スニーカーブログだったHYPEBEASTは、なぜ世界的メディアとなったのか

*このテキストは「AFFECTUS subscription」「AFFECTUS letters」加入メンバー限定サービス、ニュースレター「LOGICAZINE(ロジカジン)」で2019年6月11日に配信されたタイトルです。

本文は以下から始まります。

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ある一つのカルチャーが世の中でブームとなる時、メディアが大きな役割を果たすことが多い。現在、一過性のトレンドを超えて普遍的スタイルへとなりつつあるストリートウェアにおいても、同様の役割を果たしたメディアがある。

その一つが、今回テーマとして取り上げた「HYPEBEAST(ハイプビースト)」だ。HYPEBEASTは、2005年に当時カナダのブリティッシュコロンビア大学に在学中だった創業者でありCEOでもあるケヴィン・マ(Kevin Ma)がローンチしたものである。当初HYPEBEASTは、ケヴィンのスニーカーマニアとしての偏愛ぶりを反映したスニーカーブログであり、ブログの更新は彼の寝室で行われることもあった。個人の趣味を反映しただけのブログが、2015年には月間4600万以上のPVを集めるほどに成長し、翌年2016年になると香港証券取引所に上場、今ではストリートカルチャーの情報をキャッチアップするためのオンラインメディアとして、世界中から注目されるまでに成長した。

現在、ストリートウェアはこれまでにない隆盛を誇り、一般的な消費者層にまでそのスタイルは普及している。ここまで一つのスタイルがほぼ同時期に、かつ世界的に、しかもマス層にまで普及したのはなぜだろうか。

1976年、アメリカでストリートウェアの起源とも言えるブランド「VISON(ヴィジョン)」がスタートした。現在のストリートを代表するブランド「STUSSY(ステューシー)」が始まったのは1980年であり、ストリートのキング「シュプリーム(Supreme)」が誕生したのは1994年と、ストリートウェアそのものは数十年前から存在し、賛否両論捲き起こるプロモーションを仕掛けてきたシュプリームが創業してからも25年が経過している。

ストリートウェアがここまで市場に人気を急拡大したのは、この5〜6年だと思われる。限定したコミュニティの人気にとどまっていたカルチャーが、なぜに近年になって急拡大したのか。その時、拡散を仕掛ける役割が必ず存在する。現在、その役割を果たしているのがメディアとSNSである。

HYPEBEASTはメディアとして、その役割の一部を担ったと言える。しかもファンとファンを繋げていくSNS的要素も合わせながら。HYPEBEASTは情報を伝えるだけのメディアではなく、ファンとの距離感がかつてのメディアにはない近さを作り出していた。

なぜ、HYPEBEASTがここまでの人気メディアとなったのか。

デザイナーをピックアップするいつものLOGICAZINEとは異なるが、現在デザインの魅力を市場に広め、顧客に価値を感じてもらうことは重要な要素になっており、それもファッションデザインの一部と化している。

HYPEBEASTの拡大には、そのような現在のファッションデザイン(ブランドの価値を市場へ浸透させる)につながるヒントがあるのではないかと思えた。

創業者のケヴィンはどのようなことを考えて、どのような仕掛けを行い、HYPEBEASTを成長させたのか。それを知るために私はケヴィンが過去に受けたインタビューを国内外含めていくつか読んでみた(そのリストは最後に参考資料として付記する)。

すると、一つ真っ先に感じたことがある。

「堅実であること」

そのフレーズが浮かんできたのだ。

ケヴィン(とそのチーム)が行ってきたことは、特別目新しいことではない。その手法はオーソドックスと言えた。当初HYPEBEASTはスニーカーブログであったが、そこからハイファッション、音楽、アート、フードとライフスタイルを含めたカルチャーメディア(ストリートキッズたちが好むであろうテイストの)へと扱う領域を拡大していった。

それは極めて自然なことだ。スニーカーはファッションと極めて関連性が高い。そして、プレミアムスニーカーを入手するファンはたいていハイファッションへの興味も強い。そして、ハイファッションにも強い興味を持つファンはアートや音楽であったり、美味しいフード情報といったカテゴリーへの興味も強いケースが多い。

ケヴィンはファンの望むものが何かを洞察し、HYPEBEASTのターゲットとなるファンたちのライフスタイルにマッチするものを、適切なタイミングで提供してきた。その地道で堅実な繰り返しが、HYPEBEASTの成長過程だった。

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