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デムナ・バレンシアガのデザインに死角はあるのか?

 キム・ジョーンズによるディオールの2019SSメンズコレクションが、ようやく発表された。キムの新生ディオールはストリートのテイストは弱く、むしろクラシックなテイストが強いコレクションではあったが、スニーカーや所々のアイテムやスタイリングを見ると、ストリートの断片は感じられた。

 現在ストリートなデザイナーを、デザインのトップであるディレクターに起用しているラグジュアリーブランドは以下になる。

ルイ ヴィトン(メンズ)ヴァージル・アブロー
クリスチャン・ディオール(メンズ)キム・ジョーンズ
バレンシアガ(メンズ&ウィメンズ)デムナ・ヴァザリア

 キム・ジョーンズはルイ ヴィトンでのコレクションや今回のディオールを見ると、実際はそこまでストリートの匂いはしないのだが、シュプリームとコラボした2017AWコレクションのインパクトがやはり強く、ここではストリートに分類したいと思う。 

 もし、ここにシャネルがカール・ラガーフェルドの後継者にストリートなデザイナーを選んだら、ストリート帝国の最終形態完成といった様相だ。その可能性はかなり低いだろうが、何が起きるかわからないのもモードである。

 ファッション界で一大勢力となったストリート。このビッグトレンドの始まりは、誰によって始まったのか。その答えは一択になる。現在、バレンシアガのアーティスティック・ディレクターでもあり、シグネチャーブランド「ヴェトモン」が世界中で大人気となっているデムナ・ヴァザリアだ。デムナがヴェトモンで作り上げた「マルジェラ×ストリート×ダサさ」が、世界のファッションシーンを一変させた。

 そして今、デムナの影響力は自身の個性を存分に反映させているであろうヴェトモンより、パリの伝説的メゾンであるバレンシアガで増大させている。ヴェトモンよりもバレンシアガ。それが現在僕が抱く印象だ。特にデムナは、バレンシアガにおいてはウィメンズよりもメンズにおいてインパクトの強いコレクションを発表しており、そのインパクトが世界へ拡散している。

 ファッション界で猛威を振るうストリート。その勢いを、才能が大好きで大好きでしょうがないラグジュアリーブランドが見逃すはずない。ラグジュアリーブランドは才能に目がない。才能を見ると、ヨダレを垂らすほどに欲しくて欲しくてたまらなくなる。自分たちのビジネスを到達しうる最高点、いやそれ以上のビッグビジネスにまで成長させてくれるデザイナーが欲しくてたまらないのだ。そして、ラグジュアリーブランドのディレクターに就くことが、デザイナーにとってステータスとなっている。

 今、世界はストリート一択かのようにすら思えてしまう。しかし、皆が皆ストリートウェアを好きなわけではない。ストリートとは異なるスタイルを望む人々が、世界に必ずいる。

いかにしてラグジュアリー×ストリート帝国を崩すか

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