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子どもの潜在能力を引き出す遊び

鬼ごっこ:フロー状態への入り口

大学生の双子の息子が私の勤める保育園に来て、子どもたちとたくさん遊びました。子どもたちはいつも以上に大はしゃぎ!子どもたちも息子たちも、すっかり遊びの世界に入り込んで、夢中になって遊んでいます。鬼ごっこでヘトヘトになるまで全力疾走したり、みんな思いっきり遊んでいるようでした。

喜びを観察する:子どもの遊びを振り返る

私は子どもたちのこんな姿を見るのが大好きです。全身全霊で鬼ごっこを心から楽しんでいる子どもたちを見ていると、まさに「今、ここ」に没頭することができる、マインドフルなパワーを感じます。

このように、時間を忘れて何かに没頭している状態を、「ゾーンに入る」とか 「フロー状態 」と呼ぶことがあります。私たちも、大好きなことをしている時や活動にのっているときは、「えっ、もうこんな時間!?」とびっくりすることがありますよね。

子どもの遊びにおけるフロー状態の探求

このようなことから、フロー状態で脳にいったい何が起こっているのかとても気になり始めたので、調べてみることにしました。すると、やはり!脳科学的にも子どもの発達に良い影響を与えることが証明されていました。

シータ波で前頭葉がフル稼働

鬼ごっこなどのゲームを通じてフロー状態に入ると、前頭葉のシータ波が顕著に強くなるという研究結果があるのです。
これはどういうことでしょう?
前頭葉がフル稼働しているということです。

前頭前野の活性化:鬼ごっこなどのゲームを通じてフロー状態に入ると、前頭葉のシータ波が顕著に強くなるという研究結果があります。これは、子供たちがゲームに没頭すると、彼らの脳が集中し、前頭葉が活発に働いていることを示しています。

前頭葉は、脳の前部に位置し、意思決定や計画、注意、記憶、ワーキングメモリーなどの実行機能を司っています。フロー状態に入ると、この前頭葉がフル稼働し、集中力や認知的な制御が高まります。言い換えると、前頭葉が活性化することで、子供たちはゲームにおいて戦略的に行動し、状況を把握し、感情を調整し、素早い決断ができるようになります。

遊びに対する脳の反応:神経科学的洞察

デフォルト・モード・ネットワーク(DMN)の低下:DMNは、心の迷い、自己関連の思考、空想に関連する脳のネットワークです。フロー状態に入ると、DMNの活動は低下します。これにより、子どもは今この瞬間に完全に没頭し、無関係な思考に気を取られることなく、遊びに集中できるようになります。

報酬や快楽の神経伝達物質が放出:また、楽しい活動に没頭すると、脳の報酬系が活性化され、報酬や快楽に関連する神経伝達物質が放出されます。これは、楽しい活動に没頭すると、ドーパミンなどの神経伝達物質が放出され、喜びや満足感が生じる現象です。

例えば、鬼ごっこのような活動に夢中になると、子供たちの脳内でドーパミンが放出され、その興奮や楽しさが増幅されます。この結果、子供たちは活動により熱中し、ゲームへの参加を促されることがあります。

子供が楽しい活動に夢中になることで、学習意欲や自己肯定感が高まります。また、このような活動は、子供たちが身体的、社会的、そして認知的スキルを発展させるのに役立ちます。

感覚運動統合の促進:さらに、感覚運動統合が促進されます。
感覚運動統合とは、脳が受け取ったさまざまな感覚情報を統合し、適切な運動行動に反映するプロセスを指します。つまり、視覚、聴覚、触覚、そしてバランス感覚などの感覚情報を組み合わせて、その情報に基づいて適切な動きを制御する脳の能力です。

感覚運動統合の促進は、子供たちが鬼ごっこなどの活動に従事することで起こります。このような活動では、子供たちは様々な感覚情報を受け取り、その情報に基づいて迅速に動く必要があります。例えば、相手を見つけるために視覚情報を利用し、追いかけるために足を動かし、周囲の障害物を避けるためにバランス感覚を使います。

フロー状態に入ると、子供たちはより集中し、自分の行動に完全に没頭します。この集中度の高まりは、感覚入力と運動応答の同期を増加させ、感覚運動統合を促進します。つまり、子供たちはよりスムーズかつ効率的に動くことができ、より適切な反応を示すことができるのです。

具体的には、鬼ごっこなどの活動中に、子供たちは視覚情報を活用して他のプレイヤーを追いかけ、聴覚情報を使って彼らの動きを感知し、触覚情報を使って障害物を避けます。これらの感覚情報が統合され、適切な運動反応に反映されることで、感覚運動統合が促進されます。

フローを促進するコツ

フロー状態に入るためには、アクティビティの難易度と個人のスキルレベルとのバランスが重要です。アクティビティが難しすぎると、ストレスやフラストレーションの原因になります。逆に、活動が簡単すぎると、興味を失い、退屈してしまうかもしれません。

フロー状態に入るための理想的なアクティビティは、個人の能力より少し上で、適度なチャレンジができるものであるべきです。十分な刺激があり、なおかつ達成可能な目標が設定されていると、フロー状態に入りやすいのです。私たち大人は、子どもたちが自分の能力や興味に合わせて活動や課題の難易度を調整しやすい活動を提供したいものです。

遊びの力を子どもの発達に活かす

幼少期の経験は後の人生に与える影響が大きいとされています。例えば、幼少期に受けた虐待や家庭内のストレスは、将来の心理的健康や社会的適応に影響を与える可能性があります。
ACE(Adverse Childhood Experiences)の研究では、幼少期に経験した負の体験が成人期の健康や幸福に与える影響が明らかにされています。これらの負の体験は、心理的な問題や生活習慣病、社会的問題など、さまざまな健康上のリスクと関連しています。
したがって、幼少期の環境は後の人生に大きな影響を与える可能性があり、その影響は健康や幸福に関わる重要な要素となります。

特に、幼少期の子供達の持つ強い好奇心や、今ここに没頭するスキルは、大人にはなかなか真似できないパワーです。これらの子供達の欲求をなるべく多く満たせてあげられるような環境や機会を提供していきたいですね。この時期に育まれる好奇心や没頭する能力は、間違いなく将来の学習能力や創造性、問題解決能力などの重要な要素となります。子供たちと夢中で遊んでいた双子の息子たちも、今は大学で研究に夢中です。「子供の時の遊びと同じ」「大人用のレゴみたいなもん」と言ったりしています。

したがって、幼少期に子供たちに豊かな経験を提供し、彼らの興味や好奇心を育むことは、彼らの健全な成長と幸福につながると感じています。そして子どもたちが遊びを通してフロー状態を体験することは、子どもたちの潜在能力を最大限に引き出すことができそうです。
適切なレベルで子どもたちが挑戦し、夢中になれるような遊びの機会を提供し、彼らが遊び、探検し、学びと発見の喜びにどっぷりと浸ることを奨励していきたいですね。


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