20181108_日本のデザイン2

日本の新しいデザインを考える -2-

変わり始める時代の波

 2014AWシーズンにヴェトモンが登場以降、ストリートは隆盛を極める。2019SSシーズン、ヴァージル・アブローによるルイ ヴィトンのメンズウェアのディレクター就任によって、ストリートは頂点にたどり着いた。ストリート×ラグジュアリー帝国の完成となる。

 しかし、ストリートは流行りすぎたのかもしれない。時代の新しい波は少しずつやってきて、帝国の足元を揺らす。たしかにストリートが持つルーズでデコラティブなデザインは、未だ健在だ。だが、2019SSではニューヨークから、クリーンでシンプルな服にアヴァンギャルド性を取り入れたデザインが見え始めた。

 その代表はシエス・マルジャンであるし、フィービー・ファイロのセリーヌでキャリアを積んだピーター・ドゥも実験的でありながらシンプルなウェアを発表し、新しい流れを起こし始めている。

 ストリートのカウンターとして現れた、アヴァンギャルド&シンプル、あるいはエクスペリメント&シンプルとも呼べるデザイン。キーアイテムはテーラードジャケットの匂いも漂い始める。カジュアルへのカウンターも現れ始めた。

 今、時代の鍵はクリーンであること。そして、ドレスアップ。たしかにテーラードジャケットが久しぶりに注目アイテムにあがってきたが、クラシックスタイルへ一気に全面移行するほど、人々のマインドは振れていないと僕は感じる。まだ、カジュアルスタイルは必要だ。カジュアルに軸足を残したまま、クリーンさをアップしていく。

 そこに清廉で溌剌としてスポーツを組み合わせ、クールさを増す。その西洋の服を、東洋的の視点で作り上げる。今僕が思い描く、次の時代のデザインだ。

男女の身体を行き来する

 もう一つ、忘れてはならないトレンドがある。ジェンダーレスだ。現在のコレクションシーン、世界の価値観の変遷を見ていると、ジェンダーレスはやはり一過性のものではなく、新しい人間像としてテーマにすべきファッションデザインの必須科目となった。男であるとか、女であるとかではなく「人間」のための服が求められ始めている。その時代の流れ=トレンドに乗り、どう解釈し表現するか。

 僕はフォルムからアプローチしたい。男性と女性、その大きな違いは身体の体型だ。男女の身体は、あまりにその形が違いすぎる。ジェンダーレスで考える必要があるのは、違いの大きい身体に合わせることではない。そもそもそれは、男女間の体型の差異を考えれば不可能だ。だからこそ、今のジェンダーレスを重視される時代には、身体の体型ではなく身体の動きを個性と捉え、その個性を東洋の布の量感で表現する服を時代に提案したい。

 僕はそのフォルムを、こうアプローチする。

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