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うたうまほう・ゆめとおどる


冬と春がバトンタッチするころ。
なぎちゃんのお誕生日がやってきます。

【当日にパーティをします!ぜひ来てね!】

みんなの元へ招待状が届きました。
どうやら今年はいつもよりスペシャルみたい?
特別なおめかしをして、おともだちも連れて
さあ、パーティ会場へ!


ピューロランドの森 ずっと奥深く
あちらこちらで光る オーロラ色の水晶
光に誘われ つり橋を渡った先に
ひみつの劇場がありました。

「あなたの席は ◯◯番です」
招待状に書かれた番号と同じ椅子に座ります。
あたりをみまわしてみました。
テーブルとソファ、カウンターがあったり
2階には、バルコニーもあります。
「どこでも だれでも たのしめるように」
おもいやりがいっぱいの この劇場は
知恵の樹と妖精たちが作ったそうです。

どこからか音楽が流れています。
聴こえてくるのはぜんぶ、なぎちゃんの歌。
(わあ、どれも雰囲気ぴったりだ)

そうしてわくわく過ごすうちに
歌は少しずつ、小さくなって
光もだんだん、暗くなって
つられてみんなも、声をひそめます。

辺りが一瞬 しん、と静かになりました。

次の瞬間 舞台がパッとあかるくなり
たのしい音楽が流れはじめました。
リズムに合わせて みんなで手拍子!
はずむメロディとクラップに誘われ

\今日の主役、なぎちゃん登場!/

上がる歓声 喝采の渦の中
かろやかに くるくる ニコニコ
ワンステップ あちらに手をふり
ワンステップ こちらに手をふり
《みんな、ようこそ!》
そんな声が聞こえてくるようなダンス
とってもうれしそうに笑っています。

なんてかわいらしいのでしょう!
うっとりと見守ったのでした。



ごあいさつのダンスが終わり
波の音と、鳥の声が聞こえてきました。

なぎちゃんが語りはじめます。

木漏れ日の小道を抜けた先に
綺麗な水色のお花畑と海に囲まれた
一軒の喫茶店がありました。
その扉の先で待っていたのは
「いらっしゃいませ!」

コーヒー・スピカータ!/根本凪

この歌は、なぎちゃんが詞を書きました。
彼女が営むカフェ【喫茶スピカ・リウム】
お店を開くと決めたときに
いっしょに生まれた歌です。
ひとたびうたえば、いつでもどこでも
スピカ・リウムをオープンできるのです。

今夜はじめて開かれた 一晩かぎりの
「スピカ・リウム@ピューロランド店」
そのはずなのに なぜでしょう?
ずっと前からここにあるような気がします。

それに、今日ここへ訪れたときから
不思議に思っていたのです。
ほとんど知らない場所なのに
どうしてこんなに安心するんだろう?

みんな自由でいられる場所
大丈夫だよっ!
心配なんていらない〜!

コーヒー・スピカータ!/根本凪


そっか。

ピューロランドとスピカ・リウムは
こめられてる思いが、よく似てる。

なぎちゃんの歌ったことばで
ふたつはつながったのでした。



なぎちゃんが今日のために考えた
とっておきのお洋服。
みずいろとしろのチェックもよう
きいろとみずいろの水玉もよう
あかいリボン くまさんの耳としっぽ
あっちはふわふわ・こっちはもこもこ
背中にしょってるのは、クッション?

なんだかいつもの服と ちょっとちがう?
それもそのはず。
だって、ここはピューロランド。
なぎちゃんの大好きな
「あの子」がいるところ!

もう起きてるかな?
なぎちゃんといっしょに呼んでみましょう!

\せーのっ! モップ〜〜〜!/

森の中からトコトコ走ってくると
なぎちゃんにむかって、まっしぐら!
(ゴツン!)
あらあら、ぶつかっちゃったみたい

「モップ〜ッ!」
なぎちゃんはギュッ!と、ハグしました。

大きなカニは おともだちのカニカマさん
あたまにかぶったブランケットは
きいろとみずいろの水玉もよう
本日のもうひとりの主役
しろくまの男の子、モップくんの登場です!

今日のお洋服が特別かわいかったのは
モップくんをイメージしたからなのでした。
並んでみると、ふたごみたいにそっくり!
とってもとってもかわいい!

「ちょっとまっててね」
森の奥へ向かうなぎちゃん
追いかけるモップくん
どうしたんだろう?

戻ってきた なぎちゃんの手には
キラキラ光るハートのステッキ!
ぼうけんのはじまりです。

まるもふびよりのモップくん!
(KAWAII!KAWAII!)
ねもとなぎちゃん!
(KAWAII!KAWAII!)
KAWAII FESTIVAL
お祝いしましょう
KAWAII FESTIVAL

KAWAII FESTIVAL ~おいわいびより2024 ver.~

かわいい歌に 息ぴったりなダンス
とびきりキュートなふたりに
おきゃくさんは、みんな夢中!
「かわいい!」の声が森いっぱいに響きます

…おや?

モップくんの目が、半分閉じています。
眠るのが大好きなモップくん
いっぱい踊って、疲れたのかも?
立ったままでウトウトしています。

なぎちゃんもそんなようすに気づきました。
「あれ?モップ?もうねむいの?」
もうちょっと一緒に踊ろ?と声をかけますが
モップくんは、ふるふると頭を横にふって
のそのそ、森に向かって歩きはじめました。

「モ、モップ〜!まって〜!」
あわてて追いかけたけれど、
(もうねむいの、限界なの)
モップくんは今にも閉じそうな目で
なぎちゃんをじっと見つめて…

そのまま帰ってしまいました。

《モップとなぎの大冒険》
まだ出発もしていないのに…
一体、どうなってしまうのでしょう?



「モップ、帰っちゃった…」

なぎちゃんは、ぽつんとつぶやきました。
「いっぱい踊ってくれてたもんね」
「動いたら眠くなるよねぇ…」
モップくんのことは、よく知っています。
起きてくるまで、ゆっくり待つことにしました。


…いや、やっぱり早く起きてもらわなきゃ!
だって、2人で冒険するんですからね。
でも、どうしたら起きてくれるでしょう?

「そうだ、こんなときは!」
おともだちに知恵を借りることにしました。

「おーい!」
森に向かって呼びかけると、
「は〜い!」
すぐに返事がありました。
ふんわりした男の子の声です。

「めれんげくん!」

スピカ・リウムによく遊びにきてくれる
パンケーキが大好きなおともだちです。
めれんげくんはサンリオのみんなとなかよし!
モップを起こす方法も知ってるかも?
さっそく相談してみましょう。

「ふむ…なるほど」
「モップはおともだちが大好きだから」
「おともだちの歌を歌ってみましょう」
「それで起きてくれるはず!」

なるほど!知恵を借りたなぎちゃんは
モップくんのおともだちの歌を歌いました。

手をつなごう みんな わくわくする
忘れないでいてね 君はひとりじゃないよ
希望の花 胸に咲かせて
フワフワ膨らむ 夢にキスしよう
Chu-Chu-Chu

Chu-Chu-Chu/シナモロール

シナモンロールみたいなくるくるしっぽ
しろいこいぬの、シナモンくんの歌です。
ポップなメロディ かわいいダンス
なぎちゃんはやさしい声でうたいます。
モップくんも聴いてくれてるかな?

…ぐっすり眠っているみたいです。



「起きなかったねぇ〜」
なぎちゃんは困ったように笑っています。
もういっかい相談してみましょう。

少し悩んで、めれんげくんはこう答えました。
「そうだ!モップは食べるのも好きなんです」
「だから、食べものの歌はどうですか?」
「お腹が空いて、起きるかも!」

食べものの歌!
なぎちゃんはすぐにいい曲を思いついて
さっそく歌いはじめました。

青椒肉絲
青島麦酒
いっちゃお紹興酒
ほっぺ熱い!

もっかい小籠包
ふーふーしてね
杏仁豆腐
別腹ね

満福デヱト/根本凪

おいしい中華がたくさん出てくる歌です。
お酒を飲んだときみたいに、うっとりと
きもちよさそうにうたう声がステキなのです。
この歌のおわりには、お客さんたちを
いっしょに食事に行かない?と誘うような
たのしい掛け合いがあります。
その声を聞けば、きっと
モップくんも帰ってくるに違いありません。

…モップくん?おーい。



モップくんは、まだ夢の中。
なぎちゃんはもう1曲、
たべものにまつわる歌をうたいました。

すぐそこにあるのに触れられない
遺伝子より深い深海
グレープフルーツジュースの中迷い込んで
待っている

タイニーグレープフルーツ/根本凪

グレープフルーツジュースの味に
心のようすを重ねている歌です。
ピアノに氷や水が混ざった音の中
緩急なめらかに うたい おどる
この歌をうたっているとき、
なぎちゃんはとても綺麗です。

そして、モップくんはというと
…ぐっすり、すやすやですね。




モップくんったら、ぜんぜん起きません。
どうしましょうか、めれんげくん。

「モップはダンスも好きなんです!」
「踊りたくなる曲はどうですか?」

そういうことなら…と
なぎちゃんは考えました。
踊りたい時に聴く あの曲がいいかも?

Colorfulに君と僕で彩って
あれもこれも欲張って
So pretty so cutie
目があうだけで
So sweetie  so fancy
赤くなっちゃう

カラフルデイズ/Beatcats

だいすきなグループ、Beatcatsの歌です。
とってもかわいい歌詞に、
とってもかっこいいダンス
バッチリ決めるのが超楽しい!
この曲が聴こえてくれば、
一緒に踊りたくなるはずです。
ダンスしながら、チラチラ
森の方を見てみたけれど…

これでも、戻ってきそうにありません。
モ、モップ〜…!起きて〜!!



「モップ、ぜんぜん帰ってこないね〜」
なぎちゃんもこれには笑うしかありません。
お客さんもみんな首をひねって、困り顔です。
めれんげくんもお手上げ状態。
「うーんと、ええっと…えーとですね…」
なかなか良いアイデアが浮かばないみたい。

なぎちゃんとめれんげくん
ふたりでうんと考えました。

こうなったら、最後の手段。
『なぎちゃんがどれくらいモップを好きか
 歌で気持ちを伝えて、振り向かせよう!』
なぎちゃんの知っているラブソングを
告白するつもりで歌うことにしたのでした。

恋なんか興味ない君
そんな予感してました!
解釈一致で困っちゃう
困っちゃう 困っちゃう あー
鈍感でも好きだけど
本当はこっち見てほしい
空回り 一方通行だ

それはもう恋じゃん/根本凪

恋を叶えるため、一歩先へ進む歌です。
戸惑っている気持ちを急かすように、
力づよいメロディが背中を押します。
「はやくこっちへきてほしい!」
なぎちゃんの今のモップへの気持ちが
まっすぐな歌声に、表れていたのでした。

そしてもっと気持ちを伝えるために
なぎちゃんは歌をつづけます。

もっと振り向いてもっと足んない
今ほしいのは イミテーション
じっとしてるだけならば
しかけるよ フリムケーション

フリムケーション/根本凪

ふたりの気持ちが通じ合ったあとの歌です。
『安心して受け身にならないで』
『ちゃんと言葉や態度で応えて』
なぎちゃんの明るくて切ない歌声から
そんな思いが伝わってきます。

なかなか戻ってこないモップくん。
この声にふりむいて、もどってきて!



フリムケーションを歌い終わったころ。

森の奥から、トコトコ。
ようやくモップくんが帰ってきました!

「モップ〜!おはよう〜!」
いっぱい寝れた? なぎちゃんが聞くと
(た〜んまり!)
モップくんは両手でおおきく丸を描いて、
たくさん眠った!と答えるのでした。

よかった、よかった!

たんまり眠って元気いっぱいなモップくん。
なぎちゃんにプレゼントがあるそうです。

ぬくぬくしたい もふもふしたい
おやつまだかな? おひるねしよ〜
ごろごろしたら ときどきダンス
ぐーたらだけど ゆるしてね
おつかいするの? つうはんでいい?
ごはんまだかな? おひるねしよ〜
まいにち きまま くるまったまま
「おうちさいこう」 まるもふびより

まるもふきぶん/まるもふびより

モップくんからのプレゼントは
「まるもふきぶん」でした!
のんびりふんわり とってもかわいくて
かざらない気ままな歌詞がステキです。

なぎちゃんはこの歌がだいすき!
モップくんの歌を聴きながら
とってもしあわせそうに踊りました。
ふたりがそろった かわいさときたら
胸がぎゅっと痛くなるほどでした。

モップくんは、ずっと眠っていたのではなく
実はこのときのために、こっそりと
森の奥で練習していたそうなのです。
それを聞いたなぎちゃんは、
モップくんをもっと大好きになりました。



冒険も、そろそろおしまいです。
最後にみんなへごあいさつしよう
と、思ったら。
おや?
モップくんがソワソワしています。

その視線の先を見てみると…
森の奥から、何やら届いたみたいです。

モップくんに(こっちこっち)と
連れられて、なぎちゃんに手渡されたのは
色とりどりのお花のブーケと、
メッセージ入りのアルバム。

それは、もうひとつのサプライズ!
スピカ・リウムに通うお客さんみんなから
なぎちゃんに贈る誕生日プレゼントでした。

「わ〜!?ありがとう〜!」
嬉しいのと驚いたのとで、言葉になりません。
お客さんは、そんななぎちゃんをみて
みんな満足そうに笑っていました。

最後に、記念撮影をしました。
このとき撮った写真は、
なぎちゃんが贈り物と一緒に持ち帰りました。
スピカ・リウムの上に建てられている
なぎちゃんの家で、大切に飾られています。



〈おしまい〉



【あとがき】
この物語は、ほぼノンフィクションです。
いつもはお祝いに絵を描くのですが、
「小説を描いてみよう」と思いついて
今年の生誕祭に行った記憶を元に書きました。

このあとに始まるのは
ピューロランドに繋がる
もうひとつの物語 兼 お手紙です。





サンリオピューロランドは、凪ちゃんにとって
かけがえのない 大切な場所です。
何度も遊びに来ては、元気をもらっています。
そして、素晴らしいショーをいくつも観て

【わたしも、ここで歌いたい】

いつしか、そんな夢を描いていました。

この夢のほかにも、なぎちゃんの中には
叶えたい事がいくつもありました。
そのために、いっしょうけんめい
まいにち歌って、まいにち踊って。
いろんなことに挑戦しました。
ほんとうにたくさん、がんばりました。

あんまりたくさんがんばったので
動けなくなってしまった時がありました。

おうちでおやすみしているあいだに
自分の中にある夢を、もういちど数えました。
あれも、これも。まだまだ残ってる。
きっとほかにも繋がる道はある。
これからできることを、見つけよう。

何も見えなくなったと思っていた暗闇に
ふたたび光が届いたのです。

それからまた、凪ちゃんは動き始めました。
少しずつ、ひとつずつ、確かめながら。
周りの人に力を貸してもらいながら。
今の自分にできる形で、
いくつかの夢を叶えていきました。
その〈いくつか〉の中に
【バーチャルの世界でも歌いたい】
という夢があったのです。

Vtuberの《根本凪》と
《喫茶スピカ・リウム》は
そうやって生まれたのでした。


凪ちゃんがVtuberになって、2年が経ちます。
その間に叶えた夢は、片手では足りません。
そして今年ついに実現した夢
《ピューロランドで生誕祭を開催して、ライブすること》そして《モップと共演すること》

夢につながる架け橋を作っているのは
今からちょうど2年前の今日に、
Vtuberとして生まれた凪ちゃんです。

これからも歌い続けるために、進むべき道を懸命に探し続けていたあの頃。
時に迷うこともあった道の途中途中で、望む夢やまだ見ぬ夢につながる橋を、あちらこちらに架けていっていたのです。

選んだ道の先々で、凪ちゃんは歌います。
その声で、いつかの自分が架けた橋を渡って
ひとつずつ、夢を叶えているのです。


スピカ・リウムがオープンしてから、みんなとたくさん話すようになりました。
自分のことも、たくさん話しました。
そうやってだんだんと、自分の気持ちをありのまま見せられるようになっていったのです。
しばらくして再び現実のステージで歌うようになると、その変化はライブパフォーマンスにも表れていきました。

あの日、ピューロランドのステージに立ってから舞台袖に帰っていくまでのあいだ。
凪ちゃんは夢と踊りつづけて、自分の願っていた景色と幸福を魅せてくれました。
だからみんなライブを通じて、その喜びの大きさを心から感じることができたのです。

マナ先生が生み出してくれた理想の《根本凪》の姿は、最強の武器で、お守りです。
だから現実だと躊躇ってしまうようなことも、バーチャルの自分なら思い切ってやれたりするのです。

自由になれる気持ちや、時に勇気もくれる
《Vtuber・根本凪》という存在。
現実の凪ちゃんにとって、彼女は自分そのものであり、大切なパートナーでもあるのです。
これからも ずっと。


凪ちゃんへ

Vtuberデビュー2周年
スピカ・リウム開店2周年
おめでとうございます

ふたりの《根本凪》が
それぞれの次元で
まほうをうたって
ゆめとおどっている
それを見るのが大好きです
あなたたちと出会えて
私は毎日とても幸福です

ふたりが いつか揃って
同じステージに立つすがたを
この目で見られる日を待ちながら。
-2024年5月1日-

☕️💫

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