「FOOT×BRAIN」で紹介された2枚の写真が撮られた15分間のエピソード

今回のnoteでは、「FOOT×BRAIN」番組中で伝え切れなかったことや少し補足したいことを書いていきたいと思います。


報道の現場においてカメラマンに出来ることはとても限られています。思うようにいかないことも多々あり、想定は常に頭の上を飛び越えていきます。ある程度の撮れ高を確保するためにポジション取りは大切な作業の一つですが、W杯においては国際通信社に優先権があり、僕が選ぶ時には良いポジションは埋まっていました。

だからこそ、工夫が必要だと感じました。

1試合に200人を超えるカメラマンがいる中で、自分よりも良いポジションを持っているカメラマンが多い中でどうやって他と違いを作るか。
僕がW杯で意識していたのは言わば弱者の兵法です。

これを踏まえて番組でも紹介して頂いた2枚の写真を撮影した15分のエピソードを書いていきます。

2018年ロシアW杯準決勝、フランス対ベルギー。祖国フランスとの大一番を前にベルギーのティエリ・アンリコーチの注目度は高まっていました。僕の最初の狙いは、アンリコーチとフランスのデシャン監督、ともにフランスW杯の優勝メンバーである二人をどう写すかでした。

勝負は試合前の15分だと思っていました。W杯において唯一ベンチ前にアクセスすることが許される時間が試合前の15分間なのです。その時だけは所属のプライオリティも関係ない平等な条件。

僕はベルギーのベンチ前で二人を待っていました。
・事前にベルギーの円陣がベンチの目の前で行われることがわかっていたこと
・アンリコーチとデシャン監督の二人を撮る事
これが両立できると思ったからです。

しかし、プランAはあえなく消滅。アンリコーチはフランスベンチの方に歩み寄りデシャン監督に挨拶に行ってしまい、僕は二人の抱擁を撮る事が出来ませんでした。

しかししかし、目の前にアンリコーチがベルギーベンチに戻ってきた後、ベルギーの国歌斉唱の時にこの光景が広がりました。

予期せぬ事態ではありましたが、この光景はある意味でデシャン監督とのシーンを超えていて、ベルギーの円陣用に魚眼レンズを準備していた僕にとってはチャンスでした。背景のスタジアムのカッコよさも相まって予想を超えたスペシャルな1枚になりました。おそらくこの写真は自分以外に撮った人はいないはず。


次にベルギーの円陣を撮りに動きます。ベルギーが試合前のルーティンとしてベンチ前で円陣を組むことは事前に分かっていました。ここからはおそらく1分くらいの短い時間でしたが、今思うともっともっと長い時間そこにいたような試行錯誤の時間です。普通のローアングルで撮っても、上から覗くように撮っても良い絵にならなくて、今度はカメラを地面に置いて超ローアングルを狙いにいきました。そこで前の選手が足を上げてくれたため、そこに腕を伸ばしてファインダーを覗かずに撮ったのがこの円陣の写真です。勘と執念でした。そう言えば聞こえがいいのですが、選手に接触してしまう可能性のある危険な撮り方だったのは間違いありません。それでも撮りたかったというのが正直なところです。

キャプテンのアザールがコイントス終わりで円陣に合流したときには、報道陣はその場から退出を命じられました。転がるように自分の撮影ポジションに戻り、そこで初めて写真を確認します。ピントが外れているものや、画角が甘いものがたくさんある中で、ルカクがチームを鼓舞するシーンが撮れていました。

この2つの写真は自分の予想を超えていきました。運も味方してくれた部分も大いにあると思います。しかし撮影ポジションで恵まれないからこそ見えた道筋でもありました。これが僕のW杯ベストショットの2枚が生まれた15分間です。


長田洋平

この記事が気に入ったら、サポートをしてみませんか?気軽にクリエイターを支援できます。

18

アフロスポーツ

アスリートの一瞬を永遠の一瞬に。 私たちは世界のスポーツを追いかけるスポーツフォトグラファーチームです。日本オリンピック委員会の公式記録の撮影を担当。

#スポーツ 記事まとめ

noteに公開されているスポーツ系の記事をこのマガジンで紹介していきます。
コメントを投稿するには、 ログイン または 会員登録 をする必要があります。