が多いとのことです。そこで遊休農地や耕作放棄地の活用や、農家とのソーラーシェアリングなど、地元の元々の課題の解決を含めた提案をするなどの工夫が必要とのことです。

そもそも日本は国土は、火山地・丘陵を含む山地の面積が全体の75%を占めています。山を削り活用することは生態系に何らかの影響を与える可能性があるため、四ツ谷キャピタルの開発は平地の物件に限るそうです。
「地球環境のために再生可能エネルギーの開発を進める一方で、環境に悪影響を与える可能性がある」というジレンマの存在を、磯井さんのインタビューで初めて知りました。
同じタイミングで「ノルウェーの風力発電所が、先住民サーミのトナカイ放牧地へ悪影響を与え、先住民の人権を侵害していると、スウェーデンの環境活動家グレタ・トゥンベリさんが抗議活動をしている」という新聞記事を読みました。

「再生可能エネルギーは地球環境にやさしい」と思い込んでいましたが、再生可能エネルギーの開発で解決する問題もあれば、別の問題が発生しているという事実において、そもそも「エネルギー消費量自体を減らす」ことに取り組むべきではないでしょうか。

個人の“顔”が見えることが大切

「発電所をつくる」ことは大きなプロジェクトですが、「開発に携わる人の顔が見えることが大切」と磯井さんが言われます。最後は地元の方々と信頼関係を構築して、「この人だったら大丈夫!」と思ってもらうことだそうです。
その点で、大きな企業よりも小回りがきくベンチャー企業が有利なのだそうです。

「自分の看板で仕事をする」ことを目指す

ところで、磯井さんの今までのキャリアにおいて、2つの「アハ!体験」があったそうです。
一つ目は、外資系企業の日本法人の社長を務めているときに、オーナー社長の厳しさを直接に感じる機会があったことだそうです。その厳しさとは、リスクを負いながら全権限を自分が持っている、「成功も失敗も自分次第」という厳しさだそうです。
二つ目は、会社の先輩から「会社の看板ではなく自分の看板で仕事が出来るようになれ!」という言葉だったそうです。

一つ目の体験により、磯井さんは“雇われ社長”ではなく、いつか自分の会社を持ちたいと思ったそうです。そのために「起業をするぞ!」と周囲に明言されました。3年経った頃に「そろそろ起業しないとまずいな!」と思い、一大奮起して起業を決意したとのことです。「“言霊”は必ずあると思う、だから自分が逃げないために敢えて公言した!」と、磯井さんがおっしゃったことは印象的でした。
そして二つ目は、磯井さんが地権者や地元の方々との信頼関係を構築するプロセスにおいて、しっかりと実現されていると感じました。

磯井さんは起業されてまだ半年ですが、これから手掛けられる開発を楽しみにしたいと思います。

四ツ谷キャピタル代表の磯井俊昭氏


アカデミーヒルズ 熊田ふみ子


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