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オリジナルアニメで攻める、Netflixの本気

映像配信サービスの巨人、Netflixが、ここに来てアニメを武器に本気で日本市場を取りに来ている。
その第一の矢は、今年初頭に配信を開始した「デビルマンcrybaby」だ。ご存知、永井豪原作の不朽の名作の再アニメ化(再々だったか再々々だったかは忘れた)だが、これまでの映像化の中で最も原作漫画に忠実だと言うのが大方の評価だ。つまり、原作を最後までお読みの方ならご存知であろう、あの衝撃的なラストの描写も臆面なく映像化しているのだ。そのためもあってか、いや、それがやりたかったからか、本作品は日本のテレビ局はどこも放送していない。見たいならNetflixの会員になるしかないのだ。
ただし、ここまでは少し前の話。「デビルマン」なんて興味ない、という人にとっては関わりのない話で終わる。しかし、それから2ヶ月後の3月第二の矢、第三の矢が立て続けに放たれた。一つは「A.I.C.O.」もう一つは「B: The big inning」。前者はボンズ、後者はプロダクションIGが制作。いずれも日本を代表するアニメ制作スタジオが手がけるオリジナル作品にして意欲作だ。
ここでは「A.I.C.O.」について詳しく語る。

もう全12話見られる新作アニメ「A.I.C.O.」

「A.I.C.O.」は、今より少しテクノロジーが進んだリアルな日本を舞台に、突如起こった国家を揺るがすバイオハザードアクシデントに関わった一人の少女「アイコ」を中心に展開されるSF作だ。監督は村田和也。「翠星のガルガンティア」「正解するカド」など大きなスケールで描くSF作品を生み出して来た手腕に、筆者はかねてから注目していた。その最新作への期待と興奮は隠しようがない。
脚本、作画、音響まわりの質の高さは言うまでもないが、本作で注目すべきは、配信と同時に全12話(1話25分)が公開され初回から最後まで一気に見れてしまうことだ。もちろん、Netflixのサービス全体が有料制のため、余計なCMも広告バナーも表示されない。その気になれば300分ノンストップで劇場映画レベルのアニメが見れてしまう。月々980円で、だ。

アニメビジネスの未来を変えるか

昨今、「宇宙戦艦ヤマト2199」や「機動戦士ガンダムTHE ORIGIN」のように時間をかけて高品質に仕上げた連続ものアニメを、劇場で数ヶ月ごとに公開する方式がビジネス的成果をあげている。Netflixがやろうとしていることは、このレベルのアニメを自宅のみならずスマホやiPadなどモバイル機器など環境を選ばず実現できる状況を作ることだ。
さらに、NetflixがボンズやIGとかわしている契約は1作品ごとではなく、今後複数年に渡っての包括契約だという。品質保持を考えると1クールに1本というわけにはいかないだろうが、1年に2〜3本、「A.I.C.O.」レベルの作品に出会えるならば、アニメファンにはたまらない未来が待っていることになる。もちろん、今回の2本がビジネス的成果をあげることになれば、ほかの有力アニメスタジオがこのラインに参入してくることも大いに期待できる。
もちろん、Netflixのやり方に合わないというアニメスタジオもあるだろうし、単純に儲けを独占させてなるものかと、いきり立つライバルも当然出現してこよう。だが、それこそが最大の好機と言えるのではないか。
Netflixにくみさない勢力も、現状このままでいいと考える者はいないだろう。コメント機能など独自の機能と世界観でこれまで先導してきたニコニコ動画などはその最有力候補に違いない。人気コンテンツとの関わりを多く持つバンダイも、すでに新たな動きを開始しているかもしれない。いずれにせよNetflixにはない付加価値を強調し、さらに映画並みかそれ以上のコンテンツを配信する業者が1つでも出てくるなら、日本のアニメコンテンツ市場は真の新たなステージへと昇華するだろう。

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