ツクラー向けUIに関してあれこれ

ゲームUIについてはすでに専門書も多く出ていたり、今さら語るようなこともない気はしますが、今回は「RPGツクール」でゲームを制作する方向けに基本的なことを話します。


・操作深度を浅くしよう

たとえば、「RPGツクールMV」で、「いつでもどこでも町やダンジョンにテレポートできる」という仕様を実装するとします。
実装方法として最も簡単なのは、「テレポーター」というアイテムを作成し、タイプを「大事なもの」、使用効果に「コモンイベント」といったところでしょう。

これでひとまず動くものにはなると思います。
ただし、これでは大きな問題があります。
実際にそのアイテムを使う場合を考えてみましょう。

メニューを開く

アイテムを選ぶ

大事なものを選ぶ

テレポーターを選ぶ

移動先を選ぶ

と、めちゃくちゃめんどくさいです。
この階層構造を「操作深度」といいます。この場合は操作深度が5であり、やたら深くなってしまっています。
しかも「テレポート」はそこそこ頻繁に使う操作です。
それがここまでめんどくさいと「もしかしたら歩いた方が早いのでは……?」と錯覚してしまうほどです。

ならどうするか?

画像1

こうです(『Light Trail』より)

「アイテム」と同じ階層に「テレポート」(上の画像だと「トラベル」)を設置するのです。

メニューを開く

テレポート(トラベル)

移動先を選ぶ

これにより、ここまで操作深度は浅くなります。
UI設計において「操作深度を浅くする」ことは極めて重要な概念です。
「どんな操作でも深度3くらいでアクセスできる」のが望ましい、とされています。

とはいえ、「え、でも具体的にどう実装すればいいのかわからん……」という方もいるでしょう。
Scene_MenuとかWindow_MenuCommandとかでごにょごにょするわけですが……。
あるいは、トリアコンタン様のそれっぽいプラグインもあるようです。


・不要な情報、不要なコマンドを消す

たとえば、特に戦闘のないホラーゲームをつくるとします。
その際、「Lv」や「MP」、場合によっては「HP」の表記も不要になるはずです。
そういった場合はそれらを表示させないようにしましょう。
「MP……? 魔法とかあるのかな?」と、要らぬ混乱を招くことになります。
(「RPGツクール2000」では仕様上消すことができないので「Lv」を「年齢」などに置き換える工夫などがされていました)

また、アイテムの分類で「武器」「防具」なども意味のないものになるかもしれません。同様に不要な混乱を招きます。
それらも消してしまいましょう。

「え、でもどうやって消したらいいかわからん……」
直接スクリプトを書き換える必要が出てくるわけですが……それっぽいプラグインは……あるのかな……。
具体的な実装の話をするのにはnoteは向いてないというか、後々するかどうかはわかりませんが、一つ言います。

RPGツクールシリーズは「プログラミング知識不要」を謳ってはいますが、プログラミング知識があるに越したことはありません
2000までならともかく、XP以降はスクリプトを書けるようになり大幅に制作自由度は上がりました。
そして、スクリプトが読めたり書けたりする方が結果的には楽です。

ツクールでイベントを組めるならばプログラミングの基礎素養は身についているといえます。
おそれずスクリプトの世界を覗いてみましょう。

・「いいえ」デフォにご用心

さて、ゲームをプレイして以下のような画面に遭遇した経験はあるでしょうか。

本当に上書きセーブしますか?
はい ▶いいえ

要するに確認メッセージです。
また、この場合は「いいえ」がカーソルの初期位置になっています。

これはなにか?
誤操作を防止するための措置です。
セーブデータの上書きは取り返しのつかない事態になりかねません。
なので確認メッセージを挟み、さらに「いいえ」を初期位置にすることで連打による誤操作も防いでいます。

ここで問題にするのは誤操作を防止している原理です。
これは「操作の冗長性」を利用した仕組みです。

つまりめんどくさい
めんどくさいから誤操作が防げる。誤操作が防げる代わりにめんどくさい。
そういうトレードオフになっています。

このアイテムを使用しますか?
はい ▶いいえ

それがとても貴重な重要アイテムなら場合によっては必要かもしれません。
ですが、それが店でいくらでも買えるような回復アイテムだった場合、プレイを投げ出してもおかしくないほどにめんどくさいゲームとなってしまいます。
かくいう私も、とあるゲームでことあるごとに「確認メッセージ」「いいえデフォ」を繰り出されて苦しめられたことがあります。

「上書きセーブ」については必要かもしれません。
ですが、基本的にその操作をしたプレイヤーは「その操作をしたかった」から選んでいるわけです。
正直なところ、「上書きセーブ」でも基本的には不要であるとは思っています。
(ちなみ『人類滅亡後のPinocchia』では、マウス操作であり誤操作の可能性があったため採用してます。テストプレイして「何回誤った操作をしそうになったか」などの感触から判断するとよいでしょう)

さて、上にもある「テレポート」について考えてみましょう。
この操作を選ぶプレイヤーの動機は何種類か考えられます。

①どこかにテレポートしたい
②どこにテレポートできるのか確認したい
③そもそもテレポートがなんなのかを確認したい

この場合、②と③のプレイヤーは誤ってしたくもないテレポートをしてしまう可能性があります。
ですが、もし間違えたとしても、もう一度元の場所にテレポートし直せばよいのです。
よって、テレポートの場合「本当にテレポートしますか?」という確認は不要といえるでしょう。

ただ、テレポートにアイテムやお金などを消費する場合
その場合は確認メッセージがあった方がよいかもしれません。
しかし、「いいえ」デフォまで必要か、といわれれば微妙なところです。
「アイテムやお金を失うリスク」と「操作の冗長性」を天秤にかけ、私なら不採用にします。
「いいえ」デフォはそれほどまでにめんどくさいものなのです。

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