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家事とお金の関係・最終回

 家事とお金の関係についてのコラムも4回目。そろそろ結論に入りたいと思います。前回は、主婦の問題を書きました。

 主婦が報われにくいことは、おそらく今、仕事を持っているかどうかではなく、女性が家事を担う大変さにつながっています。なぜなら、主婦の時代に家事を全部女性が担うようになったことが尾を引き、主婦に育てられた共働きの女性も、つい家事を背負ってしまう、主婦に育てられた夫が家事に手を出さないといった問題につながっているからです。

 実は昭和半ばに多数派になった主婦や夫の多くは、農家や商売をする自営業の親の元で育った人でした。今の世代が親の時代のやり方に縛られてしまうのに、親の世代は祖父母の世代のやり方と違う暮らし方をすることができた。それはなぜでしょうか?

ラクをしたいのは誰でも同じ

 理由の一つは、住んでいる社会があまり変わらないので、自分が親とは違う生き方を選んでいることに、気づきにくいからです。都会に生まれ育って、同じ町かどうかはともかく、都会で暮らす。サラリーマンの親のもとで育って、夫もサラリーマン。

 昭和の半ばには、農家出身でサラリーマンやその妻になった人がたくさんいました。高度経済成長で企業社会がとても大きくなったからです。生活様式も、土間のキッチンから板の間へ、手作業の家事が家電に任せるなどの変化が大きかった。だから親の生き方と自分は違うとわかっていたのです。

 しかし、その後は大きな生活の変化が見えなくなっていきます。そして、サラリーマンになった夫は、まさに父と同じ道です。父が家庭で何もしていなかったら、家事をする自分をイメージしにくい。手伝った子ども時代もなければ、やり方もわからないかもしれません。それに、本音では家事をしないほうがラクだとわかっているから、手を出さないのです。

 共働きになった妻は、お母さんと同じか、あるいはパートやフルタイムのお母さんだったかわかりません。一つ気をつけたいのは、昭和の時代、既婚女性は、夫の許可をもらって「働かせてもらっていた」ことです。

 高度成長期以降、女性は結婚して主婦になり子育てをするもの、と「正しい」生き方が奨励されました。だから、パートやフルタイムで勤める女性は、それが家計の補助であったとしても、本業である主婦業をおろそかにしないことを約束して初めて、仕事を持つことができました。今もそうやって働く女性はいるようですが。

 その価値観の中なので、フルタイムで働いていても早起き、あるいは深夜まで起きて家事をこなし、家族の弁当までつくったパーフェクトウーマンがたくさんいた。だから、お母さんが主婦だったか仕事を持つ女性だったかに関わらず、女性は家事を担うものと背中で見せたお母さんが多かったのです。

 今はそんな働き方は無茶だし不公平だと思う人が主流になりました。だから、家事を省力化する方法を探る、夫の協力を仰ぐ方向で考える人が多いのです。家計を自分も背負っている意識を持てているから、女性だってラクをしたいという正直な気持ちが出てくるのです

昔の家事から学べること

 そこで見直したいのが、サラリーマンではなかった祖父母の世代、人によっては曽祖父母の世代の家庭の回し方です。もちろんその時代は家父長制で父親がいばっていましたから、そこは学びません。おいしいとこどりをしようと思ってみてみると、知恵がちゃんとあります。

 例えば私の祖父母の家は、農家でした。日々の家事の大半は祖母が行っていましたが、薪集めや薪割りは祖父や伯父の仕事でした。祖父は何度も家をリフォームしていましたが、その采配も祖父が行っていました。たまのごちそうで飼っていた鶏を絞めるのも男の仕事でした。力仕事や汚れ仕事は男たちのものです。

 農作業は夫婦で行い、収穫や草取りは子どもたちも手伝いました。山へ山菜やきのこを採りに行くのも祖母の仕事ですが、子どもたちもやっていました。干して保存食にするのは祖母です。料理は子どもたちも手伝います。料理好きな叔父は、私の母より熱心に料理を手伝ったり、ときに任されたりもしていたようです。

 昔は手作業で家事をしていましたし、家業も忙しかったので、家事は家族みんなができることを行って、みんなで家庭を支えていたのです

 今、夫が一人で家計を担う家庭は少数派になりました。家庭はみんなで支えなければならない時代が再びやってきたのです。そして、昭和の時代の家事専任の主婦と仕事専任の夫は、コミュニケーションが少ない場合が多いといった問題も明らかになってきました。共有していることが少ないのに、会話が弾まないのは仕方がないことだったのです。

 家事は生活すれば必ず発生します。誰かがやらないといけません。一人で背負うと大変ですが、分担する、外注するなどすれば、ラクになります。そして分担するとよいのは、コミュニケーションが生まれることです。「これやっておいてね」ということもあれば、「やってくれてありがとう」ということもある。やり方を相談したり、打ち合わせが必要な場合もある。共同作業にはコミュニケーションがつきものです。一緒にやっている連帯感も生まれます。実は家事の分担はいいことがたくさんあるのです。

 できる限り外注するのも手ですが、残ったものを皆で分け合えばずいぶん家事がラクになるでしょう。まるでやる気がなく、時間がなく、能力も低い人をパートナーに育てるのは大変かもしれません。でも、家事はもしかすると将来独りになったり、妻が倒れたときなどに、いやおうなく夫にもかかるものです。切羽詰まったときに初心者だったら大変です。仕事が、いつでも誰かが交代でできるようにしておくのと同じように、家事も交代してできるようにしておく。それが備えだと思います。




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