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ヴァージル・アブロー論

 キム・ジョーンズの後任として、ルイ ヴィトンのアーティスティック・ディクレターにヴァージル・アブローの就任が発表されたのは今年3月。そして先日、とうとうヴァージル・アブローによるデビューコレクション、ルイ ヴィトン2019SSメンズコレクションが発表された。

 ショーのラストでカニエ・ウェストとヴァージル・アブローが泣きながら抱き合うシーンを見ていたら心に響いてくるものがあり、とてもいいシーンだった。だから、この余韻に浸らせることなくぶった切るように中継を終了させられて、怒りも感じた。

「おい!そこで切るのかよ!!」と。

 しかし、その感動的なシーンとコレクション、つまりファッションデザインは切り離して考えてみたい。

 私はヴァージルのデビューコレクションをリアルタイムで映像を見ていたのだが、終始感じていたのはこの感情だった。

「よくわからない……」

 1stルックから最後のフィナーレまで見ていて、ずっとこの感情が支配していた。

 そのあと、ショー映像を再び見てみたのだが、やはり感じるものに変わりはなくて「よくわからない……」となった。なぜ「よくわからない」となるのか。これは自分だけが感じる感情なのか。おそらくこのコレクション、メディアは賞賛するだろう。私のように感じるのは少数派なのか。しかし「よくわからない」と感じたのは事実で、しかも「わからなさの理由がどこにあるのか」わからない状態だ。

 この感情は、このルイ ヴィトンのメンズコレクションだけでなく、その前に発表されたヴァージルのシグネチャーブランド「オフホワイト」の2019SSコレクションを見ていても感じたことだった。

 それは今回に限った話ではなくて、過去にオフホワイトのコレクションを何度見ても、ヴァージルのデザインは私には難解すぎるのか、心を突き動かす「何か」を感じることができずにいた。

 なぜだろう。

 私は、この極めて個人的感情の理由を探りたくなる。そのヒントが思わぬ早さでやってきた。それは、2019SSシーズンからウィメンズのショーを中止し、メンズのみでショーを開催することになった高橋盾によるアンダーカバーのコレクションを見たことだった。

 同時に、この件も思い出す。

「2017年1月に公開された米GQ誌のインタビューにおいてラフ・シモンズは、インタビュアーがヴァージル・アブローやデムナ・ヴァザリア、ゴーシャ・ラブチンスキーの名前を挙げながら、現在の新鋭デザイナーからの影響について聞いた時、その影響を認めながらも『<オフホワイト™>には影響を受けていない』と話していた。はっきり『Not Off-White.』と。理由としては、ラフから見たらヴァージルにはオリジナリティや新しさを感じないということだったらしい」「GRIND online独占インタビュー!ストリートとモードを繋ぐ男ヴァージルは今、何を想うのか」より

 ラフ・シモンズはヴァージル・アブローのデザインについてかなり手厳しいことを言っている。ラフはなぜこんなコメントを残したのか。ポイントは「オリジナリティや新しさを感じない」という点だ。その理由も、アンダーカバーの2019SSコレクションを見ていたら、私には感じられてきた。

 ヴァージルのデザインが完成を見るのは、Kaikai Kiki Galleryで開催した個展「”PAY PER VIEW”」のように、この視点をファッションデザインとしてラグジュアリーとストリートに融合させた時ではないかと、私は感じている。

 アンダーカバーの2019SSコレクション、そして今回のルイ ヴィトンのデビューコレクションとオフホワイトのアーカイブを振り返りながら、ヴァージル・アブローのデザインについて、終盤にはラフ・シモンズとフセイン・チャラヤンのコレクションとも比較し、述べていくことにしたい。

 ヴァージル・アブローのデザインの否定や肯定が目的ではない。ただ知りたい。ファッションデザインのロジックを。同じデザインでも、時代が変わればその評価は逆転するファッションデザイン。そのロジックを解き明かしてみたい。今回はそのためのトライとも言える。 

 それでは、始めたいと思う。

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