南アフリカFintechスタートアップ業界マップ

南アフリカFintechスタートアップレポート


今回のレポートでは、南アフリカのFintechスタートアップに関して特集している。

前回のケニアFintechレポートに引き続き、南アフリカ版のレポートとなっている。


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今回の南アフリカFintechレポートの目次は以下になる。

目次

南アフリカFintechスタートアップ事情・背景
南アフリカのハブ化によるFintech企業の誘致
Fintechスタートアップの勃興に伴う南アフリカ大手銀行BIG4の動向
南アフリカFintech業界マップ
南アフリカのFintechスタートアップの資金調達額 
億越えの資金調達を実施している南アフリカのFintechスタートアップ 
南アフリカで期待のFintechスタートアップ 
南アフリカFintechスタートアップ今後の動向




南アフリカFintechスタートアップ事情・背景


南アフリカにおいて、Fintech企業に対する規制は 南アフリカの中央銀行である The South African Reserve Bank(南アフリカ準備銀行) が担当している。

この南アフリカ準備銀行は、南アフリカをFintechスタートアップにとっての「ハブ」にすべく、大きく分けて3つの取り組みを進めようとしている。

先に簡単にリストアップしておくと、以下の3つになる。

1. 仮想通貨を扱う企業に対するレビュー制度
2. Fintech企業に対するレギュラトリー・サンドボックス
3. 南アフリカ準備銀行による資産の分散型台帳管理 への移行、実証実験

1. 仮想通貨を扱う企業に対するレビュー制度

今後、仮想通貨を扱う企業は南アフリカ準備銀行によるレビューが必須となる。それらの企業は、仮想通貨の扱いに関する適切なフレームワークを作成し、取り扱うにあたって規定した規制をまとめたドキュメントを南アフリカ準備銀行に提出しなければならない。

これらはユーザー、投資家保護の観点や、マネーロンダリングを防止する観点から実施されるものとなる。

2. Fintech企業に対するレギュラトリー・サンドボックス

南アフリカは、Fintech企業にとっての「ハブ」になることを目指している。そこで、導入ようと検討しているのが、レギュラトリー・サンドボックスだ。

レギュラトリー・サンドボックスとは、Fintechサービスを提供する企業に対して、実験的に規制を停止し、サービス導入を積極的に進めるという施策だ。

まずはサービス導入を促し、国、民間、ユーザーの反応を見たうえで規制に関する議論を深めていく体制を選んだ。

まずは導入を促し、事例をたくさん保有したうえで規制を考えていく姿勢だ。

これらはFintech企業にとって、サービス導入のしやすさ、規制を共に創っていくことができるという点で魅力的であろう。

3. 南アフリカ準備銀行による資産の分散型台帳管理 への移行

最後は南アフリカ準備銀行の分散型台帳の利用による資産管理体制への移行だ。

この施策はとても強烈で、国として汚職をなくすために中央集権ではなく、分散型台帳による資産管理で、クリアな政治を目指していくというメッセージが含まれている。

民間だけでなく、国としてもクリアな政治を目指し、国全体でFintech企業の持続的なサポートを促していこうという姿勢が伝わってくる。


南アフリカのハブ化によるFintech企業の誘致


南アフリカは、国としてもFintech企業をサポートしていく方針であることは先ほど明記した。

南アフリカのFintech企業にとっての「ハブ」化を目指して、民間企業もサポート体制を手厚くしている。

Barclaysのアクセラレータープログラムである「Rise」やAlphacodeのアクセラレータープログラムがそれらに当てはまる。

彼らは現地Fintech企業をメンタリングや先行事例、企業のマッチングなどでサポートし、彼らの持続的な成長を促している。

それらには過去のあるサービスの南アフリカ市場での失敗が関係している。

前回のケニアFintechスタートアップレポートでも解説したが、ケニアではSafaricomが2007年にリリースしたM-PESA電話回線を利用したお金の送金サービス)の普及によって、Fintech企業が進出しやすい状況になっている。

前回のケニアFintechレポートは以下から


南アフリカでも同様にM-PESAと同じようなサービスを展開しようとした企業がいた。しかし、それらは全くといっていいほど浸透しなかった。

南アフリカはすでに銀行が正しく機能しており、既存の銀行の仕組みを利用する必要のない全く別のフレームワークを利用するM-PESAのようなサービスに対する規制が厳しかった。

それに加え、ケニアではキオスク(日本で言うコンビニ)がM-PESAの代理店(お金の預け入れや引き出しをできる)として機能したおかげで、都会、田舎に限らずどこでもサービスを利用できるという点が普及を後押しした。

一方で南アフリカの事例では、キオスクのような代理店を利用する仕組みを構築できず、ほとんどサービスが認知されることなく失敗に終わった。

ここで一番大きな問題なのは、技術的な問題によって失敗してしまったということではない点だ。

それらのサービスの普及を妨げたのは、規制とサービス認知不足によるものだ。

当時の反省から、南アフリカ中央銀行がFintech企業に対する規制緩和、またルール作りを進めている。

それに加えて、BarclaysやAlphacodeといった民間企業は、Fintech企業の持続的な成長のためのサポート体制を構築している。

国、民間企業の両者とも、過去の失敗を反省し、南アフリカがFintech企業にとっての「ハブ」になるべく日々邁進している。


Fintechサービスの勃興に伴う南アフリカ大手銀行BIG4の動向

南アフリカがFintech企業のハブになることを目指すうえで、銀行はどのような対策を行っているのだろうか。銀行の存在を代替するようなFintechサービスが増えていく中で、今まで盤石の立ち位置であった銀行も立場を揺るがされつつある状況にある。

南アフリカでは口座所有率は人口の75%と高い。他のアフリカ諸国と比べて高い水準にはあるが、今後どうなるか誰もわからない。

南アフリカの各銀行は、銀行サービスのデジタル化、低コストオペレーションモデル、各サービスとの統合を進めている。南アフリカでのFintechスタートアップの勃興によって、銀行も黙ってその様子を見守っているわけではない。

南アフリカの各銀行は、Swift(国際送金のメッセージングサービス)のプロジェクトに参画しており、Swiftと一緒になってブロックチェーンアプリケーションを用いた国際送金サービスの実証実験を行っている。

その他、どういった取り組みを行っているのか。南アフリカの銀行のBIG4である、Standard Bank、Barclays, Firstland Bank、NedBankの動向をそれぞれ見ていこう。


●Standard Bank Group

まずはStandard Bank Groupの取り組みを紹介したい。

Standard Bank Groupはブロックチェーン、AI、IOTなどテクノロジーの発展に伴って、それらのテクノロジー持続可能な発展を促すために以下の基盤を準備することが必要だと考えている。

1. 既存のファイナンシャルシステムの開発、統合プラン
2. Fintechサービスの影響を最大化するためのプラットフォーム
3. Fintech企業同士の競争の激化

そこで、Standard Bank Groupは南アフリカにFintechスタートアップを誘引するために、USベースのINV Fintechが主催するaccelerlatorプログラムにパートナーとして参画している。

Standard Bank GroupはFintechスタートアップに対するメンタリングを通して、今後投資検討、もしくは買収検討するスタートアップを探していく。

また、彼らのメンタリングを通して、どのような開発、統合プランが必要であるのかも同時に検討していくことだろう。

実際、Standard Bank Groupは2016年12月にQRコードによる決済を可能にするSnapscanを買収している。


●ABSA Group Bank (Barclays Africa)

Barclays AFricaも同様に、Fintechスタートアップとの共存を図ろうと取り組んでいる。Barclays Africaは、Techstarsと協力し、昨年、Barclays Acceleratorプログラムを実施した。当プログラムには10社のFintechスタートアップが参加した。

また、Barclays Africaは、参加した企業の内9社とコラボレーションすると発表している。

Barclays Africaとのコラボレーションを発表した企業は以下に記載しておく。

Abe,AI
Howler
Spatialedge
Sun Exchange
FOMO Group
Avenews-GT
Byte Money
FlexPay
Kapitalwise

また、Acceleratorプログラムの他にも、IoTスタートアップや、新たな信用スコアリングアルゴリズムを抱えるスタートアップとの実証実験も行っている。若年層のユーザーを囲うために、様々なスタートアップに目を光らせ、既存のファイナンシャルサービスとどのように共存できるのか模索している。


●Firstland Group Bank

FirstLand Groupは銀行機能としてのサービスを強化していく方針だ。

FirstLand Groupは、世界銀行と2億米ドルのローンを組み、南アフリカ内の中小企業への融資サービスを拡大していく。

Firstland Groupは融資だけでなく、リスク対策サポートや、アドバイザリーサービスを通して、南アフリカの中小企業の底上げを促進していく。

今回のプログラムで、今までカバーできていなかったセグメントの中小企業に対して、融資を行っていく。中小企業への融資を通して、南アフリカでの雇用創出にも貢献していく。


●Nedbank

NedBankも同様にAcceleratorプログラムを実施することで、Fintechスタートアップとの共存を図ろうと取り組んでいる。

プログラムに参加したスタートアップへのメンタリングを通して、どのようにサービス拡大を行うことができるのか、また自社サービスにどのように統合することができるのか検討している。

NedBankは実際にイギリスでローンサービスを提供するMisysと提携して、企業向けの融資サービスを開始している。詳しくは述べられていないのだが、以前と比べてテクノロジーを利用することによって、より利便性の高い融資サービスを提供できているとのことだ。

昨年末には南アフリカの中小企業への融資プログラムを実施するとして、the African Development Bank Groupより1億7200万米ドルの資金調達を行っている。


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