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男を見る目?をほめられた話

急に思い出した話。
3月4月は学生時代を良く思い出すなあ。卒業・進学などイベントに絡めたエピソードを、季節と同時に思い出すことができるからだろうか。ほかの思い出は「何月だったか」はっきりしないことも多いものだ。

私は中学生の時片思いをしていて、クラスの男子の一人をずっと好きだったわけだけど、どうして好きになったかきっかけは思い出せない。同じ部活で、よくふざけたりしてるうちになんとなく好きになっちゃったという感じだろうか。

でも好きだからと言って何をしたいわけでもないから、どうしたらいいのかもわかんなかったけど、まんがや小説で見たように「好きになったらいつか思いを伝えるもの」「相手にも好きになってもらえたらうれしい」と考えるようになっていた。

完全にダダ洩れだった私の恋心は、自分の秘密になど到底できず、「好きな人本人に言わなければ告白ではないのだから良い」と思っていたのか、本人以外のほとんどの人に知られるところとなっていた(たぶん自分で積極的に人に言ってた……)。今から思い出すと、あれは好かれた方もやりにくいだろうなあと思う。小学校の時 私に好意を向けていた?Qくん(前回のnote参照)の時と比べれば、周りがやたらとくっつけようとしない程度に大人になっていたのでよかったけど。

知られていたせいか、好きな人からは避けられていた。たまに仲良くしてくれることもあって舞い上がるんだけど、時々ひどいことを言われて突き放されては落ち込んでいた。「きもい!」「ちかよるな!」「こっちみんな!」みたいなことをよく言われていた。

「男の子は~女の子に好かれて~どうしたらいいかわかんなくて~照れてそんな反応に~なっちゃうんだよぉ」

と! 周りには言われることもあるけれど! 私にはわかる、あれはガチで嫌がっていたんだ……照れとかそういうんじゃないって、感情を向けられた方はわかるでしょ。本当に嫌われてたんだって。

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担任の先生(男)と私は仲が良かったので(先生は皆と仲良くて、いろんな話を聞いてくれていたと思う)恋愛相談みたいなのもたまにはしていた。

「阿智さんはさ~、あいつのどこがいいの。好きなのをやめちゃってもいいんじゃない?」

先生はいつもそういう感じのことを言っていた。彼のことを悪く言ってるというわけではなくて、「アイツも本来いいやつだけど、あわなそうだからやめておいたら」っていうようなニュアンスで。

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でも中学生の女子としては、好きな人をコロコロ変えるのは良くないことだと刷り込まれた感情があった。まんがの登場人物だって、みんないちずだからこそ、のちに幸せになってるんじゃないか。

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中学三年の秋に、詳細は忘れたけど、決定的に「こりゃ、好きでいるのもダメなんだな」という出来事があって(多分みんなの前でひどくののしられたんだと思う)私は彼に「ごめんね、ごめんね」とあやまって、平気な感じで教室を出たんだけど……

「ウワーー!」というどこにもやり場のない気持ちで、廊下の窓から中庭を眺めて、ちょっとだけ泣いてしまった。

気づいたら、そんな私の隣に同じクラスのとある男子がいて、その人が
「あっ 阿智さんあれ見て! すごく真っ赤じゃない?葉っぱ!!」
と、中庭の木の……まあ普段だったら気にしなそうなものに興奮した様子で私にも見せようとしてくるわけですよ。

「あ~……ほんとだきれいだね~」
「ねえ!きれいだね!あんなに赤くなるもんなんだね!!」

その人はそうやって少しの間、中庭の木を一緒に見た後、私の肩をポンポンして無言で去って行った。

そうか、さっきの出来事を見ていて、私を慰めてくれたんだな。いい人じゃないか。いい人じゃないか……

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いい人だと気づいてしまった。

さっき別の男の子に失恋して泣いていたのに、そのあと慰めてくれた男の子のことがどんどん気になってしまう。

「慰めてくれた彼はどんな人だっけ?」

あらためて文集など読んでみる。登山の感想文が書いてある。
好きだった人の文章は「登山はつまらない。山に登っても疲れる。一番楽しかったのは山小屋でやったトランプ」と書いてあったが
慰めてくれた人の文章は「登山楽しい。リスを見かけて興奮した。景色もすごくよかった。楽しかった」と本当に楽しそうに綴られている。

「ああ~! 私、この人すきだ!!」

新しい恋の始まりである!!(笑)

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卒業式も終わり、クラスのみんなで寿司屋に集まってお疲れ様会が開かれた。保護者も担任の先生も一緒。宴もたけなわ、お店の外に出て涼んでいる先生と二人きりになった。

「阿智さん好きな人が変わったんでしょ。誰にしたの……」

そう、私は今度好きになった人のことをむやみやたらに言わなかった。
ちょっとは学習したのである。

先生には教えてもいいなと思って。

「あのね、S君だよ」

そういうと先生はとっても笑顔になって、

「阿智さん、男を見る目があるよ。あいついいヤツなんだ、本当にいいヤツだよ。あいつのこと好きになるなんて見る目があるなあ。いいぞ……!」

前の人の恋愛相談と全然テンションが違う先生(笑)
なんかちょっとうれしい気持ちになった。

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その後高校に入った私は、新しい場所に浮かれてS君にはなにも行動しないまま終わってしまったけど、「誰かを好きになったことを褒められる」といういい思い出がひとつ残ったのだった。



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