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物語創作に役立つ書評:「ニュータイプの時代」

ご覧いただきありがとうございます。この書評は以下のnoteで示したフォーマットで書かれています。詳しく知りたい方は是非、参考にしていただけると幸いです。

物語創作に必要な3つの要素(コンセプト・人物・テーマ)を「ニュータイプの時代」から抜き出します。

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コンセプト→(ストーリーの土台となるアイデア。「もし~だとしたら?(what if ?)」という問いで表すとはっきりわかる。)


もし、新しい時代が到来して「人間の見方」が変わったとしたら?

令和に突入し「時代の変化」という観点で世の中を見つめ直している方も多いのではないでしょうか。
AIなどテクノロジーの急激な変化とそれに伴う社会構造の変化はいたるところで議論・分析の対象となっており、新しい時代がどのような様相を呈するか、予測、構想する試みが盛んです。

本書では、20世紀の後半から21世紀の前半まで評価されていた、思考・行動様式をオールドタイプ、一方それに対置される新しい時代の思考・行動様式をニュータイプとして整理しています。今後、社会への価値の創出という観点から、ニュータイプが求められるとし、以下のようにまとめています。

オールドタイプ:正解を探す、予測する、KPIで管理する、生産性をあげる、ルールに従う、一つの組織に留まる、綿密に計画し実行する、奪い独占する、経験に頼る
 ニュータイプ:問題を探す、構想する、意味を与える、遊びを盛り込む、自らの道徳観に従う、組織間を越境する、とりあえず試す、与え共有する、学習能力に頼る

インターネット普及率、スマホ普及率が80%を超え、情報の格差はなくなりつつある。また、衣食住に必要なお金も少なくなってきている。あらゆるものがサービス化し、シェアエコノミーも発達してきている。遊んで暮らすことも夢では無い…..そんな物質的なニーズや不満といった「問題」があらかた解決されてしまう時代に突入しつつあります。

そんな時代には、問題を解決するオールドタイプより、問題を発見できるニュータイプが相対的に評価されることになります。しかし現状では、多くの人は偏差値のような「正解を出す能力」すなわち問題解決能力をその人の「優秀さ」を示すモノサシとして使い続けています。

そして日本では、正解を出すのが得意である「優秀」な人がビジネスリーダーとなり、問題を提示し構想することができないまま世の中の変化についていけず、迷走している状態となっているようです。
その日本の問題、特にAIの分野について、SoftBank World 2019に登壇したソフトバンクグループの孫正義社長の発言が話題になっていました。

「日本はいつの間にかAI後進国になってしまった。ついこの間まで、日本は技術で世界最先端の最も進んだ国だったが、この数年間で一番革新が進んだAIの分野で、完璧な発展途上国になってしまった。」

AIに代表される技術に対して、日本では価値を全く創出できていないという問題が指摘されています。人々がニュータイプへアップデートし、価値を生み出すことができるようにする。日本が遅れた技術を取り戻すにはニュータイプをいかに増やせるかが重要だと言えるでしょう。

本書は、ニュータイプがどういった人材なのか、23個の観点を持って考察し、オールドタイプとの比較を通してわかりやすく解説されています。

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人物の世界観→(人の世界観は社会の価値観や政治、好み、信条などに培われ、その人の態度や習慣に表れる。)


ルールより自分の倫理観にしたがって「わがまま」に行動する。

組織のなかで同調主義が強く働く日本では、「わがまま」にネガティブな印象を持ちます。
わがままに行動し、ルールをものともしないような人は、ルールを守っている他の人たちにとって、さぞかし不愉快な存在となるでしょう。

しかし、ルールにしたがってさえいれば良いのかというと、そうでは無いと言えます。
特に社会システムの変化が激しい世界では、明文化されたルールが整備されるのが遅く、当事者が
古く・整備されていないルールの元で判断を下す場面が多く出てきます。

本書では、ルールを破っていないという理由から倫理を大きく踏み外してしまった例(コンプガチャ問題)をあげて、変化の激しい時代には当事者の決定が「真・善・美」に則るかどうかを重んじる自然法主義が重要であると指摘しています。

本書では、自然法的な考えである内在化された価値観や美意識に従い「わがまま」に判断することの必要性を学ぶことができます。

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人物のアーク→(ストーリーの中で体験する学びや成長。自分にとって最も厄介な問題をいかに克服するか。)


奪い独占する → 与え共有する

「独占は共有よりも経済的な価値が大きい」と長らく信じ続けられてきました。かのビル・ゲイツもフリーのソフトウェアを擁護する人々に対して罵詈雑言を浴びせかけていたといいます。
独占は経済学の目指している、健全な競争、適正価格を阻害し良い社会への道を閉ざします。

しかし現在ではオープンソースという考え方が広まり、共有することでコミュニティ全体の発展を促進し、より大きな価値を産むことができる可能性が注目されています。独占することが価値に繋がらない社会は少しずつ現れています。

また、ペンシルバニア大学での調査は、個人レベルでの独占と共有についての興味深い結果を示しています。
「ニュータイプ=まずギブする人=ギバー」と「オールドタイプ=まずテイクする人=テイカー」を比べると、中長期的に大きな成功を収めている人は圧倒的にギバーが多いという調査結果があります。
人生100年時代においては、周りにギブできる人間が活躍し、学びや経験の多く豊かに暮らせることになるでしょう。

本書では、独占することで得る利益から共有して得る利益への変化をニュータイプの思考を通して学ぶことができます。

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人物の内面の悪魔との葛藤→(心のネガティブな側面。認識や思考、選択、行動を左右する。「知らない人と話すのが怖い」といった欠点は内面の悪魔の影響で表れる。)


逃げることができない

一般に日本では「痛み」に代表されるネガティブな感覚・感情に対して「我慢する」ことが美徳だと考えられています。また、幼少期から「逃げてはいけない」という規範を叩き込まれています。
逃げたくても逃げようと思えない思考を作り出す原因は「逃げない」という規範が根強いからです。

本書では、「逃げない」規範が残っている理由として2つあげています。
1つ目の理由は、「逃げる人」が出てくると自分の選択に自身が持てなくなるから
2つ目の理由は、「逃げる人」が出てくると他の人の負担が増えるから

多くの人は、ある場所から逃げることによって生まれる負担を心苦しく感じて、その場に留まってしまいます。どれだけ自分が辛かろうとも耐えて耐えて、しまいには体を壊してしまう例が、残念ながら日本には多いようです。

本書では、生存戦略上「逃げること」は最も有効な戦略であると紹介されています。また、逃げることで労働市場の流動性が確保され社会がよくなることから、うまく撤退することの重要性を認識し、逃げることで広がる可能性を実感できます。

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テーマ→(簡単に言えば、テーマとは「ストーリーが意味すること」だ。世の中や人生との関わりだ。)


システムに一応は適応してシステム内でに発言力・影響力を蓄えながら、システムの持つ課題を見据え、システムを改変するために運動する。

「残酷な社会だからこそ、自分は拡大する『貧富』の格差のうち、『富』の側に入れるように頑張ろう」

残酷な社会でどう勝つのか…..。残酷な社会など望んでいないのに。
人は、残酷な社会で機能しているシステムに対して無批判に最適化して美味しい立場を得ようとする。
すると、ますま現状の残酷な社会を強固で動かしがたいものに変えてしまう。

ではどうやってシステムを変えれば良いのか。本書では、システムに適応しながら、システムに対する批判的な眼差しを失わない、という二重性を破綻なく持ち合わせることが必要であると述べられています。

本書では、システムの機能不全を修正するために運動しているニュータイプがどのようにオールドタイプに影響を与えるのか、ニュータイプの今後の活躍を実感することができます。

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本書は以下の本です。


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