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マジンガー育ちの大人たちよ、正しい燃え方しているか?

日本のロボットアニメ界の革命児「マジンガーZ」。その最新作「劇場版マジンガーZ/INFINITY」が公開された。旧作のテレビ版にどっぷりハマった我々昭和40年代前半生まれは言うに及ばず、世界中のロボットアニメファンたちにとって最高のプレゼントに違いない。

本作はすでに昨年秋、イタリアで先行公開されており、母国日本のファンにとってはいささか歯がゆい思いで待たされたわけではあるが、ここは待った甲斐があったと前向きに捉えよう。それほどに文句のつけようのない出来上がりなのだから。

まだ公開間もないのでネタ明かしは極力避けるが、もし観賞に躊躇している我々世代のファンがいるならはっきり言おう。これを見なけりゃ前には進めないぜ!

物語はマジンガーZやグレートマジンガーがDr.ヘルら悪の軍団とし等を繰り広げ勝利を手にしてからざっと10年後の世界。ただし、初回放送当時の昭和40年代後半から数えてではなく、光子力研究所が存在し未来を先取りしていた劇中世界における10年後ということだ。その世界では巨悪がいなくなったことで、マジンガーZの原動力だった光子力の平和利用が本格的に導入され10年前からは想像もつかない、平和で豊かな時代を迎えていた。そんなある日、富士山の地下で巨大なマジンガーらしき物体が発見され、これに呼ばれたように、かつて倒されたはずのDr.ヘル率いるミケーネ帝国の機械獣軍団が出現。すでに退役し研究者の道を歩んでいた兜甲児が再び戦いに巻き込まれていく、というのが導入部の流れだ。

劇中にはマジンガーZのほかグレートマジンガーやボスボロットなど我々には涙がでるほど懐かしいロボットやそれらを動かすキャラクターたちが続々登場。彼らは10年後の世界でそれぞれに相応しい立場でスクリーンに登場してくる。その演出はどれをとっても憎らしいほど愛おしい。旧作のに初めてであったあの時の興奮が間違いなく甦るだろう。

ここから少しネタバレに触れる話をする。
本作は、近年増えている、かつて少年たちだった大人たちをとりこにと狙った旧作アニメのハイクオリティ版の一翼であることは間違いない。そして我々世代の中には「懐かしいなあ」との思いとともに「昔のロボットアニメはよかったなあ」と郷愁に浸ろうとする向きもあるだろう。しかし、その捉え方は本作の本質を見落としていると言いたい。

あるキャラクターのセリフに「昔のほうが良かったなんて絶対に言いたくない」という言葉があった。おそらくこれが本質であり監督始め作りて側の言いたいことなのだろうと筆者は考える。クライマックスのシーンで、そのことを否応なく考えさせられる言葉も飛び交う。昔は少々やんちゃなマネをしてでも巨悪に挑みかかった兜甲児も、いい大人になった(とはいえまだ26歳なんだが)。昔のようなやんちゃは、もはや周囲も許さないし、自分のなかでもそれが違うことはなんとなくわかっている。それでは大人となった自分は、何のために、どう戦うべきなのか。兜甲児は果たしてどのような選択肢を選んだのか、そこに注目して見るべきだと筆者は考える。

大人としての燃え方を、マジンガーZはきっと示してくれるはずだ。


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