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私の純猥談 超短編「11月の朝」

冬の朝が好きだ。自転車に乗って、空気を肺に入れて、深呼吸する。
冷たい空気が、一気に流れてきて少しむせこむ。
すると、鼻が痛くなる。少しだけ、物思いに耽ってみると思い出すのは、
いつだってなんでもない朝の事だったりする。

横で寝息を立てる君を、起こしてしまわない様に、ゆっくりと起き上がって、
ベットから抜け出す。静かに歯を磨いて、コーヒーを淹れる準備をする。
部屋を見渡すと、昨日の酒盛りの残骸と、下着が散らばっている。
余程、疲れているのだろう。少し物音を立てたくらいじゃ、目を覚さない。
疲れさせたのは、自分かと小さく笑う。君の寝息をBGMに、身支度を整える。
あと何回、同じ朝と、あと何回、熱い夜を過ごせるのか、誰にもわからない。
確かなのは、僕らの関係があまりにも、不安定だと言うこと。
そんな心配を、君に吐露すると、「大袈裟だ」と、笑って見せる。
そして、もう一度僕をベットに引き込む。
もう外は11月だ。君の大嫌いな季節だ。
遅刻してしまうのではないかと、ヒヤヒヤしていても、君の腕に飛び込む。
僕の冷えた足に触れて、ケタケタ笑う君を、ゆっくりと抱きしめた。

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