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ご唱和せずにはいられない!「ウルトラマンZ」の魅力を語るよ。

6月から放送が始まった「ウルトラマンZ」がすこぶる好評だ。

主人公のウルトラマンZは、平成ウルトラマンの中で高い人気を持つウルトラマンゼロを師匠に仰ぐ半人前ならぬ3分の1人前の新人ウルトラマンという設定だ。ウルトラマンゼロはウルトラセブンの息子なので、我々昭和のウルトラマンシリーズに慣れ親しんだ世代からするとZは孫世代に当たると言って良いかもしれない。

そんな、ヒーローとしてはちょっと頼りない面を持つZが、様々な事情から地球にやってきて、そこでこれまたやんごとなき事情から出会ってしまった地球人の青年・ナツカワ・ハルキと一心同体となり、頻出するようになった怪獣たちから地球の平和を守るべく活躍する、というのが本作のイントロダクションだ。

では、本作が面白いと言えるポイントをいくつか上げておこう。

ウルトラマンZの言葉使いがウルトラ面白い

まず上げたいのは、ウルトラマンZの言葉遣いがいい感じにイカレていることだ。

Zには先述のゼロのほか、その父であるウルトラセブン、セブンの舎弟筋でゼロの師匠でもあるウルトラマンレオと、この3人のウルトラ戦士を尊敬しているのだが、教えられ方が格闘技系に偏ってしまっていたのか、地球の言葉の習得が中途半端になっているのだ。

そのため、普通にタメ語で喋っていたかと思うと、「〜なのでございますよ」「〇〇しちゃいなさい」など珍妙な言い回しがが挟まってきたり、ときには何故か関西なまりが混じったり。日本語自体は通じているのだが所々で間抜けなのである。でも、それほどハメを外しているわけでもない。就学前の子供も見ている番組だから、そこは気が配られているのだろう。で、そんなお間抜けな言葉遣いを交えたZとハルキの会話が、戦闘前や戦闘中に漫才のように毎回繰り広げられる。

そんなおかしなZ語録の中から飛び出した究極の言葉こそ、Zの登場時の掛け声「ご唱和ください、われの名を!」だ。変身ヒーローの決め台詞に「ご唱和ください」なんて、こんな天才的発想はどこから生まれてくるのか、大変興味深い。テレビの前のチビッコたちは面食らうかもしれないが、同時にすぐに飲み込めそうではないか。美しい日本語を覚えさせてくれるウルトラマンに、感謝だ。

主人公がとても人間的

そんなウルトラ面白いニューヒーローとの脳内同居生活をしいられることになったナツカワ・ハルキは至って普通の好青年だ。対怪獣ロボット部隊「ストレイジ」(詳しくは後で)に入隊したばかりとあって、諸々おぼつかない頼りなさはあるが、基本は真面目な性格。空手を習得しており、隊長や先輩の言うことには「オッス!」と気合い入れ気味に返す。怪獣に立ち向かう姿勢も真面目で、過剰に熱が入るといったこともない。かと言って変に冷めているわけでもなく、とにかく人間的でいいやつだ。

ハルキは、公務で出動した怪獣との戦闘活動中に、突如出現した謎の光源体に衝突してしまう。その光の正体こそウルトラマンZである(ウルトラ伝統芸ですな)。Zは、衝突により命を失うことになってしまったハルキへの償い(?)の気持ちを込めて、自らとの同化を提案。以後、Zとハルキの奇妙な一心同体生活を過ごすことになる。なお、命を失うとか償いとか書いてしまったが、この間の2人のやり取りにしんみりとした空気は一切ないのでご安心を。

ハルキは困ったときになるとウルトラマンZに変身することができるが、これはあくまで困ったことがあったらの話。ハルキ自身の身勝手な都合では変身できない。帰ってきたウルトラマンなどかつてのウルトラマンがそうだったように、ギリギリまで頑張ったもの前にこそウルトラマンは現れるのだ。

久しぶりに本格的な防衛隊が活躍する

ウルトラマンシリーズといえば地球を怪獣や異星人から守る防衛隊の存在は基本、というのは昭和〜平成中期までの話。ここ数作のウルトラマンシリーズはというと、ウルトラマンに変身するのは素性が曖昧な風来坊だの、街の商店街の洋服屋のセガレ兄弟など普通の民間人(ていうかそこらのガキ)というパターンが多かった。

だが、本作では、世界規模の本格的組織として地球防衛軍が設定されている。その日本支部の下部組織が、ハルキも所属する対怪獣ロボット部隊ストレイジだ。

とはいえ、その組織的空気のガチガチな硬派感などは一切なく、「機動警察パトレイバー」などで描かれているゆるっとした感じだ。この、ゆるっとした感じの元祖といえば初代「ウルトラマン」の科学特捜隊であり、本作のエンタテインメント性を支えるキモというべき部分だ。

セブンガーがウルトラカワイイ

そして、このストレイジがロボット部隊と呼ばれている理由になっているのが、対怪獣ロボット・セブンガーの存在だ。
セブンガーといえば、オールドウルトラファンなら懐かしいだろう(え?何だっけだって?)。「ウルトラマンレオ」の番組後半から登場したカプセル怪獣がセブンガーだった。ウルトラマンレオを師匠の師匠と崇めるウルトラマンZならではの趣向だ。

「レオ」に登場したセブンガーはロボット怪獣という設定で、あくまで機械のボディだったのだが、造形の都合上、妙なシワがあるなど、不思議な味があった。そして時代が進んだ令和時代のセブンガーにはシワなど一筋もない。バリバリの二足歩行人形兵器である。それでも、あの愛嬌のあるタレ目顔は健在だ。人類の叡智が作り出した最先端マシンであり、ウルトラマンの超人さには劣るものの、「ウルトラQ」のトップバッター怪獣だったゴメス程度ならワンパンチで易易倒せるパワーがある。

さらに、第3話からは「ウルトラセブン」で活躍したカプセル怪獣の先輩・ウインダムがストレイジの2号ロボットとして登場。セブンガーとのコンビネーションにより防衛隊の戦闘がより魅力を増している。

女性隊員がウルトラカワイイ

さらに、ストレイジの魅力は、2人の女性隊員の存在だ。ウルトラマンシリーズの良し悪しは、このヒロインの良し悪しで決まると言っても過言ではない。なお、女性隊員が2人というのは「ウルトラマンレオ」のMACが最初に採用しており、それ自体は新鮮ではない。大事なのは今回の2人の女性隊員は約ドコロがそれぞれ全く異なっている点だ。

まず一人はナカジマ・ヨウコ。彼女はストレイジきってのエースパイロットであり、ハルキなど足元にも及ばない高度な操縦技術を持っている。頼れるパイセンだ。そして、なぜか年上好き、というかオジサマ好み。整備班長のイナバ・コジロー(59)などは無類の好物だが、そこに出現したウルトラマンZ(5000歳)に一目惚れしてしまった。ちなみに、ウルトラ族の年齢だが、初代ウルトラマンは2万歳(今は2万53歳か)、ウルトラマンゼロは5900歳らしい。まあこの辺は突っ込みだすと面倒なことになるのでここまで。

そしてもうひとりの女性隊員、オオタ・ユカは科学担当。いわゆるリケジョというわけだが、怪獣に関してはずば抜けた知識量を持ち、対怪獣兵器開発においても優れた能力を持つ。「こんなこともあろうかと」とばかりに密かに開発していた兵器をいともたやすく持ち出してきてしまう、要するに「ウルトラマン」の科学特捜隊のイデ隊員が女体化したすがたといえばわかりやすかろう。もちろんセブンガーのチューンナップにも関わっており、セブンガーの動きが上手くいかなかったときの悔しがりようは可愛くて仕方がないんですよおじさんわ。

この対象的な女性キャラ2人が、今後どう絡み合うかも楽しみだ。

登場怪獣がウルトラ魅力的

そして忘れてならないのが、登場する怪獣たちだ。長く続いているウルトラマンシリーズにおいて、怪獣の存在こそ最大の魅力といっていい。登場する怪獣がいかに個性的で視聴者の記憶に刻み込まれるかが重要だ。

本作では、本邦初登場の新規怪獣と、主に昭和ウルトラシリーズに登場した往年の人気怪獣が、ほぼ交互に出現する。いきなり第1話に登場したゴメスや第4話に登場したペギラなど「ウルトラQ」に登場した古株から、ネロンガ、ギガス、テレスドンなど。お父さん(おじいちゃん?)の心を鷲掴みにする名怪獣たちが続々登場するのだ。それだけではなく、新規に製作されたされた意欲的なデザインの凶暴宇宙鮫ゲネガーグなど、先輩怪獣のDNAを引き継いだ新時代の怪獣たちも十分魅力的だ。まさしく怪獣温故知新。

しかも、ウルトラマンと怪獣のバトルシーンは、最先端表現である3DCGばかりに頼らず、街の情景の大半は現物のミニチュアを使っているのだ。これにより、失敗の許されない一発撮り独特の緊張感が生まれる。その空気は自ずとテレビのこっち側にいる私たちにもしっかり伝わってくるのだから不思議だ。この不思議な空気こそが、ウルトラマンという近代日本が生んだ伝統芸能が培ってきた無形文化財というべきだろう。

最新話ではウルトラマンジードが登場し、ストーリーは新たな展開を迎えつつある。この先「ウルトラマンZ」はどんなウルトラを見せてくれるのか、楽しみで仕方がない。


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