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コンテクストアパレルマーケット

 ファッションは視覚と感覚で楽しむもの。その考えが、今までのファッション界における主流だった。私自身もモードを「見て」「感じる」ことでファッションを楽しんできた。

 一方で、私は「ファッションを読む」ことも楽しんできた。デザイナーがどのような思考プロセスでコレクションを制作し、クリエイティブを獲得していったのか。それを読む面白さは、刺激的興奮を私にもたらしてくれた。

 感覚と視覚で楽しむファッションだが、実は昔から論理や思考を楽しむことが繰り返されてきている。

 例えば、コム デ ギャルソン。ギャルソン社が自ら書籍を販売することはない(私の知る限り)。しかし、川久保玲のインタビューがメディアに掲載され、コム デ ギャルソンをテーマにした特集が組まれた雑誌・書籍はたちまち話題となり、人気となってきた(実際売れる)。

 川久保玲の言葉を読み、想像と創造が刺激され、ブランドへの興味を掻き立てられ、コレクションを見て強烈なエネルギーを体験する。そのエネルギーが新たなる川久保玲の言葉を欲し始める。このようなサイクルで、「ファッションを読む」という体験が繰り返されてきた事実がある。

 それはヨウジヤマモトでもそうだ。山本耀司も同様にファッションメディアで特集が組まれることが多いデザイナーであり、彼の言葉のセンスは国内ファッション界No. 1と言え、書籍も出版社から販売されている。岩波書店から出版された「MY DEAR BOMB」はその代表となる一冊だろう。

 ファッションには、ファッションを読むという体験がビジネスのサイクルにナチュラルに入り、それがエンターテイメントとして消費されてきた歴史がある。

 歴史があるということは、そこにニーズがあったからの証明に他ならない。見るだけでなく、読みたいというニーズを抱える消費者がいたという証明である。

 ウェブとSNSは、人々の消費マインドとその行動を変貌させた。

 新しいモノ・コト・ヒトを知ると、現代の消費者は購入する前に、まずウェブやSNSで情報を収集する。情報を知ることで、「新しい何か」に本格的な興味を持つ。そして、新しいモノ・コト・ヒトをひとたび体験すると、消費者は情報への欲求をさらに高める。そのサイクルが、現代の消費者には当たり前の習慣となっている。情報は知れば知るほど、さらに新しい欲求を生み出していく。

 今、情報は商品やサービスの完全なる一部となった。それが現代の姿だと言える。特に、その意識は若い世代ほど浸透していると私は予測する。生まれたころからSNSや高速インターネットが当たり前だったZ世代には、情報収集が自然な消費行動となっている。

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