タイトルカット171016

夢で会う人

高校時代の友人が出てくる夢を見た。

私は彼と一緒に帰りたい。それを直接言わずになんとかしようとしてるけど、駅まで一緒に帰ることができるかどうかは微妙なところだ。


なぜかこの人は夢によく出てくる。別に恋してたわけでもないし、最近あってるわけでもないし、憎まれ口をたたく相手だったけど、あのころから「その微妙な関係がイイ」って思ってたんだよなあ。

夢の中で、場所はおろか、シチュエーションもよくわからないけど、私は彼と並んで座っていた。

「私、この番組終わったら帰ろうかな~って思ってるんだ」

テレビを見つめながら、様子をみるようにつぶやいてみる。

「腹減ったな~」

彼は私のほしい「会話」ではなく、やはり一方的につぶやく。

「私もおなかすいた~ 途中で食べて帰ってもいいかもな~」

『お、じゃあ一緒になんか食って帰る?』それが期待している応えで、本当に言いたいことだけど、またもはぐらかして誘い受けにもならない微妙なことをつぶやいてしまう。

無言でノートに落書きをしていると、ふとした拍子に彼の白いパーカーの袖にボールペンの先が当たってしまった。

「うわぁああごめん!ちょっとついちゃった」あわててあやまると、「いいよ」と笑っている。

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なつかしいな、確かにいつもこんな感じだったんだ。目が覚めてからもまだ、目を閉じてうつらうつらとすれば、同じ夢の続きを見られる。でも、二人ともまだ帰ろうとしないし、決定的な約束もしないまま、テレビ番組はもうすぐ終わってしまうのだ。

あのころ私には別の「好きな人」がいたし、向こうにも彼女がいるような噂があって、でもその割には彼女がいる人っぽくない行動しかしてなかったり、私も好きな人にはフラれて冷たくされっぱなしでよくわかんなくなっていた。

高校の時、結局彼とは最後まで「微妙な距離感の友達」だったし、誘ったことも誘われたこともないのだけど、

私がどうして気軽に声をかけられなかったのかをいま思い起こしてみれば、

断られたら「私は彼のことをどう思っているか」気づいてしまうという怖さがあったんじゃないだろうか。

「は? 一緒に……?帰らねーよ」と断られたらきっと悲しくて、でもその悲しさは自分でも予想していなくて、悲しいということは彼のことを好きなんだと……気づいてしまいそうな、そんな感じ? しかも断られているということは、向こうは一緒に帰りたいとは思ってないということになる。すごいつらい思いをしそうだ。


でもきっと、今になって考えれば「気軽に誘って一緒に帰ったりすれば楽しかったのに」と、ちょっと後悔しているんだろうな。

それでやたらと夢に出てくるんだろう。


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その相手の人は、前にエッセイマンガで描いたエピソードの人ですよ。

漫画のほうも良かったらどうぞ。

【まんが】バレンタインの思い出。【エッセイ】|藤村阿智 AchiFujimura|


偶然一緒に帰ることはよくあったんだよな~。同じ方向で同じ列車に乗るんだ。だからこそ、毎回「偶然だけどちょっとうれしい」っていう、責任のない幸運を狙ってしまっていたのかもしれない。申し込まなくても、勇気を出さなくてもラッキーさえあればいいことがあるっていう……

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余談

同じ方向の列車にのるし、(私は高校の最寄駅から4番目が自宅の最寄り駅、彼は12番目が最寄り駅、私は12分乗車でつくけど彼は50分乗らないとつかない、)しかも列車は1時間に1本しかない、という条件だと結構一緒になるんですよね……毎回おしゃべりしたりするわけではないけど。


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