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夢のキッチン・その1

 先日、新しいカテイカ研究会の仲間で、キッチンの話で盛り上がりました。そこでこれからしばらく、理想のキッチンとは何かについて考えてみたいと思います。

 何しろメンバーの有賀薫さんは最近、思い切って自宅のキッチンに実験的な装置、ミングルを導入し、一つのテーブルで料理、食事、後片付けができる生活を実践し始めました。

 そこで改めて、皆が現状のキッチンに対する不満を言わないのはなぜか、という話題になりました。有賀さんはキッチンのリフォームに当たり、さまざまなカタログを読み、ショールームへ行って検討したそうです。

 有賀さんのように、キッチンをリフォームする、あるいは家を新築する、購入するなどすることが視野に入れば、現状のキッチンの問題点、欲しいキッチンとは何かを考えることができます。また、賃貸生活でもキッチンの条件を考えつつ選ぶことは可能です。

 そういう変化が視野に入らない場合、私たちはキッチンについてあれこれ不満を述べないことが多い。何しろ不満を挙げても現実は変わらないし、目をつぶっていた現実に気が付いてしまうと、毎日不満だらけで暮らさなければならないかもしれないからです。理想通りではない現実に目をつぶるのは、人間が生き抜く知恵でもあります

 しかし、キッチンの使い勝手が悪いと、料理の段取りにも支障が出ます。換気扇やコンロなどの掃除が大変なタイプだったら、それだけでつくらない料理すら出てくるかもしれません。キッチンは家事のレベル、そしてもしかすると生活の質(クオリティ・オブ・ライフ)にまで影響するのかもしれません。私も一度、キッチンの問題点については書いたことがあります。

理想のキッチンへの目覚め

 そこで、改めて現状を度外視して、私が考える理想のキッチンについて考えてみようと思い立ったのです。

 私がキッチンについて、初めて意識したのは、トップに出した写真の冊子です。これは私が勤めていた会社で先輩から引き継いだ仕事。松下電工(現パナソニック電工)のショールームなどで配られる顧客向けの商品解説集です。同時に、家の部位ごとの選び方の解説があります。私は「キッチン」の号はやらなかったのですが、「収納」の改定でキッチンについても考えました。ちょうどその仕事の後で一人暮らしを始めたので、仕事で得た知識でキッチンの収納を工夫しました。

キッチンはコックピットと考える

 一人暮らしの部屋は形としては1DK。でもよくある話で、DKはキッチンだけです。食事するスペースはありません。小さなシンクとコンロを置くためのスペースしかありません。そこにガステーブルを買ってきておけば、調理スペースがなくなる。ちょうど阪神淡路大震災で傾いた家をなおしていた母が、調理台を注文して置いてくれました。母とは関係が最悪な私ですが、このときばかりは感謝しました。

 「収納」の冊子でインタビューしたショールームのアドバイザーの方の話によれば、よく使うものを使いやすい場所に収納する。お玉や菜箸、調味料、鍋などです。私は鍋類をシンク下に、醤油や油などの量が多い調味料はコンロ下に置いた記憶があります。そして、そのやり方はその後もずっと踏襲しています。

 4年半後に結婚して東京に来てから長い間使ったのが、1990年代当時、積水化学から出ていた、ステンレスのネットです。好きな位置にフックを引っ掛けられるようになっているので、お玉や菜箸、フライ返しなどを引っ掛けておきました。下の方には籠をセットし、洗剤やスポンジを置きました。

 醤油や油、酒などはシンク下に余った箱を入れてセット。塩、砂糖、片栗粉、コショウ、スパイス類は、専用のスパイスラックを買いました。実は会社員時代にスパイスを単品で使うカレーのレシピを、料理のチラシの仕事で教わり、スパイスにハマっていたので、スパイスラックは夢の道具でもありました。今はすっかり汚れていますが20年使い続けています。

 料理は待ったなしの作業が多い。特に調味料は、料理しながら入れることも多いので、取り出すのに時間がかかれば、食材が焦げついてしまいます。お玉なども遠くにしまい込んでいれば、味見がしづらかったりします。

 キッチンの作業スペースは適度に狭く、手が届くところに一通りの道具が揃っていることが、無駄な動きを減らして適切なタイミングで味をつけ、適切に道具を扱って料理するために必要です。そういうことを、「収納」の冊子をつくる中で私は学びました。



 

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