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『捜索者』古き至高の西部劇の違和感と楽しさ

 観てすぐ、普段映画を観るときの文法との大きな違いに、まず戸惑う。物語が進むと、悲劇的な行方と立ち向かうことになる主人公たちを前に、感情移入するというより、その画面の躍動に私は身を任せることになった。そこでリズミカルに挿入される喜劇的場面も、映画を盛り上げる。
 ジョン・フォードの作る画面は、鮮やかな色彩で映画を塗り上げる。また、乗馬での活劇シーンの画面から飛び出さんばかりの迫力は、今テレビで観ても目を見張るものだった。
 正直ジョン・ウェインの俳優としての魅力はそこまで分からなかったが、ヴェラ・マイルズやナタリー・ウッドの美しさは色褪せないものがあった。
 西部劇の傑作中の傑作と呼ばれる本作の流れる時間を、西部劇をほぼ観てこなかった私は、めちゃくちゃ楽しんだ。こういった時代の映画の後、マーロン・ブランドやジェームズ・ディーンが映画のあり方を変え、やがてアメリカン・ニューシネマという方向に進んでいく流れを考えると、よりアメリカ映画が愛おしくなった。見事な映画だった。

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