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丁寧な人を見て、丁寧に生きようと思った

ひかり号は難しい。

どこに駅に停車するのか、さっぱり分からない。
のぞみ号は、東京-品川-新横浜-名古屋-京都-新大阪…、こだま号は各駅停車。ひかり号は?

豊橋駅から東京方面に向かうひかり号は、2時間に1本。ホームに到着したとき、既にひかり号はドアを開けて待っていた。予定では19分後のこだま号に乗る予定だったのだけど。

目的地の新横浜までは1駅65分、こだま号だと、、、今さら考えるのは止めておこう。

5号車自由席、2人掛けの窓側に座り駅弁を開く。空席があちこちに。空いている車内は心地良い。早く到着するし、空いている。ラッキーに恵まれた土曜日の夕方だった。

*

「ホットコーヒーにビール、サンドイッチはいかがですか」

豊橋駅を出発してから20分を過ぎたころ、まもなく静岡駅を通過するころだ。

ふと顔を上げてみると、端整な顔立ちの青年がワゴンを押している。
胸には「研修生」のバッヂを付けて。

車内にゆとりがあると、お客さんの財布も緩んでしまうのだろうか。
あちこちで声が掛かっていた。

3メートルほど後ろを、先輩パーサーが見守る。
緊張しながらも、丁寧に商品の受け渡しをする彼を見て、微笑ましい気持ちになったのは僕だけではないはずだ。

左手首にはスイスの鉄道に使われているデザインの時計。
なんとなく彼のことが想像できた。

僕も買いそびれたお土産を購入。
遠くから見ていた通り、丁寧に優しく対応してもらったのだ。

*

時間よりも、空席よりも、車内販売のお兄さんに会えたことが一番嬉しかった。こだま号には車内販売が無い。タイミングよく乗れたからこその出会いだった。

天気も悪く、ちょっとしたトラブルもあり、心が乱れていたけれど。いつの間にか平常運転になっていたのは彼のおかげ。それに気付いた瞬間に、自分がちっぽけで、みじめに感じてしまった。

ラッキーがこれほどまでに重なるか、神様からのボーナスだと思える日、いい思い出ができた。

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