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「未来の温泉/温泉街ってどんな場所になっていると思いますか?」

こんにちは。アドビ未来デジタルラボの永瀧(えいたき)です。
様々な業界で活躍する有識者とラボの学生研究員が”ワクワクするデジタル社会の未来”について議論するアドビ未来デジタルラボのゲストセッション。この記事では最近のセッションで議論した内容をご紹介します。

突然ですが、温泉は好きですか?

私は温泉が大好きです。リラックスできて心の芯から疲れがとれるようなお湯も、露天風呂であったまった体が外気で冷やされる時の”整っていく”感じも最高ですよね。

それだけではなく、温泉街の懐かしい感じや、旅館で食べる料理など、多くの日本人にとって温泉文化は馴染みが深く、温泉は旅行に行く際の目的の上位に入るのではないでしょうか。

そんな多くの人から愛される「温泉文化」をユネスコ無形文化遺産に登録しようとする取り組みが行われているのをご存じですか?温泉は日本に約3000あるとされ、「『温泉文化』ユネスコ無形文化遺産全国推進協議会」が中心となって活動が進められています。

今回は、渋谷区観光協会の代表であり、「地域創生×エンターテインメント」を掲げる一般社団法人Channel47を設立した金山 淳吾氏をゲストにお招きして、アドビ未来デジタルラボの学生研究員とともに日本の「温泉文化」を掘り下げ、未来の温泉文化について議論しました。

最初に、金山さんから学生研究員たちに「温泉文化とは何か?」という本質的な問いかけがありました。

2013年に「和食」がユネスコ無形文化遺産に登録された際には、「日本人の伝統的な食文化である和食とは何か」が次の4つに整理されました。

  1. 自然の恵みの食材と、調理や保存の工夫

  2. 栄養バランスがいい一汁三菜

  3. 旬の食材と季節の飾りつけ

  4. 正月などの年中行事の特別な料理

このように言語化することで、未来を想像するための本質を掴むことができ、発想を広げさらに飛躍、深化をさせていきやすくなります。だからこそ、「温泉文化とは何か」という本質的な問いから思考を始めることとなりました。

私も、子どもの頃から温泉文化といえば、「地下から自然と湧き上がってくる温かいお湯がある」、「美肌にいい、健康にいい、怪我や痛みに効く」、「旅館やホテルで美味しいご飯を食べられる」、「浴衣を着る」、など何となくのイメージはありましたが、しっかりと「温泉文化とは何か」について言語化したことはありませんでした。

「温泉文化とは何か」という問いに対して学生研究員たちからは次のような声が上がりました。

  • 温泉と日本の風景は密接につながっていて、両方が合わさってこそ温泉文化と言える

  • 訪れるお客様に対する「おもてなし」の心

  • 日本人の美意識

  • 他人との絆や交流 - 「裸の付き合い」という言葉のように、一緒に温泉に入ることで生まれる絆

  • 湯治場として利用されてきたヘルスケアとしての側面

  • 心と体を浄化してくれる場所、癒しの場

そのほかに「重い話や深い話を友達や家族とするときは、温泉に行って話す」という発言が学生から出たところ、その発言へ賛同する声が多く上がりました。温泉には悩みや強い想いも包み込んでお湯に流してくれるというイメージもあるようです。

一方で、このような形のない文化的価値を海外の人たちに伝えていくことは難しいのではないかという意見もありました。

  • 他人と一緒に裸で湯船に浸かることを海外の人たちはどのように感じるのか?

  • タトゥーをしている人の入浴禁止、入浴のマナーなど、日本文化に対する理解と啓蒙

温泉文化がユネスコ無形文化遺産に登録されることで、海外からの観光客が増え、その結果温泉文化のあり方を変えてしまうのではないかという声も聞こえました。

このような不安材料があるからこそ、「温泉文化とは何か」という本質的定義を言語化しておくことが重要だと感じました。温泉文化という本質が整理されていれば、変えていい部分と変えてはいけない部分を理解した上で、未来の温泉/温泉街を想像することができるからです。

学生研究員と「温泉文化とは何か」を話し合った後に、「温泉/温泉街の未来をデザイン」をテーマに話を発展させました。

学生たちからは、以下のような意見が上がりました。

  • タトゥーのある人も入れるような温泉を作ってみる

  • デジタルコンテンツで、温泉の入り方やマナーについて伝える

  • LGBTQにも配慮した温泉のあり方を考える

  • 温泉はハンディキャップがあったり、怪我をしている人は入りにくい(湯治場としての文化的意味があったのに、怪我をしていると入りにくいのはなぜか?)

など、デジタルテクノロジーを活用できそうなものや、それ以外のものなど、様々な意見が上がりました。ディスカッションが白熱したところで、残念ながら今回のセッションは時間切れとなりました。

2026年のユネスコ無形文化遺産登録に向けて、国と都道府県、そして温泉に関わる多くの人が共通の目標として進めています。素晴らしい温泉文化が根付いている日本に住むものとして、私も温泉文化の無形文化遺産登録は強く後押ししたいと思っています。

今回のディスカッションはここまでとなりましたが、なんとアドビ未来デジタルラボの学生研究員たちは、11月6日から12日までの1週間開催される「SOCIAL INNOVATION WEEK 2023」の『未来の温泉をデザインしよう』と題したセッションに参加することとなりました!

11月12日に行われるこのセッションでは、温泉地をもつ都道府県知事と、デジタルテクノロジーを「温泉文化」にどのように役立てることができるかをディスカッションします。

学生研究員の有志たちが、都道府県知事たちにアイデアを発表して、ディスカッションする模様は、このnoteでもご紹介しますのでお楽しみに!

ゲストスピーカー

金山 淳吾
一般財団法人渋谷区観光協会 代表理事/SIW エグゼクティブプロデューサー
1978年生。電通、OORONG-SHA、ap bankでの事業開発プロデューサーを経てクリエイティブアトリエTNZQを設立。コレクティブインパクトをコンセプトに様々なクリエイター、デザイナー、アーティストと企業、行政機関との共創でソーシャルデザインプロジェクトを推進。2016年より一般財団法人渋谷区観光協会の代表理事として渋谷区の観光戦略・事業を牽引。2018年、一般社団法人渋谷未来デザインの設立を牽引し、設立時理事として参画。2023年には47都道府県へと活動のフィールドを広げた一般社団法人channel47を設立。


永瀧 一樹(えいたき かずき)
ソーシャルメディアマネージャー 大学院でグラフィックデザインや映画制作を学び、以来、Adobe Creative Cloudのヘビーユーザー。子どものころの夢は学校の先生で、教員免許まで取得したけど、今はなぜかアドビでソーシャルメディアを担当している。学生や若者が活躍するデジタル世界を作ることに心を熱くしている。


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