20180918_原価率

原価率の高さに価値を求めすぎるリスクの表明

「チープな素材で作られた高価格の服を欲しいと思うか」
「雑な縫製で作られた高価格の服を欲しいと思うか」

そう尋ねられたら、あなたはどう答えるだろう。

 おそらく、多くの方は「欲しくない」と答えるだろう。「そんな服がなぜ高いのだ」。そう非難するかもしれない。しかし、そういう服をデザインし、それが大人気となりビジネスを成功させたブランドがある。服の価値を、高い素材や最高技術の縫製に求めない価値観を世界に作り出したデザイナーがいる。まさに、クリエイティブとしか言いようのないデザインをした人間が。

 現在、ファッション界におけるビジネストレンドの一つが「原価率の高さ」である。ピークを過ぎた印象もあるが、未だ継続中のトレンドだと言える。

 私の実感では、原価率20%が業界のアベレージではないかと感じる。20%を切るブランドも珍しくない。30%を超えれば価値観の高い服を作る印象だった。

 しかし、今や原価率40%と聞いても、高いには高いが特別高い印象を感じなくなってきた(実際はかなり高いのだが)。原価率50%を超えることをアピールするブランドも現れ、もはや原価率の高さがブランドコンセプトに思える現象となっている。

 高原価率の服を作る仕組みは、簡潔に言えば生産から販売までの中間コストをカットすることで実現させている。その代表と言えるのはSPA企業のユニクロであるし、また昨今話題のD2C(Direct to Consumer)をビジネスモデルにしたアメリカの「エバーレーン(Everlane)」になる。

 ただ、今回話したいのはビジネスモデルの話ではない。

「服の価値をどこに求めるのか?」

 それが今回のテーマである。問いたいのは、こいうことでもある。

「高価格素材と最高品質の服が、必ずしも価値が高いと言えるのか?」

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