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福島で「人に出会える」暮らし〜福島12市町村のADDress多拠点生活〜

全国47都道府県のさまざまなタイプの家に暮らせる多拠点居住サービス「ADDress」では、公益社団法人福島相双復興推進機構(福島相双復興官民合同チーム、以下「相双機構」)と共に、「サブスクリプション型滞在サービスの活用による『福島県内 12 市町村の関係人口拡大に向けた実証事業』」に取り組んでいます。

2022年度の実証事業は福島12市町村で「3つの家」をADDressと提携し、テレワークやワーケーションなど、旅をしながら働いたり生活したりするADDress会員に滞在してもらい、一人でも多くの人に「福島12市町村との関わり」をつくってもらうのを目的としています。ADDressには2023年1月現在、富岡A邸(福島県富岡町、施設名「ホテルひさご」)、広野A邸(福島県広野町、施設名「ホテル双葉邸」)、南相馬A邸(福島県南相馬市、施設名「小高パイオニアヴィレッジ」)が提携施設として、予約利用ができます。

福島12市町村とは、東京電力福島第一原子力発電所の事故に伴う避難指示の対象となった、田村市、南相馬市、川俣町、広野町、楢葉町、富岡町、川内村、大熊町、双葉町、浪江町、葛尾村、飯舘村を指します。

2022年8月、2023年1月の2回に分けて、当地に滞在したADDressスタッフが地域で出会った素敵な人たちを中心に、3エリア周辺の「人に出会える暮らし」を紹介します。

【広野町の人】ぷらっとあっと代表の青木さん

東京方面から福島12市町村に行く場合、南部のいわき市(ADDressいわきA邸、ADDress湯本温泉A邸&B邸)から北上するルートが一般的です。ただし、北海道や東北からホッピングする場合は、南相馬市(ADDress南相馬A邸)から南下し、いわきから東京方面へ向かうのも良いでしょう。

ADDress広野A邸は車で向かうと、常磐自動車道の広野ICから3分の好立地にあります。電車の場合は、JR「Jヴィレッジ」駅が最寄りですが、サッカー観戦などJヴィレッジでのイベント目的での来訪ではない限り、手前のJR「広野」駅で下車し、駅から徒歩3分の「多世代交流スペース ぷらっとあっと」に立ち寄ると、地元の人たちと出会えることができます。

多世代交流スペース ぷらっとあっとの施設内

合同会社ちゃのまプロジェクト(代表:青木裕介さん)が運営するコミュニティスペースで、コワーキングとしても利用できます。奥には時間貸しのイベントスペースがあり、ヨガ・イベントなども行っています。青木さんは施設内に併設したスペースで「ひろのパソコン教室」も運営していて、子どもから大人まで幅広い利用者がいるのが特徴です。

ヘアスタイルから「もじゃ先生」と子どもたちに慕われている青木さん

もともとスーパーの倉庫だった施設を地域の皆でDIYし、地域の人が気軽に集まる場所としてオープンしたそうです。

施設内の照明には、高校生が集めた「流木」を活用

私が訪れた日も、学校帰りの子どもたちが続々と吸い込まれるように集まってきて、勉強したりお話したり本棚を作ったりと、思い思いに活動していました。私は彼らの楽しそうな会話に耳を傾けながら、ノートパソコンに向かってテレワークをしたものです。

「広野には交流拠点となるカフェがないので、地域の人が集まる場所を作りたかった」と話す青木さんは、地域外の人とも繋がる場所としてADDress会員の利用も歓迎とのこと。ADDressの趣味仲間が集まるさまざまな「部活動」の活動拠点として、イベントスペースを活用することもできます。この場所で交流イベントを実施したい場合は、以下までお問い合わせください。

ぷらっとあっと問い合わせ先
Instagram:@plat.at.hirono
Facebook:@plat.at.hirono
電話:0240-23-6882

*営業時間 火〜土曜/12:00〜18:00 日・祝/12:00〜16:00
*定休日  毎週月曜、夏季、年末年始 他

ユニークな取り組みとして、この施設では「ぷらっとぺい」を導入し、特に子どもたちの自主的な活動を促しています。

各種の掃除などをして、ぷらっとぺいを貯めていきます
ぷらっとぺいは、子どもたちの大好きな駄菓子と交換ができます

このnoteには紹介していない取り組みもあります。ぜひ現地へ行って、広野町の人と繋がってほしいです。お子さん連れの家族会員にもオススメの交流スペースです。

広野A邸家守:是則(これのり)寿文さん

ホテル双葉邸のマネージャーの是則さん

ADDress広野A邸の家守を務めるのは、是則さん。宮崎県日向市で生まれて福島県で育ち、2児のパパでもあります。休みの日はお子さんと自宅や近所で遊ぶのが楽しみなのだそう。

【富岡町の人】ライターの山根さん&移住相談員の辺見さん

「福島12市町村を訪問するなら、富岡町を拠点として移動するのが良いです」と教えてくれたのは、ライター・編集者の山根麻衣子さん。東日本大震災復興支援業務をきっかけに2014年、神奈川県横浜市から福島県いわき市に移住、現在は福島12市町村の一部である双葉郡に暮らしています。福島県沿岸部・浜通り地方(原発被災地含む)を中心に、インタビューやローカルニュース記事、イベントレポートなどを執筆しています。

上記のリンクをクリックすると、山根さんが取材した地元の人やニュースを読むことができます。noteやSNSでも積極的に地域情報を発信しているので、ぜひフォローして、ADDress多拠点生活のホッピングの参考にしてみてください。

山根さんのSNSアカウント
note:https://note.com/maikoyamane/
Facebook:https://www.facebook.com/belovingmaikoyamane
Twitter:@himawari63
Instagram:@maikoyamane

山根さんに富岡町のオススメを聞いたところ、「桜の名所の『富岡町夜の森(よのもり)の桜』をぜひ観に来てほしい」と推薦されました。富岡町の桜の開花は3月下旬〜4月上旬です。ADDress会員の中には、桜前線を追いながら北上ホッピング生活をする人もいますが、2023年からは富岡訪問も必須ですね。

※以下は2021年に「桜まつり」が開催された時の山根さんの記事です。

富岡町のもう一人のキーパーソンも紹介します。
一般社団法人とみおかプラスの移住相談担当・辺見珠美さんです。辺見さんも、山根さんと同じく東日本大震災復興支援業務をきっかけに、東京から福島県へ移住しました。現在は、富岡町へ移住検討する人の問い合わせに対応し、現地視察のコーディネートも行っています。

「地元のこんな人に話を聞いてみたい」などの要望にも応えているとのこと。ADDress生活で地域を気に入った会員の中には、滞在中に不動産屋さんを見て回ったり、お仕事情報を探したりする人もいます。町との繋がりを作りたい人こそ、辺見さんに相談してみてください。お問い合わせは以下まで。

とみおかくらし情報館(とみおかプラスオフィス)
住所:福島県双葉郡富岡町大字小浜字中央338
Email:tomiokaplus@gmail.com
電話:0240-23-6983(とみおかくらし情報館)

辺見さんにも地域のオススメを聞いたところ、「のんびりと温泉に浸かること」として、3つの日帰り温泉を推薦されました。富岡町は周辺各地へのアクセスが良い拠点なので、周辺地域散策としても温泉巡りはオススメです。

  1. 道の駅ならは(福島県双葉郡楢葉町山田岡大堤入22-1)

  2. 天神岬温泉しおかぜ荘(福島県双葉郡楢葉町北田上ノ原27-29)

  3. かわうちの湯(福島県双葉郡川内村上川内字小山平501)

「道の駅ならは」は、ADDress広野A邸から徒歩15分で行ける距離です。朝10時から営業しています。フードコートやコワーキングスペースもあるので、長時間滞在することもできます。
「天神岬温泉しおかぜ荘」はJR竜田駅から徒歩20分、「かわうちの湯」は車でないと行けないですが、川内村は観光スポットも多いので、福島まで来たら足を伸ばしてみてはいかがでしょうか。ただし、冬季は路面凍結や積雪のため、冬用タイヤ装備は必須となります。

富岡の魅力について語ってくれた(右から)山根さんと辺見さん

富岡町で地域の人と関わるもう一つのオススメとして、お二人から紹介されたのが「とみおかワイン」。太平洋側の高台に広がる土地で、ワインぶどうの栽培に取り組んでいます。東日本大震災の原発被災で一時期無人となった富岡町で、ワインを核とした新たなまちづくりを目指して立ち上がったプロジェクトです。県内方々に避難する町民有志10名で2016年3月より試験的に始めて、現在は一般社団法人とみおかワインドメーヌの事業として展開しています。

栽培地にある見晴台からは太平洋が一望できます

とみおかワインドメーヌ(とみおかワイン葡萄栽培クラブ)では、苗植えや除草作業のボランティアも下記の公式サイトで募集しています。興味関心があれば、ADDress富岡A邸に滞在する際に問い合わせてみてください。

富岡A邸家守:平山勉さん

ホテル運営のみならず、地域でさまざまな活動に取り組む平山さん

ADDress富岡A邸の家守を務める平山さんは、富岡町出身。2009年に富岡町にUターンし「ホテルひさご」を受け継ぎました。震災以降「富岡インサイド」「相双ボランティア」「双葉郡未来会議」を立ち上げ、2018年11月には双葉郡の情報発信拠点「ふたばいんふぉ」を開館しました。

富岡A邸からも徒歩4分の「ふたばいんふぉ」
ふたばいんふぉ施設内。震災前後のアーカイブ資料の他、とみおかワインなどの特産品も販売

【南相馬の人】小高パイオニアヴィレッジ&家守の野口さん

福島12市町村の3つのADDressでは最も長く、2020年から提携しているのが南相馬A邸こと「小高パイオニアヴィレッジ」です。

「多拠点生活をきっかけに地域の面白みにハマり、2020年に埼玉から移住した」という野口福太郎さんは、小高パイオニアヴィレッジでコミュニティマネジャー兼責任者兼家守として活動しています。

南相馬A邸の家守でもある野口さん

ADDress南相馬A邸と提携している小高パイオニアヴィレッジは、宿泊施設以外にコワーキングスペースやガラス工房も併設しています。ガラス工房は地元の主婦たちがランプワーカー(ガラス職人)として働いていて、ハンドメイドガラスブランド「HARIOランプワークファクトリー小高」や「iriser(イリゼ)」を展開しています。事前予約制ですが、ガラスアクセサリー製作体験も可能です。

私が滞在した2022年8月には、ここで「イノベ地域で起業の生態系をつくるために必要なこと」と題したシンポジウムが開催されていました。

シンポジウム第3部ピッチイベントの様子

小高パイオニアヴィレッジを共同運営する一般社団法人パイオニズムと株式会社小高ワーカーズベースは、東日本大震災の原発被災後の「住民の生活再建」や「旧避難指示区域の課題解決のための事業・活動を創出」を目的に設立された背景もあり、事業創造コミュニティの場になっています。

南相馬A邸こと「小高パイオニアヴィレッジ」の外観

南相馬A邸家守でもある野口さんが、今回の『福島県内 12 市町村の関係人口拡大に向けた実証事業』特集サイトに以下のメッセージを寄せてくれました。

このエリアを一言で言い表すなら、「開拓精神」。
理想の地域、暮らし、未来を自由に発想し、自らの手で創り上げる人々の活気に満ち溢れています。
刻々と変化するふくしまの「フロンティア」を一緒に楽しみまくりましょう!

そう、野口さんのおっしゃるように「開拓精神」!
南相馬市を訪問した際も、農業の事業継承に取り組んだり、空き家を改装して宿泊施設を作ったりと、若者からお年寄りまで開拓精神あふれる人々との出会いがありました。福島県内の他地域で出会った人からも、「南相馬は何事も積極的で活気にあふれる人が多い」との声をよく聞きました。

【楢葉町の人】写真家で長距離ハイカーの中島さん

広野町と富岡町の間に位置する楢葉町には、まだADDressの家は展開していませんが、この地でも物件開拓を続けています。楢葉町には一般社団法人トレイルブレイズハイキング研究所の楢葉支部があり、写真家で長距離ハイカーの中島悠二さんが活動を展開しています。

目下「ふくしま浜街道トレイル」コースを整備中で、歩く旅を開発しています。車や電車で通るだけでは見落としてしまう景色・店舗・そこに行き交う地元の人との交流を、歩くからこそ体験できます。コースは浜通りの海側、新地からいわき市までの10市町ですが、将来的には山側の町村にも道を通す計画とのこと。

実際には約220kmあるトレイルで、どのように区切っても歩けますが、当地を知らない人向けにモデルコースも紹介しています。例えば小高駅(ADDress南相馬A邸)から双葉駅の2日間23kmコース、双葉駅から富岡駅(ADDress富岡A邸)を通り、Jヴィレッジ駅(ADDress広野A邸)までの2日間34kmコース。さらに、Jヴィレッジ駅(ADDress広野A邸)からいわき駅(ADDressいわきA邸)まで3日間46kmコースなど、福島県内の太平洋沿いを縦断するトレイルです。

中島さんはこのコース上のスポット撮影やパンフレットのビジュアル撮影などを手掛けています。

ふくしま浜街道トレイルのパンフレットを手にする中島さん

車か電車かバスかといった移動手段の選択肢に加えて、この2023年からは歩く旅に挑戦してみてはいかがでしょうか。雄大な太平洋を眺めながら、福島の自然を感じられるはずです。

* * * * *

私は2022年の夏から当地を3度訪問しましたが、3度目の滞在でADDressの家が3つオープンし、各家を拠点に各地のキーパーソンの皆さんとお会いすることが叶いました。たった1度の滞在で地域を深く知るのは難しいと思います。ただ、「現地の人に出会う」ことで、観光とも普段の生活ともちょっと違う「異日常」が体験できます。それは、心に刻まれる思い出となり、再訪のきっかけにもなります。

以下のサイトにも福島12市町村のキーパーソンが紹介されているので、ご覧ください。

東日本大震災から間もなく12年となりますが、福島12市町村は日々変化・進化をし続けている地域です。このnoteでも紹介したように、各地で震災前には無かった新しい取り組みや事業も生まれています。

まだ福島12市町村に訪問したことがない人も、訪問したけれど本記事紹介先には行ったことない人も、変わりゆく「福島」に出会う旅に出掛けてみてほしいです。そして、その福島12市町村での体験を発信し、出会いと感動のひと時をシェアしてくれると嬉しいです。(文/ADDress取締役・広報PR・自治体連携担当:桜井里子)

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