見出し画像

「養ってやる」と思える理由・その3

 世の中、いろいろな夫婦がいます。その形は多様であり、一つの型に押し込めることはできません。家事のシェア問題についても、どんな夫婦かによってやり方は変わるでしょう。前回は、おしどり夫婦と言われたアメリカのカップルについて描いた映画を紹介しました。

 ノーベル賞作家は、実は妻に書いてもらっていた部分があり、その代わりに彼は家事や育児を引き受けていたことが描かれていました。とはいえすべてではなかったようで、夫婦げんかの場面で「あなたの服を拾って歩く」と妻が言っていたりしました。

 大まかには、妻が働いて夫が主夫をするノーベル賞作家と対照的なのが、現在朝ドラで放送中の『まんぷく』の夫婦です。昭和前半を舞台にした同作で、主役の福子(安藤サクラ)は、発明家の夫がどんな新しい発明をして世界を変えてくれるかをワクワクしながら支えます。夫は家事に手を出さないし、育児も妻が行っています。

ワンオペ家事・育児の福子は損か?

 福子はあえて夫に、雑事に煩わされないよう全力を尽くします。「萬平さん(長谷川博己)にはラーメンづくりだけに専念してほしいの」と福子は周囲にも語っています。インスタントラーメンの商品化を巡る争いが勃発していたときのこのセリフは、雑事とは経営上発生したトラブルなどを指していますが、それまでの話では、「家事も育児も私が引き受けますから、萬平さんはお仕事なさってください」という意味で似たセリフを言っていたときもありました。

 貧しかった夫婦は家電も導入できずにいました。だから、福子は手作業で家事を行っていたはずです。母が同居しているときは、家事を母と分担していました。そして手がかかる子どもが二人もいます。

 でもラーメンを開発中に顕著になるのですが、福子の役割は単なる家事・育児の担い手ではありません。実はこの点については、ヤフーニュース個人でも私は書いています。

 福子はこれまでずっと金策に駆けずり回ってきました。大阪・泉大津で塩や栄養食品を開発するために必要なお金を集め、萬平がラーメン開発に専念していたときは、やりくりに頭を使い、パートの仕事で家計を支えます。

 頭が良い福子は、料理してきた長年の経験から、ラーメンへのアイデアもたくさん出します。そして苦しむ萬平を励まし応援し、全力で支えるのです。率先して裏方に回る福子は、本当に単なる主婦でしょうか? 

 福子の役回りは、家族を支える裏方に回り、家族が仕事や学業で持てる力を存分に発揮できるための環境を整えている、世の中の主婦たちへのエールでもあります。主婦の貢献を目に見える形にしたのが、福子なのです。

 しかし同時に私は気がついてしまったのです。福子が、家族を支えて家事や育児を引き受け、悩みごとまで引き受けられるのは、萬平が自分が感動して世の中に役に立つ成果を収められると信じているからです。萬平も福子に感謝しながら、だからこそがんばる。それは昭和の古き良き夫婦愛かもしれません。福子は、夫に尽くすことで、新しい世界を自分も見たいのです。そしてその夢は叶えられます。

 でも、そんな大成功を収める夫は、めったにいません。それでも、裏方になってきた妻たちはたくさんいます。そして、働いていてもなお、裏方の役割を背負っている妻たちもいます。もしかして、彼女たちは自分の活躍を阻まれていませんか? その問題について次は考えてみたいと思います。

 

 

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?