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ヒップホップの詩人たち(2013)新潮社

郊外を拠点に活動するラッパー15人に焦点を当て、1万字超のロングインタビューに合わせて随所にリリックを配した本書は、560頁にも及ぶ大作だ。作者は『TOKYO STYLE』などで知られる編集者/写真家の都築響一。ZORN THE DARKNESS (現ZORN)やILL-BOSSTINO、田我流など現在も第一線で闘い続けるラッパーの生い立ちや当時の心境がうかがえる点で日本語ラップを深掘りしたい方に薦めたい。

 しかし、個人的には、都築響一らしく“本当はこっちの方がマジョリティなんだけど、メディアには出てこない”ものごとに光を当てているという点において大変興味深く、より価値があると感じている。副題がROADSIDE POETSとある通り、筆者が1995年に木村伊兵衛賞を受賞した『ROADSIDE JAPAN―珍日本紀行」から2023年現在に至るまで、郊外・ロードサイドにフォーカスする姿勢は一貫している。

 そして、彼が指摘する通り、メディアにせよSNSにせよ、本流とされているものこそマイノリティであり、都合良く切り取られたものであると思う。また、傍流とされているものこそが実際はマジョリティであり、リアルなんだと気付かされる一冊だ。

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