239.ハッピーエンド

この間の土日、夫が社員旅行で金曜夜から不在で、子どもたちは土曜日から夫の実家に遊びに行く予定にしていた。
私は彼のマンションに泊まりに行くはずだったのに、金曜日の夜から下の子の体調が怪しく、悪い予感が的中して翌朝発熱してしまった。

何ヶ月も前から計画して、日曜日は某デートスポットのチケットも前々から買っていたのに。
もう泊まりに行ける機会なんてほとんどないだろうに、なんでわざわざこの日に合わせて子どもが熱を出すのだとガッカリした。
(結局、子どもはインフルエンザだった。今はすっかり元気!)

子どもは出席停止なので当面在宅勤務になってしまったけど、昨日だけは夫に在宅勤務で対応してもらい、私は出社していた。
夫と子どもは家にいるから学童にお迎えに行く必要もないので、ここぞとばかりに定時後も会社に残って仕事をしていると、珍しく彼からメールが来た。

彼「今日はまだ仕事かなー?」
私「まだ会社にいますよ!今日は早く帰れそうですか??」
彼「もう疲れましたねー」
私「そっかー、癒してあげたいですね」
彼「癒してー」
私「よっぽどお疲れなんですね。しばらく会えないしなぁ。」
彼「今から会いますか」
私「〇〇が大丈夫なら」
彼「ほんとに?」

急遽会うことになった。
でも、今日は夫が子どもたちを見てくれているとはいえ、あまりに遅くなるのは気がひけるのでほどほどに。
「もう少し仕事してから帰ってもいい?」と夫にLINEしておいた。

待ち合わせ場所に私の方が早く着いて待っていると、
「もう〇〇町ですか?」とメールが来た。これから会社を出るのかな?ここまで歩くと25分くらいかかるので、今日はほとんど会えないなぁと思いつつも待っていた。わざわざ家と反対方向の電車に乗ってでも、一目でいいから会いたかった。

少しすると、目の前に自転車を引いた人影が立ち止まった。
彼だった。
まさか自転車で来るとは思わなかった。
少しでも会う時間を確保しようと、レンタルサイクルを使って駆けつけてくれたのだった。

一緒にいられる時間はあと20分くらい。まだ人通りも多い時間だったから、知り合いに見られる可能性もあるのでベンチで少し離れて座った。
当然セックスもしないし、手も繋がない。少し話すだけのために彼は会おうとしてくれた。

約束していたわけではない。確かにチャンスの日ではあったけど。
でも彼はとにかく最近忙しくて前日も22時過ぎまで仕事をしていたから、今日もきっと遅くまで残って仕事だろうと思った。仕事の邪魔をしてはいけないので、私からは会おうとは言い出せなかったけど、珍しく彼の方から「会いますか」と提案してくれた。

20分なんてあっという間に過ぎて、私が乗る予定の電車の発車時刻が迫っていた。
しばらく会えないはずが、短い時間でも思いがけず会えた。

少しでも頑張って会いたいほどに想い合っているのかと思うと、嬉しい反面、恨めしく思う。
結局は私たちは道に外れた関係であることは間違いなく、これを"純愛"などと美化する気はない。
でも、お互いを想う気持ちがあるまま引き離されてしまうことについて、ただただ残酷、だとは思う。


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