【赤の少女と白い虎】 22夜. 龍の息吹

◇ 第1夜から読む→   はじまりの物語

◆ 一つ前から読む→ 〜21夜. 力の代償

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「対となる言の葉を落としているのだ。それは開けたものを閉じる鍵のありかだ。
お前がつかった本にはもともと入っていなかった。それを書いた者の世界の理(ことわり)が不完全だったということだ。
そしてそれがないということは、ここにいる我らがいるべき空間に帰れぬということ」
「帰れないとどうなるのですか?」
その瞬間ざわめく空間がピタッと静まった。
「……我々はこの次元にとって異質な存在。早々に消失するだろう」
あの声がゆっくりと区切るように答えた。
一瞬飛んでくる、と覚悟した怒号は一切起きなかった。
この時に初めて、自分のしたことがどうやら想像以上の過ちだったということに気づいたのさ。


「そうだ。お前のいた世界も我々の存在も全ては終わる。跡形もなく消え去る。最初から存在しなかったことになる」
その言葉が終わるか終わらないかのうちに、頭が割れるほどの叫びが一気に響いた。
「もう終わりだ」「ここまできてこのザマだ」「人間には失望しかない「愚かな生き物め」
「でも今回は少し違う」再び凛とあの声が響いた。


「確かにこの娘は愚かしい。自分の欲を満たすために力を求め、結果として破滅したが」
その声をさえぎってわたしは思わず叫んだ。
「ごめんなさい! わたしに命はいりません! だから、だから」
その瞬間、フッとさげすむような笑い声が巻き起こった。
「お前の命ごときでなんとかなるとでも?」「本来、人間にそんな価値はないのだ。なんと傲慢なことを」「宇宙の全てをかけて閉じるしかあるまい」
あらゆる角度から矢が飛んできたかのような衝撃に、わたしの体は貫かれた。
直後、打って変わって柔らかいエネルギーが流れ込んできた。
「まあよいではないか」

あの声が話しだした。

〜つづく

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連載【赤の少女と白い虎】文・あだちあきこ

絵・津山文子。ある王国のおわりとはじまり。神話の成分、すこし。
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