外国語教育における VR 技術の応用の実践例

冒険家の皆さん、今日も異世界で暴風竜ヴェルドラを召喚していますか?

さて、昨日は VR が一般企業での研修などに大量に使われていると言うことをご紹介したところで時間になってしまいました。今日は実際に外国語習得の分野での利用についてご紹介してみたいと思います。


【VRは外国語教育にこそ向いている】

VR が教育に使われている記事などを読んでみると、化学の分子構造を立体的に見たり、中東の紛争地域の360°の実写動画の中に入ったり、昨日ご紹介した恐竜の時代の地球を体験したりといったものが目立ちます。正直な話、外国語教育の存在感はそれほど VR の世界では大きくありません。しかし、先日こんなビデオを見ました。話しているLynne Chengさんは、HTC ViveのProduct Managerだったという人ですから、まさに業界の中心にいた人です。
「EdTech: Power of VR in Education」

私訳
「VR を上手に使っている先生方に話を聞いてみると、最初は理科や算数の先生方が多いと思っていたんです。脳を見せたりそれを解剖するところを見せたりすることができますよね。でもその先生方( VR を上手に使っている先生方)の多くは外国語(と文化)の先生だったんです。(理由が)よくわからなかったんですが、生徒たちは同級生の前で慣れない言語で話さなければいけないことに不安を感じていたんです。でも VR のゴーグルをかけてみると、突然違う場所にいることになりますよね。パリの通りにいて、フランス語でバケットを買ったり。パリの喧騒に包まれていると、その通りの臭いまで感じられそうになってくるんです。そうすると教科書で読むよりずっとよくフランスの言語や文化について学ぶことができるんです。」 (5分30秒ぐらいから)

VR の最大の魅力は、「違う世界に入ることができる」ということなので、こうした言葉には非常に説得力があります。


【英語や中国語やフランス語教育の世界では導入され始めている】

今フランス語の話題が出ましたが、実を言うと僕の住んでいるエドモントンの公立教育委員会のIISLEという施設では、フランス語学習のために300台の VR ゴーグルを用意して、市内の学校に貸し出ししています。 あまり派手に宣伝はしていないのですが、 以下の技術サポートのページにさりげなく「Virtual Reality」が含まれているのが確認できると思います。
Technologies Support
https://sites.google.com/a/epsb.ca/iisle-second-languages-epsb/Home/about-iisle/key-concepts/technologies-support

中国語についてはちょっと検索するだけでかなり色々な資料が出てきます。以下に二つほど動画を貼り付けておきます。

以下は VR 空間の中で普通の授業形式で中国語を教えているだけなので、 それほど VR の長所を引き出しているという印象はありません。
Learn chinese in BeanVR - YouTube 

それに比べて以下の動画では、 VR の空間の中に表示される漢字を大きくなぞることになっています。 紙にちまちまと書くよりは iPad ぐらいのタブレットで大きく書くだけでも効果は違うだろうと思うのですが、 VR の中ではさらに大きく書くことができますね。
Learn Chinese in VR - MorphoVR Gameplay (Pre-Alpha) - YouTube


日本では英語教育の中で既に VR が取り入れられています。公教育ではないのですが、外国人のために忍者の体験をしてもらうための娯楽施設で、日本人向けに VR と忍者で英語を学ぶというコースが開催されているのです。これは面白そうですよね!

VRと忍者で英語を学ぶ!小中学生向け夏休み体験イベント「VR 忍(Nin)glish道場」開催 | VR Inside


【日本語教育の世界ではまだ認知は進んでいない】

こういうのを見ていて、僕の中では勝手に「ついに日本語教育の世界でも仮想現実の利用が盛り上がってきたな!」と思っていたのですが、先月の「#日本語教師チャット」のトピックの投票では、 VR は全く人気がありませんでした。なんと四つの選択肢のうちで獲得票は13%のみの最下位だったのです。


それで、 日本語教師の方にアンケートをしてみたのですが、やはり多くの方がまだ使ったことがなく、専用のゴーグルを持っている人は5%しかいなかったのです。

そしてこの5%の中には、3DoFというタイプの自由度の少ない VR ゴーグルも含まれているでしょうから、没入感もあり、かつその中で自由に移動もできる6DoFのVR ゴーグルを持っている人は更に少ないのだろうということが想像できます。

もちろん前の記事でご紹介したトレド大学のYamazakiさんや、MITの相川孝子さんのInner Child Projectなどがありますが、まだまだ注目度もかなり低いのではないかと思っています。
ちなみに相川さんのプロジェクトの広報動画が以下にありますが、このガジェットをつけている本人が相川さんです。
https://www.dropbox.com/s/jwp5pzoe01yy4xy/InnerChild.mp4?dl=0

市販されている VR の日本語教育アプリとしては、以下の「Mondly」があります。少なくとも2年前には市販されていて、日本語教育だけではなく多くの言語に対応しています。
Learn Languages in VR with Mondly for Daydream VR! Hands-On Review with Japanese and Spanish! - YouTube

このアプリが素晴らしいと思うのは、音声認識がついていて、曲がりなりにもレストランなどの現実的な場所で学習者が日本語を話し、それによって会話がシミュレーションできるという点です。現時点ではかなり先進的なアプリではないかと思います。

この後で、 VR にはなぜ教育効果があるのかという点と、僕が実際に体験してみたことを書きたいと思っていたのですが、今日もちょっと時間がないのでここまでとさせていただきます。

そして冒険は続く。

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【参考資料】
むらログ: 仮想現実が語学教育を変える!
http://mongolia.seesaa.net/article/452046082.html

むらログ: VRゴーグルの教育的効果
http://mongolia.seesaa.net/article/468489344.html

「EdTech: Power of VR in Education」
https://www.youtube.com/watch?v=H9cjLm_t_pY&list=WL&index=2&t=330s

Learn chinese in BeanVR - YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=EzNVzsQfL0Q

Learn Chinese in VR - MorphoVR Gameplay (Pre-Alpha) - YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=V_yF8G6ybHg

VRと忍者で英語を学ぶ!小中学生向け夏休み体験イベント「VR 忍(Nin)glish道場」開催 | VR Inside
https://vrinside.jp/news/post-165026/?fbclid=IwAR22T9SS811n4YpfpEyJEvXbmIomyrCwO4xDcpxMAa1lDJ8vsLkgqNYJojg

MIT "Inner Child Project" Video
https://www.dropbox.com/s/jwp5pzoe01yy4xy/InnerChild.mp4?dl=0

Learn Languages in VR with Mondly for Daydream VR! Hands-On Review with Japanese and Spanish! - YouTube https://www.youtube.com/watch?v=_m5h8iWLto8

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冒険家むらかみ

冒険家、日本語教育コンサルタント。 『冒険家メソッド』『しごとの日本語 IT業務編』の著者。 「むらログ 日本語教師の仕事術」管理人。発言は所属機関とは何ら関係がありません。未来につながる語学学習の情報を発信中。二人のホームスクーラーの父。

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