宵待草の指先

久しぶりに実家に帰ったら、玄関先に見慣れない花が増えていた。

「初めて見た? これは宵待草(よいまちぐさ)だよ」

母の視線の先に、ピンクの愛らしい花が揺れていた。

これが宵待草・・・? あまりにも可愛らしくて、わたしは少しがっかりした。もっと色っぽい花だと思っていたからだ。

宵待草は夕方に咲き、夜の間中ひらいて明け方にしぼむ。一晩だけの花。

その咲き様を思うとき、真っ先に浮かぶのは彼のことだった。


すっぽりと夜の漆黒が世界を覆うころ。

小さな部屋をほんのりと灯すベッドサイドの小さな光。

彼の柔らかい舌がわたしの首筋をそっとなぞる。

思わず声が出て、唇をぎゅっと結ぶ。そんなわたしを、彼がニヤニヤと見ているのが暗い中でもわかる。そしてますます執拗にわたしを責め立てるのだ。

ゆっくりと、確実に、なんどもなんども。

そのたびに達しては脱力し、押し上げられては首にしがみつく。

どんなにいっても、絶対に許してくれない。

まさか、こんなに執拗な性格だったなんて。

付き合い出してから知った今となってはもう遅い。

普段はとても優しい人なのに、こういうときにはサディスティックなまでに徹底を貫くことにいつも驚かされる。

そういえば、とても真面目で頑固で頑張り屋さんだよな、と揺らされながらぼんやり頭をよぎる。

選挙もちゃんといくし。

どんなに疲れていてもお風呂にちゃんとお湯ためるし。

言葉は礼儀正しくて丁寧だし。

なのに、この時ばかりは何度お願いしてもやめてくれない。

わたしが限界とせめぎ合う様を嬉々として楽しんでいる。

ひどい。なんという性格の悪さだろう。

そう言うと、彼をますます喜ばせてしまうのはわかっている。

なのに言わずにはいられない。

そのたびに何倍も体で返されて頭が真っ白になるのも経験済みだ。最初は対抗しようと頑張っていたけれど、一度も勝てたことはない。いまではすっかりあきらめるようになった。

結局はいつも彼の思うがまま、揺らされては達して、また揺らされる。

いやだということも、気がついたら全部させられてしまう。

優しい指にかき混ぜられるたびに、けものの自分を思い出す。

わたしは甘い快楽に満ちた、この夜を愛している。


一度だけ、本当に気が遠くなってしまったことがあった。

ハッと目がさめた時、わたしを抱いて柔らかく覗き込んでいる彼がそこにいた。

その目を見て、果てしなく安心したことを今でも覚えている。

彼はというと、無防備なわたしのエロい顔を思う存分見れたといってご満悦だった。

・・・いろいろしょうがない。あきらめよう。

わたしたちはまだ始まったばかりなのだから。

これから共に時間を過ごし、たくさんの経験をするのだから。

その旅をしながら、重ねていくであろう全てを楽しみにしていよう。

まあるい顔の宵待草の花が、風に揺れてそっと頷いたように見えた。




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【泣き虫あきこの人生大全】

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