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本物に触れる大切さ~大人の社会科見学ツアー~

アカデミーヒルズでは、ロバート キャンベルさんにファシリテーターを務めていただき、3回シリーズで「五感でたどる、五感を超える日本の文化」というイベントを開催しました(2023年1月~3月)。
このシリーズは、ロバート キャンベルさんの著書『よむうつわ』を通して日本の文化の本質を読み解くことを目指しました。

第1回は書家の紫舟さん、第2回は江戸浄瑠璃系三味線音楽の源流「一中節」十二世の都一中さん、そして第3回はANREALAGEのデザイナー森永邦彦さんをゲストにお迎えして、多様な視点で日本の文化についてキャンベル氏とお話をいただきました。

そしてこのシリーズの集大成として、4月20日に「大人の社会科見学ツアー」を、各回のセッションにお申込みいただいた方を対象に開催しました。

訪問先は、現在「安宅コレクション名品選101」が開催されている泉屋博古館東京です。

「安宅コレクション名品選101」(3/18~5/21)@泉屋博古館東京

見学ツアーの前半は、『よむうつわ』の取材でキャンベルさんと対談された学芸員の森下愛子さんに、「安宅コレクション名品選101」の解説や取材時の秘話などについて、キャンベルさんとお話いただきました。
そして後半は、閉館後に貸切の状態で、国宝《油滴天目 茶碗》や重要文化財《木葉天目 茶碗》をはじめとする名品の数々をゆっくりと堪能しました。

(左)前半の森下さんとキャンベルさんの対談
(右)後半では閉館後のゆったりとした空間で展覧会を鑑賞

「安宅コレクション」とは、安宅産業株式会社の会長であった安宅英一氏(1901-1994)が会社の事業の一環として1951年から25年かけて収集したと陶磁器961件から成っています。その全てを選び抜いた安宅氏の眼は決して従来の価値観に縛られることのない、ただそこに存在する美を見極めたものだったそうです(パンフレットから一部抜粋)。

「何でも一流のものを見聞きしなさい」
これは安宅氏が残した言葉の1つです。安宅産業の事業の一環として収集されたコレクションは、社員教育の一環でもあったそうです。一流のものを見ることは、言葉では伝えられない、正に「五感による、もしくは五感を超えた」ところに感じる何かが伝わってくるのだと思いました。
その何かを感じとる力が人を育てるのではないでしょうか。
安宅氏の別の言葉に、「人でも、ものでも、結局のところは品ですね。品格が大切です」があります。五感を超えたところに何かを感じとる力の先に品格があるのかもしれないと思いました。

展覧会場に設置された各章のテーマ及び解説

また、パンフレットには、
中国陶磁 美、それは完璧であること。
韓国陶磁 美、それは自然であること。

と記載されています。
この言葉を念頭において鑑賞することで、作品から感じとることが変わってくると思います。それには正しい答えがあるわけではなく、一人ひとりの心の中にあるのではないでしょうか。

今回の見学ツアーは、一流のものを直接に鑑賞できる貴重な機会でした。
そして以前、「読書の素晴らしさ」の記事で「本を読むということは、時空を超えて著者とone-on-oneで対話していること」と記載をしましたが、作品を鑑賞することにもあてはまると思いました。「作品を鑑賞することは、時空を超えて作者(その時代を生きた人たちと)と対話をすること」のような気がします。


アカデミーヒルズ 熊田ふみ子

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