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ファウスト

ーホントは世界平和なんてどうでもよくて あなたを支配して めちゃくちゃにしたいだけ『ファウスト/Have A Nice Day!』


いつからかこの曲をよく聴くようになった。

人との出会いは電車のレールみたいなもので、全く関わりなく進むものもあれば交わって離れていく事もあって、そのまま結合されて同じレールを走っている事もある。電車のレールと違う事は誰とどのように交わって関わっていくかは誰にも分からない、という事。

人間の存在そのもの自体には運命を感じていない。必ずその人でなければいけない理由なんて何処にもなくて、ある程度相性が合えば人間関係は成り立つ。互いに違う何かを目指している時であれば100年に1度くらいの相性でも離れていく事もあるだろう。来世も一緒にいよう、なんてよくある言葉だけれど来世も一緒に居ても同じように幸福な関係になるとは限らない。

ただ、人生の中で様々な事を経験し価値観が近くなっている時や見つめるものが同じ瞬間に、その存在へ触れる事が出来たならば、その「タイミング」の事を「運命」と呼べるのではないだろうか。


東京行きの新幹線を10月11日乗車で購入していた。

以前から決定していた予定で1ヶ月ほど前からこの日をずっと楽しみにしていた。予定の1週間前、大型の台風が近付いている事を知る。愛知県よりも関東圏の方が被害が酷くなる、と予想されており東京行きの新幹線が無事に動くかさえ危ぶまれていた。当日になり、三連休で予定されていた様々なイベントは中止や延期となっていく。気が気でなく仕事にも手がつかない。楽しみにしていた予定がなくなる、という事がこんなにも苦しい事なんて。

混乱している頭でどの選択肢をする事が正解か分からなかった。東京で落ち合う予定の人と連絡を取る。昼休憩が終わる頃には半ば諦めの気持ちが強くなり、受け入れるしかないかと考え出していた。そんな折にこんなLINEが届いた。

「来ても来なくても後悔するなら来たらええやんというか来て欲しいのが正直なところ」

その瞬間、行く事を選択していた。

世界は私の味方しかいないんじゃないかと思った。

仕事終わり、そのまま新幹線に乗り込む。不安はいつしか消えていた。

金曜の夜はMODERN DISCOへ。8月末に遊んだ時と同じメンバーと前飲みをしてお酒で失った記憶を辿るようにContactの通路を進む。初めましての人も久し振りの人も会話を交わしていく。そういえば一緒に思いっきり踊る事ってなかったね、なんて話をして台風が近付いている事も忘れ音に身を任せた。

kodakのインスタントカメラを貰ってから日常を撮影する事が増えた。何か面白いものないかな、と周りを見るようになった。いつの間にか使い切ってしまったので写ルンですを持ってきた。台風の間、一緒に料理をしたり映画を観てダラダラと過ごし、まるで"当たり前の日常"の様な時を過ごす瞬間も切り取って写真に収めたい気持ちに駆られる。自身に溶け込む様に此処に存在している事が馴染んでいく。知らない街の景色が瞳に焼き付けられていく。ずっと前から居たような錯覚に陥るけれど此処に居られる事は当たり前ではない。そんな事が脳裏を過ぎったけれど、目を背けて今、目の前にいる人を見つめた。

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台風一過の九十九里浜は波打ち際に残る海に空の色が反射して、ウユニ塩湖みたいだった。ウユニ塩湖行った事ないけど。

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千葉で行う予定だった全感覚祭が台風で中止となり日曜の深夜、渋谷で開催する事に。ずっとHave A Nice Day!で一緒に踊りたかった。私がりんご音楽祭のキックオフでモッシュピットに走って行った時、そこには居なかったけれど確かに全力で踊る事を、今を楽しむ事を思い出させてくれたのはその人の存在だった。だから急遽決まった出演はとても嬉しかった。

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右は初めてお会いしたツネトミさん。とても物腰柔らかくなんだか可愛い方だった。

時間ギリギリにDUOに辿り着いて、お酒を一杯だけ飲みたいけど時間がなかった私達はテキーラを煽った。ぬるくてレモンも何もないテキーラはかなり沁みた。揉みくちゃになって酸欠状態でクラクラしながら踊る。眩い光と酔いが回った脳内で、視界に映る人達は皆笑顔だった。

月曜の17時に帰る予定で、残り僅かな時を過ごす。馴染み始めたかに思えた景色は急速に知らない場所へ変わっていくような気がした。決してこの3日間が今の自分にとっては当たり前の日常ではない。明日、目を覚ました時には隣に居ない。寂しさの中で顔を埋めて少しだけ泣いた。顔を上げて目が合った時に、寂しいはずなのに、悲しいはずなのに、同じ想いを抱いているのだ、と感じて何故だか幸福だった。


出会いの運命はあくまでその瞬間だけだ。その運命の先を創造するのは自分次第である。全てを流れに身を任して願望と異なる未来があったとしてもそれは自己責任であると思う。願いを叶えたくば、その運命を「必然」にしたいのであれば、未来に向けて尽力する。どんなに近しい関係性でもそう言った努力は必要であると思う。一緒に居る未来が必ず欲しいから、前を向いて生きて行こうと決めた。

記憶を反芻する。日常にはなり得ない距離を手繰り寄せるように。自分のエゴよりも関係性や未来を想う。大切な宝物を守るように優しく触れるように。焦らず緩やかに時を感じながら味わう。側にいる瞬間を少しでも長く長く感じられるように。

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以前Twitterで写真を見かけて素敵だなぁと思いフォローしたニシムラさんと遂にお会いした。撮って頂いた写真が良すぎて何度も見返してる。

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photo by https://twitter.com/takchaso

Have A Nice Day!で踊った後なので顔がヘトヘトである。以上です。

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