見出し画像

「養ってやる」と思える理由。その1

 先日、30代前半の友人が、「私の周りでも、夫婦で財布を別にしていて、お互いの収入を知らない人は多いですよ」と教えてくれて衝撃を受けました。50歳前後の私の世代では、まだ昭和フォーマットのサラリーマン&専業主婦が珍しくなく、男性は自分よりアタマが悪いと思われる女性が好きで、自分のほうが収入が多いと思える相手と結婚したがる、という話をしたときのことでした。共働き世代で、妻の収入をアテにしている、せざるを得ない30歳前後の人たちでも、男性は収入面で妻より優位に立ちたいそうなんです。だからあえて妻の収入を聞かずにいる。

 思わず家に帰って、夫にその話をしたところ、「それは勝ちたいんや」と言うのです。「なぜ勝ちたいの?妻に?それはどういう発想?」とあれこれ聞いたところ、衝撃の事実が判明したのです。

「家族の一員」意識がない夫たち

 勝ちたいと思うのは、ライバルだと思っていて、仲間だと思っていないからです。「家族というのは仲間ではないの?」と聞くと、どうやら一部の男性にとっては、そうではないそうなんです。

 夫が言うには、マッチョなタイプの男性には、妻や子供たちを養ってやるのが自分だから、家族の一員としての意識があまりない。家族は養ってやる対象であって、自分はその仲間ではない。「つまり、彼らは自分が羊飼いで、家族は羊だと思っている。だから、子育てや家事について当事者意識がなく、妻の責任だと考える」と言うのです。

 大阪でのイベントのとき、村井理子さんが「家事は家族に入るための会員証」とおっしゃってくださいましたが、実は世の夫たちの中には、「会員証はおれいらない。会の経営者で会員じゃないから」と言う人がいるかもしれないのです。

 世の中の男性は、女性と同じように、一緒に暮らす大事な仲間が欲しいから結婚するものだと思っていた私は、その発想が理解できませんでした。でも、そういうふうに考えれば、「家事を手伝う」「子育てを手伝う」と言う男性たちの言葉の裏が読めます。当事者だと思っていなければ、確かに「手伝うよ」と口をついて出るのはおかしくありません。

 一緒に家族という社会を営み、一緒に人生を歩む同志。それが結婚でパートナーなんだと思っていた私の意識は、彼らにまったく通用しないのです。まあ、だからマッチョなタイプの男性に惹かれることなく、彼らからも結婚や恋愛の対象だと思われることなく今まで来たのだと思いますが……。

マッチョ男性の帰属意識はどこに?

 「家族が仲間でないなら、誰が仲間なの? どこで安らぐの?」とさらに私は夫を問い詰めます。「そういう人はおらへんのちゃうかな? 会社の中で仕事を通してとか、部分的に仲間となる人はいても、全面的に仲間と思える人はいないのかもしれない」と彼は言います。

 スナックに通う人は、一時的にママと仲間になるかもしれません。趣味を持つ人は、趣味仲間がいる。でももしかすると、自分を全面的に預けられる相手は、大人になっても自分のお母さんなのかもしれません。だから、妻より実家が大事な人がときどきいる。マザコンというのは、安心して自分を預ける相手が、「自分が守ってやらなければならない」と思っている妻ではなく、生まれた時から守ってくれたお母さんになってしまうのかもしれません。マザコンというのは、パートナーを作れないさみしい男性のことを指すのかもしれません。

 彼らを仲間にするにはどうすればいいのでしょうか? 家事を手伝ってもらう→家事を一緒にやる。子育てを手伝ってもらう→子育てに一緒に取り組む→子供と一緒に成長する。といった変化を促す前に考えなければならない問題が、横たわっているようです。

 

 

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?