個性を諦めろ

もう個性にはうんざりだ。

もういやだ。
もう誰1人変わってるねって言われることに命賭けないでほしいし、
もう誰1人「ユニーク」とか「いいキャラ」とか言って流して親身に寄り添うことを放棄しないでほしい。

もう誰1人機能不全家庭出身者に素っ頓狂な憧れを抱くことを許さないし、美大受ければよかったコンプレックスを抱えることを規制するし、バンドマンとの関係性に何かしらのドラマを期待することを禁じる。
もっと先の話をしたいんだ。

自分を吟味する。
昨日Netflixで観たドラマのタイトル、さっきのエスプレッソのミルクの種類、着てる白Tのブランド。
付き合った友達、通った学校、聴いた曲。
今日差してきたビニール傘はなんでAPO傘なのか? EVA傘じゃダメだったのか? APO傘である必然性があったんだろうか?
ひとつひとつ精査して"どっちでもよかった"ものをそぎ落としていく。そぎ落としてそぎ落とした最後の最後にどうしてもどうしてか残った"どうしてもこうだった"ものを個性と呼ぶ。

受験失敗、片親、病気、その他自分ではコントロールできなかった諸々の外的要因は単なる状況にすぎない。それらは何も決断しない。スケープゴートにするな筋を違えるな恥を知れ話を先に進めろ。気持ちはわかるぜ気持ちはわかるから話を先に進めろ。話を先に進めろ。話を先に進めろ!

それは固形物じゃなく流動体だ。
循環し、脈打ち、波動を宿した物語だ。
そして、個性についての誤解を生んでいる悲劇的構造がここにある。物語は無数だけれど、ラストシーンの作劇方法にはあまり種類がないということ。

僕と同じ香水をつけてる人を3人知ってる。
ジルスチュアートのヴァニララスト。
1人は美容の専門家で、公私問わず色々試した末にこれをよく使うようになったと。
もう1人は最初に買ったのがこれで、これ以外買ったことがないし、特に不満もないから買い続けてる。
もう1人は前の彼氏の今の彼女が使ってるのを知って使いはじめたって言ってた。

これを、個性と呼びたい。
僕はそれぞれの愛おしい文脈の読者だ。
正直最後の子についてはまだぜんぜん読み解けていない。なんでそうなったのかぜんぜんわからない。怖い。すごく怖いけど、その切実さは等しく美しい。怖い。

彼女らが買ったものはまるっきり同じだろうか。
渋谷なら東急で、一万円札を持っている人全員が買えるものだ。
彼女らは没個性的だろうか。
あんたが個性って呼んでたあれはなんだ。
妙にかさばってるけど風で倒れそうだ。

モノが他人と同じだとみんな自信をなくす。
それは慎ましさなんかじゃなく、翻って選択の強度への不敬だ。自分の文脈を、過去をなめるな。今喋ってる自分の口から出た自虐に過去の自分を巻き込むな。
その品のなさが最近すごくいやだった。ので書いた。二度とこの話をさせるなよ。寝る

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