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ケニアFinTechスタートアップレポート

AF TECHとして初めてのNoteの投稿は、ケニアに滞在する筆者がアフリカのFinTechスタートアップの現状分析をまとめたものを紹介している。

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さて、少し話はそれてしまいましたが、ここから連載で、ケニア、南アフリカ、ナイジェリアと各国のFinTechスタートアップを紹介していきたいと思っている。

今回は、ケニアのFinTechスタートアップにフォーカスして紹介した。

ケニアでFinTechスタートアップが勃興する背景、それぞれのサービス、資金調達額、それらの中でも特にマイクロローンサービスを提供するスタートアップ、そして最後に今後の動向予想を紹介している。

まだまだ、資金調達額ではその他地域と比べてかなり少ないが、人口が増加し、スタートアップへの環境が整い、結果として多くのスタートアップが登場し、投資が集まるようになれば、中国、インドのような発展を見せる可能性があると筆者は信じている。


目次

・アフリカへの投資額とアフリカへの投資を牽引する3カ国

・世界全体での資金調達額と牽引する中国

・金融サービスを提供するスタートアップによる資金調達額と詳細

・ケニアのFinTechスタートアップ事情

・ケニアFinTechスタートアップの業界マップ

・ケニアのFinTechスタートアップと資金調達額

・億越えの資金調達を行っているケニアのFinTechスタートアップ

・ケニアで期待のマイクロローンスタートアップ

・マイクロローンスタートアップの与信の与え方(Talaの事例)

・ケニアのFinTechスタートアップの今後の動向予想


アフリカへの投資額とアフリカへの投資を牽引する3カ国

Partech Venturesが発表した年間投資額レポートによると、2017年のアフリカのテックスタートアップへの投資額は5億6000万米ドルに達した。これらは、昨年比56%の成長率になる。2016年の77の投資ラウンドに対し、2017年は、124のスタートアップが合計128の投資ラウンドに参加した。

以下は2015年~2017年に渡っての投資額をグラフにしたものである。アフリカのスタートアップへの投資額は年々増加傾向にあるのが分かる。

またこれらのアフリカ域内での投資額は、南アフリカ、ケニア、ナイジェリアの3国が牽引している。上記3ヵ国以下の国々からは倍以上の差がある。

現状投資家が注目しているのは上記3か国である。

大型調達が生まれているのもほとんどが上記3ヵ国からのスタートアップである。


世界全体での資金調達額と牽引する中国

参考までに、PwCとCBI Insightsが共同でまとめたレポートによると2017年の世界全体のスタートアップへの投資額は1640億米ドルであった。そのうちアジア地域への投資額は708億米ドル。多くは中国とインドのスタートアップが牽引している。

2017年に最大規模の資金調達を行ったスタートアップ6社の内、4社は中国のスタートアップによるものであった。

2017年に中国の配車サービスである「滴滴出行」はソフトバンクより40億米ドルの資金調達を実施している。

アフリカでの各スタートアップの資金調達額は、相対的に見ると圧倒的に少ない。

しかし、中国やインドといった人口が多い国が近年急成長を見せていることから、大陸全体ではそれらの人口に匹敵するアフリカもまだまだ成長の余地は大きい。

アフリカ内のスタートアップへの環境整備が進み、投資が集まるようになれば、それらの国のように成長を遂げる可能性は十分あると思っている。


金融サービスを提供するスタートアップによる資金調達額と詳細

さて、アフリカでは投資家はどのようなテックスタートアップへ出資をしているのだろうか。

以下は2017年に出資されたテックスタートアップを分野別に円グラフにしたものである。

上記、2017年の投資額の中で、全体の45%にあたる2億5300万米ドルが金融サービスを提供するスタートアップによる資金調達であった。

それらには、Off-Grid Tech、Fin Tech、InsurTechが含まれている。

まずは、Off-Grid Tech。全体の21%である1億2000万米ドル。(前年比マイナス10%)合計13Deal。2016年の1億3400万米ドルと比較してもほとんど変わらない投資額だ。

しかし、2017年はそれらのスタートアップによる、117万米ドルのDebtファイナンスが行われている。それらを合わせると、資金調達額は増加している。

次に、Fin Tech。全体の21%。1億1900万米ドルの資金調達。(前年比プラス70%) 合計21Deal。

前年と比較すると明らかにFintechサービスを提供するスタートアップが増えている。

最後に、InsurTech。全体の2.5%。1400万米ドルの資金調達。(前年比プラス470%) 合計4Deal。

まだ、調達額は少ないが、2017年に新しく登場してきたのがInsurtech系のサービス。既存の保険サービスではすべての人をカバーできるような存在になっていない。消費行動が変わりつつある現代において、それらにフィットする形の保険サービスは必ず必要になる。

また、アフリカでは、InsurTechスタートアップはアフリカの低所得者をいかにカバーすることができるかが鍵になってくるだろう。

上記詳細を見ると、金融関連のスタートアップの中でも、FinTech、InsurTechによるスタートアップの資金調達額の増加が目立つ。2018年もさらなる調達額の増加が予想される。

今月、Google Launchpad Africaに選出されたスタートアップが発表されたが、選出された12社の内、5社がFinTechスタートアップであった。

詳細はこちら

Google Launchpad Africaに選出されたスタートアップ12社

また、FinTechスタートアップで最近話題となったのが、Ycomのアクセラレータープログラムを卒業したナイジェリアのスタートアップのFlutterwave(ペイメントソリューションを提供)がシリーズAラウンドで1000万米ドルの資金調達を実施したニュースだ。これらはアフリカのスタートアップの中でも資金調達額の多いスタートアップの一つだ。


ケニアのFinTechスタートアップ事情


さて、前章では、アフリカにおける投資額の推移、その中でも最も注目されている金融セクターの投資額の詳細を紹介した。

今後、ケニア、南アフリカ、ナイジェリアの順で各国のフィンテックスタートアップ事情を紹介していく。

今回はケニアのフィンテックスタートアップを紹介する。アフリカ市場の中でもケニアは、FinTechスタートアップが躍動する特殊な背景がある。

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