2019年は歯医者に通えたらいい


突然なんですけど、数ヶ月前に前歯がポッキリと折れました。

本当に、正直に、起こったこと(起こってしまったこと)をお話すると、ポッキリというより、 ゴキッ って感じでした。ゴキッと折れました。

え~~~!?とね。 なりました。 本当に正直に話してしまうと、「……?」って感じでした。 でも心の中では「…え、え? …え!?」と思っていました。 パニックですね。うららかな朝日が照ってるような、白いフロアのワンルームマンションで、コーヒーを淹れながら、 ボキッ と前歯が折れたら、パニックですよね。 お気持ち察して欲しい。

最初は、「イタッ」って思ったんです。 瞬間的に。 現実的にはちっとも、これっぽっちも痛くなかったのに、咄嗟に「痛い」と思いました。これって、思うに人間の動物的な本能の部分が作用していまして、「ボキッ」と骨の音がしたから、反射で「痛い」と反応してしまったんですよね。

あとから振り返ってみて、「危機察知能力~」と思いましたけど、思うだけですね。 前歯が折れてしまった以上、危機察知したところでもう遅いで、となりました。 後悔は先には立ってくれないのです。

前歯が折れてしまうと、アイデンティティとか、社会的な立場とか、いやそもそも成人としてそれはどうなん?とか、いやまず人間としてさ…みたいな話が舞い込んで舞い込んで仕方がないです。

会う人会う人、二言目には「早く前歯入れなあかんやん!」って言ってきます。一言目には「どうしたん!?」って言います。
 最初は良かったんですけど、そのやり取りも8回目くらいから飽きてきまして(8人全員同じこと言うので)12人目くらいから「逆に似合うやろ?逆にこのままのほうが良くない?」って言ってました。

逆に、って言ってしまってる時点で、良い事なんて一つも無いのは自分が一番分かってるんですけど、それから前歯、未だに無いです。

数ヶ月前、前歯がボキッと折れたので、数ヶ月間、ボキッと折れた時の名残りを存分に携えて、前歯無いです。
結構思ったより根元からボキッてしまったので、根元からまるまる、綺麗さっぱり前歯が無い状況で、数ヶ月生き延びました。

前歯が一本無いことによって「不便やな~~」と思うことは、実はそんなに起こらないのですが、初対面の人(もしくは「こいつは前歯が無い」という私に関する予備知識の無い人)とお話したり、お食事したりする時にものすごく気を遣います。
おかげさまで、お話しててもお食事してても「前歯が一本欠けている」とは気付かせないでいられるスキルが身につきました。これから先の長いかもしれない人生で、「不意に前歯が折れてしまった時」しか使えないスキルです。これに関しては本当に熟練ですが、このスキルを活かすよりも、これから先の人生で「不意に前歯が折れてしまう時」が二度と来ないことを祈るばかりです。

三言目には「なんで歯医者行かへんの?」って聞かれるんですが、本当になんでなんでしょうか。
私の中で ”前歯が無いことを隠すスキルを養う>>>>歯医者に通う” だったからだと思うんですけど、文字にしたら本当に頭が悪い。こんな阿呆に育ってしまって本当に両親に申し訳ない。

今年度で平成も終わりますし、来年はきちんと歯医者に通える大人になりたいです。大人になりたいというより、きちんと前歯を備えた人間になりたいです。前歯が無いって、社会的に本当に不便。私が歯医者に通うより皆が前歯一本折った方が早い気がする。

喋っても食べても前歯無いことバレへんようにする技教えるし、ちょっとだけやからええやろ?と友人たちの前歯を軒並みへし折ってしまう前に、2019年は歯医者に通いたいです。


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