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新しい武器を獲得した新生ヨウジヤマモト

前回はしまむらストリートTシャツに潜むファッションデザインの構造を使い、バレンシアガへのカウンターを考えてみた。しかし、方法論としては面白いが局所的になり、大枠でいうトレンドへのカウンターとしては力強さに欠けてしまう。

 そこで今回は、より大局的なカウンターについて考えてみたい。前回の最後で述べた通り、今日本にはストリートへのカウンターを生み出したブランドがいる。

 新しい武器を手に入れたヨウジヤマモトである。

 ヨウジヤマモトといえば、その魅力は流麗で布の量感を魅惑的に見せる美しいシルエットだ。世界最高クラスと言える山本耀司のカッティングセンスがあればこその武器と言える。そして、その武器が余すところなく発揮された、僕が思う山本耀司生涯最高のコレクションはこれまで何度も述べてきた通り2003SSである。山本耀司のエレガンスが頂点に達した瞬間だ。

 クラシックなエレガンスが濃厚に匂う、ヨウジヤマモトの美しいシルエットが堪能できる見事なコレクションだった。

 ヨウジヤマモトは2009年の経営破綻を乗り越え、2010年8月期から2016年8月期にかけて売上高は2倍強となる約90億円、利益も10億円を超えるまでに成長してきた。現在のヨウジヤマモト最大の武器は、この美しいシルエットではない。その美しいシルエットに代わる新しい武器がデムナ・バレンシアガへの優位性も獲得し、元々のクラシックエレガンスのスタイルも、ストリートへのカウンターとなっている。結果、若者たちの間でヨウジヤマモトブームが起きた。

モードのデザイン軸

 まず、モードファッションを次のような軸で考えてみたい。これは大枠を捉え視覚化することで、わかりやすく考えることを目的に作った。

 ファッションはイメージを作る。そのイメージが消費者の視覚と感性へ訴え、購買意欲を刺激する。ファッションにおけるイメージは、時には商品クオリティを上回るほどに重要だ。そのイメージを作り出す根源は何かと考えた時、僕はフォルムとスタイルだと考えた。

 ここで述べるフォルムとは、シルエット(服の輪郭)とボリューム(服の量感)だけでなく、色やディテールなどまで重層的意味を含めた服の外観を指す言葉だと思ってもらいたい。フォルムの軸を表すものとして、今回は「Decorative」と「Simple」を定めた。スタイルは、それらフォルムの組み合わせが見る人に抱かせる印象を指す表現として用いている。スタイルの軸を表す言葉として、今回は「Dress」と「Casual」を定めた。

 各言葉の説明は以下になる。下記でピックアップする代表ブランドは、現在のブランドのデザインから僕の視点で当てはめたものである。

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