キング牧師にがっかりした

キング牧師をちゃんと知ったのは、多くの同世代と同じく中学1年か2年の英語の授業中だった。教科書に彼の伝記が載っていた。

それまでも「黒人の権利のために戦った英雄」というくらいのことは認識してた。黒人は差別されて久しいのだからそういう人もいるだろうなって思ってた。

その授業中僕は絶望する。
教科書には、身振り手振りを交えて演説するスーツ姿の黒人男性の写真の下に、「キング牧師」とキャプションが振ってあったから。

生まれて初めてリアルに身の毛がよだった。
この人がキング牧師?
嘘だろ、冗談だろ、怖い、なんだこれ!なんだよこれ!
社会への幼い信頼が一気に瓦解して、全身の毛穴から熱が逃げていった。逃げていった僕の体温の一粒一粒が、お前も逃げろ!早く逃げろ!早く!早く!早く!って叫んだ。

キング牧師は黒人だった。
つまり、黒人が黒人の権利を侵害されて、やめろ!って言ったわけだろ。
そんなの当たり前じゃないか。
被害者が被害を訴えるのは当然だ。
人間ってまだこんな次元の低い話をやってるのか?

僕は、白人であるキング牧師が加害者側の岸で同調圧力に負けず「おいそろそろやめようぜ! 俺たちダサすぎるだろ!」って声を上げたからこその美談、だからこその彼への英霊視だと思ってた。
そういう進歩的な話が、自分が生まれた平成の東京ではもうだいぶ過去の話としてある、世界史はすでにそういうフェイズにあると思ってた。
これはあんまりじゃないか。

今までなんて無防備に生きてきたんだろう。
覚悟をしなくては。
覚悟をしなくては。
いつ泣かされるかわからない。クソ野郎、もう信じないからな。おっさんたちが作った世の中はクソだ。
キング牧師、辛かったろうな。よりによって被害者側の岸にいるあなたに声を上げさせてしまった。なんて情けない。申し訳ない。腹立たしい。

この怒りはのちにピーター・ノーマンという人がいることを知るまで続いた。
知ったの先月なんだけど。10年以上本当に辛かった。本当に辛かった。

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