243.異動発表後

4月付の異動内示当日のこと。13時から内示だったのに、彼は夕方になっても結果を連絡をしてこなかった。
大事なことはすぐに伝えてほしいのに、と思いながら、私は午後の会議もずっと上の空。
電話で伝えたかったけどお互い会議でできなかった?それとも異動なしだったのか。

終業時間を過ぎ、退社してエレベーターホールでふとケータイを見るとメールが来ていた。
緊張しながら開封すると、
「マイさん、◯◯に帰る事になりました」
その一言だけ。
予想はしてたけど、やっぱりそうか。
反射的にブワッと一気に涙が溢れてしまい、
「そうでしたか。。」とだけ返した。

涙が止まらず、ハンカチで拭きながら電車に乗っていた。夕方、大谷翔平の結婚が報じられたから、もしかしたら熱狂的ファンのオバサンと思われていたかもしれないが笑、「そうでしたか。。」で途切れていたので、彼にもう少し言葉を返そうとすると、涙が出てしまう。
「メール打とうとすると涙が止まらなくなってしまうので、落ち着いたらまたメールしますね」とだけなんとか送ると、
「はい。。」とすぐに彼から返ってきた。

その後家に帰って少し落ち着いて改めてメールを送ったものの、彼は同僚と飲みに行き、記憶がなくなるほど酒を飲んで帰って寝ていたので、その日は何も返事はなかったのだった。

あとで聞いたら、私が泣くだろうと思って仕事が終わる頃にメールをしたらしい。仕事中に泣き出したら周りは何事かと思うし、彼の対応は正解だったと思う。
私は内示の前日あたりからそわそわして食欲もなく、眠れなくなった。4月異動の有無は関係なく家族と住む事は決まっていて、このままの関係を続けられないことはわかっていたけど、どういう形になるかというのは重要だった。
結果は地元に帰るほうに。さすがに遠距離になったらもう会えない。こっちにいれば家族がいても少しは会えたかもしれないのに。
もう、彼とは続けられない。こんなに好きなのに、別れないといけないなんて。本当に悲しい。

でも、気持ちを切り替えることにした。
お互いの家族や職場に不倫が発覚する前に終わりにできて良かった!
彼の予定を気にせずに有給休暇が取れる!
連絡が来なくてモヤモヤすることもない!
帰省のたびに寂しくなることもない!
付き合う前は、彼がいなくたって私は趣味も色々あって楽しく過ごしていたのだから、大丈夫!また昔みたいにピアノに打ち込めばいいんだ!

その日の夜は子どもに夕飯を食べさせたあと、ピアノ部屋にこもってピアノをひたすら弾いていた。彼との思い出の曲というわけでもないのに、弾いてるとなぜか彼と一緒に行った公園の風景とか、彼にまつわる色んなことが頭に浮かんでしまい、結局涙が出てしまった。彼は私のピアノのファン1号(自称)だったのもあるかもしれない。彼と泊まりがけの旅行やデートに出かけて現地のストリートピアノを彼の前で弾いた。ピアノも結局、彼との思い出になってしまっている。

1年9ヶ月というのは長過ぎたのかもしれない。忘れるにはかなりの時間がかかるかもしれないけど、もう会えない人のことを思い続けるのは辛すぎるので、4月からは自分からは連絡しないようにしようと思った。

でも、彼に会って気持ちを聞いたら、ちょっとずつ考えも変わってきた。

長くなるので続く。

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