教員の家庭でなくてもホームスクーリングの学力に差が出ない理由

冒険家の皆さん、今日もイスカンダルに向けてワープしていますか?

さて、以前「むらログ: ホームスクーリングの方が正しい理由と根拠」という記事で触れたレイ博士の論文には、以下のような部分があります。(ブログでは引用しませんでしたが)

Teaching certification of homeschool parents is not related to their children’s academic achievement.
私訳:ホームスクーラーの保護者の教員の資格は子供の学力と関係がない。

最初にこの記事を読んだ時はちょっと違和感がありました。というのも、この反対はありえないからです。普通のサラリーマンや主婦を学校にまねいて「今日一日このクラスの担任をお願いします」と言ったらかなりカオスなことになるでしょう。僕も3年間学校の先生をしていたので、その辺りは断言できます。

ただ最近いろいろ考えているうちに、実はこうした調査結果には何の不思議もないのかもしれないと思うようになりました。というのも、ホームスクーリングと学校の先生の仕事はまったく違うからです。学校の教員には高い専門性が求められていますが、それはホームスクーリングではあまり役に立たないのです。

学校の教員にあって、他のビジネスパーソンにない一番大きな専門性は、何十人もの子供を一人で扱う能力です。しかし、これは明らかにホームスクーリングの家庭では必要ありませんよね。

僕の専門の日本語教育の世界における専門性というと、実はこうしたクラス運営能力だけではありません。 ホームスクーリングの世界でも重宝するのは、コースデザインの能力です。日本語教育の学習者は非常に多様ですから、その学習者に対してどのような教材をどのようなスピードで扱えばいいのかとか、一週間にどのくらいの時間を使えば、予定の期間内で一定の能力を育てることができるのか、こうした事は日本語教師として多様な現場で長い経験を持っていないと判断することができません。そして、日本のホームスクーリングの子供たちに対しても、英語の勉強などに関してはこうしたコースデザインに関する知識は非常に役に立ちます。なぜなら第二言語の習得という意味では英語も日本語も共通する部分がかなりあるからです。

ところが学校の先生がコースデザインをする機会があるかと言うと、考えてみれば全然ないんですよね。コースデザインは文部科学省と自治体の教育委員会が全てを行ってしまい、 決まった教科書で決まったカリキュラムを教えるだけです。もちろん副教材を選んだりする裁量はありますが、ホームスクーリングの世界にある無限に近い選択肢の中から考えるのとは次元が違います。

ホームスクーリングではそもそも学校のカリキュラム通りに勉強するのかから再検討することができます。 英語であれば例えば海外のテレビドラマの DVDを教材にして英語を身に付けることもできますし( ご関心のある方は『海外ドラマDVD英語学習法』などをご覧ください)、社交的な人は Twitter などでどんどん英語を使ってネイティブとコミュニケーションを始めることもできます。(本間正人「世界とつながる Twitter英語学習法」など) しかし、学校の教員にできる選択は特定の教科書に基づいた、ごく数冊の補助教材の候補の中から選ぶことだけです。

その一方で、家庭の保護者は学校の教員にはない利点を持っています。その中でも最も大きなものが、その子供のことをよく知っているということです。学校の教員は長くても2、3年ぐらいしかその子供のことを知らないことがほとんどでしょう。しかも目に見えるのは教室の中の一面だけで、それも何十人もいる子供の中の一人にすぎません。 家庭の保護者であれば兄弟が2、3人いたとしても、はるかに学校の教室に比べれば一人一人が見えますし、しかも多くの場合は生まれたその日から、その子供との付き合いがあるわけです。これで学校の教員に勝ち目があるわけがありません。

また、21世紀にはインターネットやスマートフォン、VRゴーグルなどの非常に効果的な教育のツールが存在していますが、少なくとも日本の学校ではこれらはほとんど使うことができず、非常に残念なことに学校の教員はこれらを使った学習方法をほとんど知らないか、あるいは全く知りません。しかしホームスクーリングの子供であれば、こうした先進的な学習方法をいくらでも採用することができるのです。

このような事情を考えてみると、教員の子供とそうでない保護者の子供の間でホームスクーリングの学力に違いがないという研究結果は、それほど不自然ではないのではないでしょうか。

そして何よりも、もしこの記事を読んでいる人のお子さんが学校で苦しんでいる場合は、「自分は学校の先生じゃないからホームスクーリングなんかできるはずがない」などと考える必要はまったくないということお伝えしたいと思います。 学校でみんなに合わせて同じスピードで同じ内容を勉強することと、ホームスクーリングはまったく違います。 ホームスクーリングに学校の教員の専門性はまったく必要ありません。

そして冒険は続く。


【参考資料】
Private Homeschool Education : Research and Philosophy Show Government Control Not Needed
https://www.hawaiifamilyforum.org/wp-content/uploads/2018/02/State-control-regulation-of-homeschooling-fact-sheet.pdf

むらログ: ホームスクーリングの方が正しい理由と根拠
http://mongolia.seesaa.net/article/464194014.html

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ありがとう! 冒険しなきゃ生きてる意味ないよな!
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冒険家むらかみ

冒険家、日本語教育コンサルタント。 『冒険家メソッド』『しごとの日本語 IT業務編』の著者。 「むらログ 日本語教師の仕事術」管理人。発言は所属機関とは何ら関係がありません。未来につながる語学学習の情報を発信中。二人のホームスクーラーの父。

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