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ポッピンパーティ武道館ライブは大成功!でもバンドリーマーたちはまだ夢の途中


 8月21日、アニメ「バンドリ!」のバンドユニット・ポッピンパーティの日本武道館ライブが開催され、見に行った。いわゆるアニソン系ライブを見るのは1年4ヶ月前の「ラブライブ!」の東京ドームファイナルライブのライブビューイング以来3回めで、直に会場に足を運んだのはこれが初めてだった。ちなみに武道館の中に入ったのは39年前、まだ小学生だった頃にヤクルトスワローズのファンイベントへ行った時以来だ。

 「バンドリ!」をアニメと紹介したが少し正確さに欠く。ポッピンパーティを中心としたガールズバンドを題材に、ライブ、アニメ、コミック、ノベル、ゲームと複合的コンテンツを繰り広げるプロジェクトの総称が「バンドリ!」だ。TVアニメはその一部にすぎない。楽曲がリリースされるとそれに合わせたアニメPVが作られたり、劇中に登場するポッピンパーティのメンバーたちの声を演じる声優たちがそのままライブでギターやドラムやキーボードを奏でる。スクールアイドルの活躍を描く人気コンテツ「ラブライブ!」のバンド版といえば理解が早いだろう。

 ただ、「ラブライブ!」と比べて「バンドリ!」には大きな違い、困難がある。演じ手が振り付けを覚えて歌うのと、楽器を自由自在に奏でて演じるのとでは、モノになるまでにかかる時間が違うというわけだ。ポッピンパーティのメンバーには、リードボーカル兼ギターの戸山香澄を演じる愛美とドラム担当の山吹紗綾を演じる大橋彩香の2人がプロとしての楽器経験者のほかは、趣味で楽器をいじっていたレベルだったという。キーボード担当の市ヶ谷有咲を演じる伊藤彩沙に至っては全くの未経験から始まっている。

 一定の育成期間を経て、彼女たち(最初は愛美、有咲、ベース担当の牛込りみ役・西本りみの3人のみ)が初ライブを開催したのが2015年4月。1stシングルとなる「Yes! BanG_Dream!」がこの時発表された。その後、2ndライブでリードギター担当の花園たえ役・大塚紗英が加入、同8月の4thライブでドラムの大橋彩香が加わって5人となり、翌16年春から本格的にポッピンパーティとしての活動が始まった。ここまでだけで、事前の練習期間を含めて1年以上の時間をかけていた。スピードが命と言われる現代のエンターテインメント業界にあって、この熟成期間は貴重というほかないだろう。このメジャーデビューの時点で、企画立案者たちの頭に1年半後の武道館ライブの夢はどれほど描かれていたのか、一度じっくり聞いてみたいものだ。

 そしてポッピンパーティは、2016年中に3枚のシングルCDをリリース。5人揃って改めての単独ライブを2度開催し着実にファンの幅を広げていった。深夜アニメの合間などに新曲のCMを集中投下するなど知名度も上がっていった。

 「まだアニメ化しないのかな」そんな声がふつふつと聞かれる中、2017年1月TVアニメ「バンドリ!」がスタート。ただ、当初の反響は正直、かんばしくなかった。この期のスタートが1月中旬すぎという異例の始まり方だったのと、劇中の楽曲演奏シーンが期待ほど多くなかったこと、事前の宣伝規模の割にサプライズが少なかったことなどが理由としてあげられよう。

 しかし、物語が徐々に進み、実際のポッピンパーティの成り立ちと合わせるようにメンバーが揃っていくにつれてファンの評価は着実に上昇。最後に紗綾が加わって学園祭で「STAR BEAT!〜ホシノコドウ〜」を演奏する第8話のシーンは筆者もうるっとくるほどクオリティの高さを感じた。ここに至るまでに、香澄がライブハウスで「きらきら星」を延々独唱するなど突飛なシーンもこのためにあったのだろう。

 そしてこの第8話が放送されたタイミングで携帯アプリゲーム「バンドリ!ガールズバンドパーティ!」がリリース。これが配信開始と同時に爆発的人気となり、アニメにも追い風となっていった。並行して、ポッピンパーティとは対象的な実力はバンド・ロゼリアがそのベールを脱ぎ、バンドリワールドは一気に拡大していった。アニメは4月中旬に中締めを迎えるが、最終回にはロゼリアも顔を見せるなど盛況のうちに第一幕を終了。そしてポッピンパーティの次なる舞台となったのが夏の武道館ライブとなったのである。

 収容人員1万強とドームコンサートには劣るハコとはいえそこはビートルズ以来の歴史と伝統を誇る日本武道館。いわゆるラブライバーやアイマスファンのようにそれほど目立つ様子は見られない“バンドリーマー”だが、この日を待ってたとばかりに全国から、アジア周辺から集い、早い時間から北の丸公園に出没。夕方の開演時間を今や遅しと待ち構えていた。そして入場が始まり、2階席正面南東に着席するとアリーナには客席に囲まれた8角形のステージが。

 さてどんな仕掛けで登場するのかと思ったらステージ頭上にあった8面スクリーンが床まで降りてきて、再びせり上がると中からポピパの5人が登場!円形の壇上に立ってアニメのOP曲「ときめきエキスプレス」の演奏を開始した。すると彼女たちが立つ丸い台はぐるぐると回転を始めた。そう、OPで演奏しながらぐるぐると回っていくシーンをそのまま再現したのだ。まさにアニメの完全再現。場内のボルテージは一気に上がらずにいられない(下の写真は公式サイトより引用)。

 そのあと、定番曲のメドレー、アニメシーンの再現(きらきら星独唱には爆笑の渦も)、メンバーごとのキャラソンに、ゲームに収録されているカバー曲「光るなら」の演奏も。終盤では9月にリリース予定のシングル盤に収録された一曲を初演奏。それまでのポピパにはなかったバリバリのハードロックで迫るその曲はマジでシビレた!この時、彼女たち5人の本職が声優だという事実は筆者の頭のなかから完全に吹っ飛んでいた。

 そしてアンコールでは最新曲とアニメのED「キラキラだとか夢だとか〜SingGirls〜」を歌って感謝感激の大団円。2時間30分世の時間はあっという間に過ぎていった。

 残念ながら今後のアニメ展開などサプライズな告知こそなかったが、このままでは到底終わらないことは十分すぎるほど伝わってきた。このあとはロゼリアがプロジェクトの牽引役になるのかもしれないが、ポピパの存在感を柱に「バンドリ!」が語られていくことは今後も間違いないだろう。

 武道館は一つの到達点。しかしそれは夢の途中にすぎない。

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