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投票前に読んでほしい岩田規久男先生の各党公約比較

1.はじめに

前・日銀副総裁の岩田規久男先生(経済学者)が、参院選2022の最終盤を迎えるに当たって、各党の公約に関する論評(「参院選の道しるべ」-各党の公約を経済学的に論評する- )を夕日書房さんのサイトに掲載くださいました。まずもって感謝を申し上げたいと存じます。

岩田先生は、私たち日本維新の会のオープン政調にもお越しいただいたことがありますので、その際の様子を記録した動画も是非ご覧いただきたいですし、今回の岩田規久男先生による論評については、上念司さんも紹介くださっていますので、併せてリンクをはっておきます。

さて、岩田先生は、与党の自民党に加えて野党三党の経済政策を論評くださっているのですが、現有議席の大い順に4党ということよりも、そもそも、論評に値する経済政策を提示している政党が4党だけだった、のだと推測しています。

2.立憲民主党の経済政策をメッタ切り

まず第一に、立憲民主党の金融政策をめった切りにしているのが目を引きます。私も全く同感なのですが、岩田先生は、いま「実際に起きていることは、物価上昇ではなく、生鮮食品や燃料価格高騰の影響を最も強く受ける電気・ガ ス代等の相対価格の高騰である」とした上で、立憲民主党が金融緩和政策から金融引き締め政策への転換を訴えていることについて、「需要不足経済で、金利を引き上げれば、一番困るのは、立憲民主党が最も支援したいと考えている中小零細企業」だと批判します。

更に、その困るであろう事業者を支えるため、立憲民主党が金利負担が重くなる中小企業への給付金を増額しようとしていること(事業復活支援金の支給上限額倍増など)について、「(金利を上げて)人に病気させておいて、治療代を援助します」というようなものであると一笑に付し、「そんなことをするよりも、病気にならないようにすればよい。治療代(国民負担)もいらなくなる。」と断じています。

3.自民党の経済政策もダメダメダメ

では、自民党はどうかというと、これも辛辣です、まず自民党の燃油価格の激変緩和策や漁業、農林業、運輸業といった業種への支援策については、「自民党は「事業者単位」の分配政策が好きである。これは、利益団体・ 政治家・官僚の鉄のトライアングルにより、政治家が票を集めるうえで最も有効だから」と断じ、燃料関連財価格高騰に対しては、「事業者」ではなく「個人」を対象に再分配政策(給付金等)を講じるべきと指摘します。

そして、「新しい資本主義」への批判が続きます。

・岸田政権は日本だけ成長しなかった原因がわかっていない。そもそも、新自由主義を「市場か国家か」、「官か民か」と捉えるという発想が間違い
・ フリードマンが提唱した「新自由主義」とは「市場と国家の役割分担の基準を示すこと」であり、これまで日本の経済政策では採用されたことはない
・自民党の公約には、デフレ完全脱却のためのマクロ政策と成長戦略の一丁 目一番地の「規制改革」とくに「岩盤規制改革」が全く見られない
・官がそもそも役割でない分野にしゃしゃり出てくるような 「新しい資本主義」は有害である

まったく同感であります。

4.物価高騰対策は国民民主党に軍配?

岩田先生が合格点を付けて下さっている日本維新の会と国民民主党ですが、少し雑な理解に基づく論評がなされているように感じます(改めてご説明に伺えていないのは当方の責任であり、岩田先生にはお詫び申し上げます。)ので、補足的に解説します。

まず、岩田先生が、「燃料関連財価格高騰対策はミクロ経済政策である「個人」を対象にする再分配政策(給付金等)である」と整理をされている点については、私たちも同意です。そうした観点から立憲民主党の金融引き締めは論外なわけですが、対する国民民主党のトリガー条項凍結解除や国民一人当たり一律10 万円のインフレ手当(一定以上の高所得者には確定申告時に所得税を課す所得連動型給付方式)については、「いずれも個人単位の分配政策で評価できる」としています。

他方、日本維新の会については、ガソリン税(軽減税率=当分の間税率)については国民民主党のトリガー条項凍結解除と「同じ提案」であると誤認され、消費税(軽減税率)の段階的引き下げ、電気・ガス料金の激変緩和措置等については、「高所得者まで支援することになる」「電気・ガス料金の高騰に対する節約行動を抑制してしまう」等を理由に、国民民主党のインフレ手当に「軍配を上げる」としています。

しかし、日本維新の会の負担軽減策の第一の柱、いわゆるガソリン税の暫定税率(当分の間税率)については、「トリガー条項発動」ではなく、暫定税率(当分の間税率)そのものの「廃止」です。「同じ提案」ではありません。そもそも、「トリガー条項」というのは民主党による「ガソリン値下げ隊」運動の失敗を糊塗するために設けられた民主党政権による(弥縫策にもならない)愚策であり、ガソリンスタンド(SS)等現場の混乱を考えると、とても発動できない代物だったのです。他方、政府の原油価格激変緩和のための補助金が暫定税率に相当する25円を大きく上回っている現在であれば、暫定税率(当分の間税率)を廃止しても(補助金と相殺できるので)混乱なく減税できるし(以上が「入口」論)、(原油価格高騰が終息すれば=出口で)再び増税されるトリガー条項でなく、そもそも「廃止」とすれは、措置の出口で増税し、大混乱が起こる心配もありません。

岩田先生は、国民民主党の物価対策を論じる部分で、 「自動車関連税を廃止する方向で提案すれば一層評価できる」と書いておられるわけですから、当に「暫定税率(当分の間税率)を廃止」を掲げる日本維新の会の政策を正視眼でご評価いただきたいと感じました。

更に違和感があったのは、維新の負担軽減策の第二の柱、消費税(軽減税率)減税について、「高所得者まで支援することになる」として、国民民主党のインフレ手当に「軍配を上げる」とされた部分です。国民民主党は、インフレ手当てとは別に消費税本体の5%への減税も公約に掲げていますので、「高所得者まで支援することになる」のは同じだし、国民民主党の消費税減税より日本維新の会の軽減税率深掘りの方が低所得層に恩恵が大きい(=よりマシである)ことは、軽減税率が導入されている理由から考えても、明らかです。

そもそも、軽減税率の深掘りの政策目的は、コストプッシュインフレ(この場合食料品)を需要を抑制も拡大もせずに抑えること、つまり、家計の負担を軽減しつつ金融緩和継続の余地をつくることが目的ですから、それだけで十分とは私たちも考えていません。だからこそ、低所得者への支援に関して、追加で「社会保険料の減免」を掲げているのですが、岩田先生のお目には止まらなかったようです。

また、維新の負担軽減策の第三の分野である電気・ガス料金の激変緩和等についても、「電気・ガス料金の高騰に対する節約行動を抑制してしまう」と批判されていますが、そうであれば国民民主党の電気代1割削減の方が節約行動抑制効果は大きいでしょう。そもそも、私たち維新の電力対策の柱は原発再稼働(国民負担軽減法案第9条)であり、日本維新の会の十年近くに及ぶ原発再稼働への取り組みについても、地味ではありますが、正当にご評価いただきたい点であります。

なお、国民民主党の「一律10 万円のインフレ手当(一定以上の高所得者には確定申告時に所得税を課す所得連動型給付方式)」は、制度設計の現実から考えて、現下の緊急経済対策には間に合いません。言うだけ番長と与党から揶揄される所以です。私たちは、当に、岩田先生が仰る「困っている度合いの高い人――所得と保有資産が少ない人――ほど、より大きな支援を受けられるようにすべき」との観点も含め、マイナンバーの銀行口座紐づけ義務化等を通じた所得と保有資産の把握を前提としたベーシックインカム(事前一律給付型の給付付き税額控除)を提唱していることは、改めて強調しておきたいと存じます。

5.日本維新の会の成長戦略に高い評価

財政政策、金融政策といった「マクロ経済政策」、そして構造改革によって成長軌道をつくる「成長戦略」について、岩田先生は、日本維新の会に三重丸を付けて下さいました。

「参院選の道しるべ ――各党の公約を経済学的に論評する」(岩田規久男)から抜粋

当に、私が党国会議員団の政策責任者として最も力を入れて提示してきた一丁目一番地の政策パッケージであり、率直に、今回の論評の中で最も嬉しいと感じた部分です。

詳細は、Twitter等で党の公式ページを紹介していますので参照いただければ幸いですが、国政選挙を重ねながら、こうした真っ当な政策論議が深まり、マスコミ報道等を通じて有権者に広く共有される時代が来ることを強く願っています。

(追記)田中秀臣先生が日銀同意人事を巡る国民民主党のスタンスに批判的なツイートをされていました。確かに、その通りですので、関連するツイートを貼り付けておきます。

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