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【植栽家の日常】20240314 翻訳の仕事もしたいなと考えたりなど。「デレク・ジャーマンの庭」を巡って



【「デレク・ジャーマンの庭」を巡る複雑な想い】

1990年代半ば、私が園芸にハマるきっかけになった一冊の本があります。

映画監督 デレク・ジャーマンが人生の最後にこの世界に創り出した庭の記録「Derek Jarman's Garden」。

この本の初版発売当初、たまたま渋谷のレコード屋さんに行ったついでに(なんと当時は趣味とプチ副業でクラブDJをしていた😅)立ち寄ったPARCOブックセンターの洋書コーナーに、発売されたばかりのこの本が平積みにされていて一目惚れ!

「庭と植物で人生を語る表現というものがあったのか!」とただただ衝撃で、一気に園芸にハマり、1990年代後半には庭のない東京暮らしを離れ、夢を抱いて実家(と庭)のある群馬県に戻りました。

その夢とは裏腹に、私の人生でもとても辛くて暗い10年ほどの期間がありましたが、ただ趣味の園芸で、自分の自然観とか人生観とかといった考えを庭の植物に投影していたことで紆余曲折はありましたが、植物と関わっていきている現在の私がいるのだと思います。

ある意味、私の人生を方向づけた大切な1冊。そういう本って一生のうちでもなかなか出会えるものではありませんし、一生出会えない人もたくさんいるでしょう。

あの日たまたまPARCOブックセンターで「Derek Jarman's Garden」に出会っていなかったら、たぶん私が自著の園芸書を出版することなんてなかったでしょうし、普通に東京の外資系企業勤めで、波風のない暮らしを選んでいたことと思います。

私は小学生の頃、(田舎で全く娯楽がなかったこともあり)地元の野山に入って山野草観察するのが好きでした。貧乏でしたが意外と教養の大切さを理解していた両親が図鑑の全集を買い与えてくれて、野山で見た植物を図鑑で照合したりしていて、小学校の低学年時には植物図鑑と魚の図鑑の内容はほぼ丸暗記していました(たいへん趣味が偏っている😅)。

野生のサラシナショウマのお香のような花の香りとかマムシグサの森林でのダークなラスボスな圧倒的存在感とか、眼に見えるようなスピードで成長するゼンマイの不気味な芽吹きなど、植物の神秘に魅せられましたし、植物図鑑に載っている園芸植物にも子供ながらにすごく興味を抱き、小学生ながらに親におねだりして球根を買ってもらったりして、プチ園芸をしていました。

その後、小学校の高学年くらいから「Derek Jarman's Garden」に出会うその日まではまったく植物からは離れた生活をしていましたが、幼い頃のフィールドでの原体験と「自分は植物のことを実地でも教養でもものすごく知っている」という根拠のない自信はいつも心のどこかにマグマのようにくすぶっていたように思います。

「Derek Jarman's Garden」との出会いで、私の心の内にある植物の原体験と「植物を介して思想を伝えたい」という抑えようのなり表現への欲望が結びついて、一気に園芸への情熱が発火してしまったのですね。

こんな風に園芸の世界に突っ込む人ってあまりいないでしょうね😅

洋書版の発売からしばらくしてから、光琳社出版から翻訳版も私の発売されました。個人的な感想としては、その日本語訳からは原著から伝わる命や生へのリアリティやデレク自身の言葉のニュアンス、全編を覆う悲しいまでの美しさ掛け替えのない表現の閃き・輝きがイマイチ得られませんでした。

その後、光琳社出版の会社自体がなくなり、この翻訳版も長らく絶版となっていました。

機会があれば(今から思えば「たられば」、だった)、私自身が本書の新訳をしたいなといつも心の隅で考えていたのですが、なんと、2024年4月に山内朋樹氏による新訳で「デレク・ジャーマンの庭」が復刊するとのこと!

新しい日本語訳に触れられるというのは長年の「Derek Jarman's Garden」ファンとして嬉しいとともに、「以前から積極的に新訳の営業を出版社にしておけばよかった」という、プチ残念な気持ちもあってなんだか複雑な思いでした。

とはいえ、amazonで予約開始初日に真っ先に山内さん新訳版を予約してしまいましたけど😅

そんなこんなで、私も執筆を仕事のひとつにしているのと、心から大切に想っている園芸洋書がいくつもあるので、人生の後悔がないように、「この本は自分の言葉で訳したい」という本は積極的に翻訳をしていった方がよいなと、前向きに考えが改まりました。

私の最初の著書のラストも「Derek Jarman's Garden」からの引用で締め括っています。

「Derek Jarman's Garden」の新訳の機会を逸してしまったのは残念ではありますが、今回の件で翻訳のお仕事にも積極的に取り組んでいきたい気持ちになれたのも「Derek Jarman's Garden」のおかげのような気がします。そういった意味でも私の人生に影響を与え続けて、私の人生を新しい方向に導き続けている一冊といえるでしょう。



今日のピアノ練習覚え書き

昨日は頭を使う仕事が早朝から1日続き、脳疲労がキツくてあまり良いピアノ練習ができませんでした。
来週、本番がひとつあるので、今日は集中力高めて練習の質を上げていきました。

【ウォーミングアップ】

ハノンのスケール系全調 メトロノーム120

【ツェルニー 30番 10、19、20番】


【坂本龍一 「andata」】

次のThe sheltering sky と合わせて舞台に乗せるプログラムにしたくて、2曲連続で弾きました。この曲は声部分けを意識してメンテモード

【坂本龍一 「The sheltering sky」】

今日はお休み。

【スクリャービン エチュードop.2-1】

この曲は主声部の歌が連綿ときこえるように、自身の耳でもよく聴きながら弾く練習。

【パスカル・ヒメノ 演奏会用リズムエチュード 1-1 ファンキー、1-3 ボレロ、1-2 ブレリア】

ファンキーはメトロノームの速度を変えて数パターン通しとラストの部分練習。
ボレロはゆっくり楽譜をしっかり読みながら通し。
ブレリアはまず曲になれるためにガタガタでもラストまでゆっくり通し。

【ベートーヴェン 創作主題による32の変奏曲】

主題〜第26変奏まで。

【スクリャービン エチュードop.8-11、12】

11番をゆっくり通し。最近12番にまで手が回らなくなってきていますが、その内レイズしていきたいと思います。

【バッハ トッカータ ホ短調 bwv 914】

今日は1~4ページを弾きました。

【ドビュッシー 版画全曲】

3曲ともメトロノームに合わせて通し。

【ラフマニノフ 楽興の時 第3、4番】

3番を暗譜で、ドラマティックな表現を意識して通す練習と、4番をゆっくりメトロノームで歌の部分を強調して超絶ゆっくり綺麗に弾く練習。

【スカルラッティ ソナタ K.466】

完成速度のメトロノームに合わせて弾く練習。

【ショパン バラード第2番 op.38】

8~10ページ。


【スカルラッティ ソナタ K.87】

超絶ゆっくり1回通し。


【今日の読書】

前々から読みたいと思っていたのですが電子書籍版がなくて後回しになっていた1冊。この後来年春に向けて取り組む植栽案件に関連のある内容なので、設計に向けてのインプットもかねて読み始めました。


最後に私 太田敦雄の著作や掲載誌をいくつかご紹介します。
2024年1月16日発売(本記事執筆時点では発売前)のガーデニング雑誌「Garden&Garden vol.88 (Spring 2024)」。
巻頭特集「風景ガーデニング」にて、私 太田敦雄 / ACID NATURE 乙庭 を8ページにわたり掲載いただいています。私の設計案件の中でもこれまで一般誌で解説紹介していない2つの住宅を実例に写真豊富に、自分が思い描く植栽風景を形にしていく思考のコツなどについて解説しています。私のページ以外も人気ガーデナー、ガーデンデザイナーさんの多様な植栽事例をお楽しみいただけます。


私と、おぎはら植物園の荻原範雄さん、フローラ黒田園芸の黒田健太郎さん・和義さんご兄弟との共著作「グリーントータルプランツブック」。前半の1/3を私が執筆担当しており、実例も交えた植栽論と植物の解説をしています。


私の最初の著作本「刺激的・ガーデンプランツブック」は、出版社のご都合で現在絶版となっていますが、この本に書いた内容も含めて、今後の出版物に盛り込んで、なんらかの形で情報としてこれからも手に入るようにはしていきたいと思っています。


noteの「乙庭植物図鑑」では、これまでの著書では解説していない植物も積極的に取り上げていく予定です。
自分だけの特別なお庭造りの参考になれば幸いです😊✨


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