245.やっておきたいこと

同窓会のあとは駅で待ち合わせして、夜景が綺麗な場所へ移動した。このエリアは私が学生時代によく遊んだ場所で、夫が婚約指輪をくれた観覧車もライトアップされていた。
「あれ乗ります?旦那から婚約指輪もらって正式にプロポーズされた観覧車なんですけどねー」
「いや、乗りませんよ!バチ当たるでしょ!」と笑った。
観覧車はやめたけど、私が学生時代にはなかった新しい乗り物があったので、それに乗って夜景を堪能した。もうここに彼と来ることはないだろうから、最後に2人で乗れて良かった。

そのあとは電車に乗って彼の家の方向へ2人で帰った。スーパーで夕飯の材料を買って、今夜は初めて私がキッチンに立つことに。テキパキと準備をしていると、
「料理なんてできそうにない顔してるのに。ちゃんとできるじゃないですか」なんて言われた。
料理できそうにない…エロいことばっかりしてるからかな。一応長年主婦やってるんでこれくらいは。
切れ味の悪い包丁と、狭いキッチンに苦戦しながらも鶏団子鍋と余った卵で出汁巻き卵を作った。

鍋をつついて、前に2人で選んで買った日本酒を飲みながらゆっくり話した。何を話したかな。忘れちゃうくらいどうでもいい話をしたと思う。

手料理もその一つだけど、彼が帰るまでの残り1ヶ月は、後悔しないようにやりたいことをやろうと決めた。

「実はカバンに入れて持っていってたんですよ。
でも、そういう雰囲気じゃないかなと思って出しませんでした」

彼はそう言って見せてくれた。
えげつない形の遠隔ローター。

そんなものをカバンに忍ばせて会いに来ていたのだった。
前にそんな話はしてたけど、本当に買っていたとは…。
彼にはそのテの性癖がある。
自転車を漕ぐと仕込んだバイブが動くとか、ノーパンで街を歩かせるとか、ローターを下着に忍び込ませて感じさせるとか。そういうシチュエーションに興奮するらしい。
もちろん奥さんや歴代彼女に試したことはないし、私たちも今までやったことがなかった。
それも「後悔しないようにやっておきたいこと」の一つか。とりあえず、部屋の中で試しただけでも彼は大興奮していた。なんか、可愛い。
実際に外でやるかどうかはわからないけど、遠隔操作できることをちゃんも確認したので、検討の俎上にはあげておくか。

翌日は、前から行きたかった場所へ。
ただの高層ビルの屋上ではあるけど、特別な仕掛けのある場所。
とってもよく晴れていて、風もなく暖かかった。
まだ午前中だったから人も少なくて、都会の真ん中なのにのんびりとした時間が流れていた。
撮影スポットでスタッフが写真を撮ってくれて、思い出にデータだけ買った。
私も彼も初めてきた場所は期待以上だった。最後に彼と一緒に来られて良かった。

そういえば、ケータイの位置情報は大丈夫だろうか、と今更思い出したけど、なんと数日前からまた位置情報をオフにしてるらしい。
もう、どうせ帰るからいいんだと、彼は単身赴任の自由を最後に思い切り謳歌することにしたのだろう。

送別会もどんどん入ってくるし、最後に出張も何回かあったり仕事も忙しいから、あと何回会えるか…という感じではあるけど、後悔しないように過ごそう。

とりあえず、次に部屋で会うときには、私のためにギターで弾き語りして!とお願いしておいた。部屋に2本もギターがあるのに一度も披露してもらったことがなかったから。楽しみにしている。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?