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【ACT SDGs】 地元の間伐材でSDGsバッジをつくる!プロジェクト


都心と山、地域の人をつなぐ地元の東京多摩産材で作るSDGsバッジプロジェクト

2015年に国連サミットで採択された、全人類で達成を目指すグローバル目標「SDGs(Sustainable Development Goals)」。これは、持続 ”不可能” な今の世界を、2030年までに ”持続可能” にしていくために出されたものです。

SDGsには、「環境」「社会」「経済」を調和させるために SDGsの指標を使い、すべての人が協力し合いながら、統合的に解決していくことが掲げられています。

この SDGsの存在を知らせるひとつのアイテムとして注目されているのが、SDGs ホイールをあしらった「SDGs バッジ」。今ではたくさんの人がつけているのを見かけるようになりました。

「これをもっと SDGs に沿った考え方で製作できないだろうか?!」 ということで、東京の豊かな自然資源と地域のパートナーシップによって製作する、多摩材SDGsバッジプロジェクトが立ち上がりました!


東京の生物多様性を守る
SDGs ゴール11/13/15 多摩の間伐材を使ったSDGsバッジ

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田中林業さんが管理する「遊学の森」

「東京は森のくに」。そう聞いて驚く人も多いのではないでしょうか?東京都には約8万ha(ヘクタール)もの森が存在しており、東京都の面積の4割は森で占められています。

さらに東京都の西、あきる野市や檜原村、奥多摩などの地域には、約5万3千haの森が広がっています。木材供給がしやすいとの理由から、戦後たくさん植えられたスギやヒノキ、サワラなどの針葉樹がほとんど。あまり流通しているものを見る機会が少ないかもしれませんが、都内の駅舎やホテルなど、さまざまなところで活用されています。

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木の価値を高めるために木の節が表に出ないよう「枝打ち」という作業も行われます。これは陽の光を入れるためにも行われます。枝打ちする季節は、主に早春の木の芽時頃から、紅葉の始まる晩秋頃までと言われています。


そもそも、なぜ間伐をするか?みなさんご存知でしょうか。

実は山に木が密集しすぎると陽の光が土の表面にうまく当たらず、餌となる植物たちが育ちにくくなってしまいます。

木を伐ることは環境に良くないと思われがちですが、森の健康を保つ上では木を伐った方がいい場合もあるのです。森の生物多様性を守るためにも、密集している木を間伐し、適度な隙間を作って陽の光を入れる作業を行います。

また、森の植物たちの多様性が失われると、私たちが自然と共存するために発展させてきた文化や伝統(言葉や仕事など)も失われてしまうと言われています。実際に、大正時代に35,000種あった職種が、今では18,000ほどに減ってしまったとの報告もあります。生物多様性を守ることは、私たちの暮らしを守ることに繋がっているのです。

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木材の価値を左右する年輪の幅がきれいに出るようにするには、1haあたり3,000本ほどを植えた後、陽のあたり具合を計算しながら、10〜15年の間隔で数回間伐をしています。最近では、無駄なく木を使う試みとして、枝付きや年輪の乱れも木の個性と捉え、それを生かしたものづくりも進められてきています。


森で伐られた木は、東京唯一の原木市場「多摩木材センター」に運ばれ、”競り(せり)” にかけられます。多摩産材はその証に「多」の印が刻まれ、製材所から集まったバイヤーさんたちによって色や節、年輪の幅などを参考に、それぞれ値段がつけられていきます。

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値段がついた木材は、山にして運ばれる場所ごとにまとめられます。今回は端境期だったので、これで少ない方だそう。多いときは、この3倍にもなるそうです。

ここでは何年もかけて大切に育てられてきた木が、1本3,000円ほどで販売されていました。果たして安いのか?高いのか?みなさんはどう思われますか?


環境に負荷をかけないものづくりを、ここ東京でも
SDGs ゴール 4/12 資源すべてを有効活用

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値段がつけられた木材たちは、あきる野にある製材所へと移動します。ここで乾燥機にかけて乾燥させ、加工しやすいよう皮を剥いだり、形が整えられたりします。

円形をしている木材は、柱や家具など加工がしやすくするために四角い形に切断されます。その際に木材の端が余ってしまうので、ここで出た端材を乾燥機を動かすための燃料にしたり、ゴミ処理場のボイラー燃料にしたり、木質チップ燃料として販売したりなど工夫されています。

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乾燥機。技術の発展で自然乾燥をしていた昔と比べ、今では1週間ほどで乾燥できるようになりました。

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こちらは郵送用の緩衝材に使われます。

また、伐った際に出る木の粉は農場や牧場の床に敷き詰められ、馬や牛が足を痛めないようにするために使われたり、小さいな廃材は学校用教材として、都内の250校に配布したりなど、どこも余すことなく活用されています。

今回バッジに使用している木材も、製材所で出たこれらの端材を使って製作されています。


ひとつひとつ、人の手でつくるこだわり
SDGs ゴール 4/ 8/ 9 障がい者の人たちの雇用創出 

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加工された木材は、日の出町にある障がい者就労支援施設「日の出舎」に運ばれます。日の出舎は、30年以上も前から地域木材を活用した木工作業を行っており、イベントグッズ、企業や官公庁の記念品など、さまざまなものを製作してきました。

日の出舎は、2017年には持続可能な森林経営やトレーサビリティの整った加工・流通を証明する「SGEC認証」を取得しています。さらにここでも、出たおがくずを緩衝材やバイオ燃料に活用したり、一部はペレットとして販売しています。

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みなさんとても器用な手つきで、みるみるうちに商品が生みだされていくさまにすっかり見とれてしまいました。


工場の機械でもなく、大量生産でもない。日の出舎で働くみなさんの手によってひとつひとつ丁寧に作られたバッジは、木材のあたたかさも相まって、さらに愛着が増すデザインとなりました。長く大切に使いたくなるストーリーも、SDGsの「つくる責任つかう責任」に繋がりますね。


バッジを通して地域連携を実現!
SDGs ゴール9/ 17  東京のパートナーシップでバッジづくり

このプロジェクトの発起人である高濱さんは、多摩産材を中心に地域の連携をつくりたかったと話します。

「山にとっては都心が、都心にとっては山が ”遠い存在” であったものが、このプロジェクトを通して ”近い存在” であることに、改めて気づくことができるのかなと思っています。

このバッジによってできたコミュニティが豊かになることによって、山と街と人がさらに繋がり、本来あるべき日本の、東京の、そして秋川渓谷のコミュニケーションが活性され、自然に囲まれる人々に笑顔が溢れることを願っています」


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SDGsのメッセージを伝えるだけでなく、地域を繋げ、自然と人、そして山と都心を繋げることも実現した、多摩産SDGsバッジ。

みなさんもぜひ、みなさんがいる地元のオリジナルSDGsバッジを作って、SDGsに一歩踏み出してみてはいかがでしょうか?



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プロジェクトリーダー:髙濱 謙一さん オフィス髙濱代表/秋川木材協同組合 事務局長
兵庫県芦屋市出身。二児の父。紙商社で企画やマーケティングを軸に新規開拓営業を長年経験。00年に世界的にも稀有であったFSC®森林認証紙を日本に初めて紹介し、その普及に尽力。17年に早期選択定年退職制度を利用し、紙の原料である木の世界へ。林業会社役員を経て当組合事務局長就任。商社営業ワークを活用し、多摩産材の普及に邁進する。個人事業を通しても、エコツアーガイドとして多摩産材の森ツアーを多く手掛ける。


ライター:松尾 沙織

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