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2023年上半期お気に入り音楽

 2023年上半期で良かった音楽作品紹介です。なんか今年に入ってから、今一つ音楽聴いていて集中出来ていない感じがありました。全てBGM程度にしか耳に入って来ないというか。サブスクで次々と聴いてきた弊害が出てきているのかもしれません。そんな中でも印象的な作品はあったわけですが、自分のためにも、備忘録として文章に起こしておくのは大事かなとも思います。

 2022年の上期・下期はこちらから。↓


『NO THANK YOU』/Little Simz

 配信自体は、2022年の12月から始まっていたそうですが、フィジカル版は年明けて4月からの発売だし、自分が聴いたのも2023年だからということでチョイス。2020年でも取り上げた前作が、かなりの名盤だったわけですが、今作もリズムトラックのセンスの良さ、シークエンスのコード感、ストリングスのメロディと、どれも一級品な作品だと思います。めっちゃ気持ち好いヒップホップアルバム。


『あのち』/GEZAN With Million WishCollective

 ベーシストのメンバーチェンジを経た新作は、ミュージシャンではない人を含めた大所帯メンバーで集まった名義の作品。社会や世相を反映させたメッセージを込めた言葉、パフォーマンスでは、時代を代表する存在になりつつあるGEZANですが、まさしくリーダーシップ的な影響を持ち始めている印象があります。ただ、前作でもそうだったけど、ボーカルのエフェクトがキツ過ぎて、言葉が聴き取れないのが勿体ない気もします。もっと歌詞がはっきりと聴き取れる録音にして欲しいと思ってしまいますが。


『Heavy Heavy』/Young Fathers

 スコットランドの多国籍出身メンバー3人によるユニットの4thアルバム。ヒップホップ、エレクトロミュージックの影響下にある音楽なんですけど、良い意味であまり理路整然としていないというか、完成され過ぎていないバンド感がある音楽性で、そこが魅力だと思います。メンバーの出自もバラバラなように、その音楽性も、エレクトロ的なテクノと民族音楽的な部分、パンクな部分が混然としている異形の芸術になっています。M②『I SAW』はかなりヘビロテした曲。


『This Stupid World』/Yo La Tengo

 最高峰に好きなバンドであり、自分にとっては最早アイドル的な存在であるヨ・ラ・テンゴ久々の新譜。90年代の頃を思わせるフィードバックギターのノイズは、原点回帰というよりはコロナ禍でスタジオに入れなかった反動かもしれません。これまでの作品楽曲はメロディが弱いのも、まだバンドとしてリハビリ時期ということでしょうか。いずれにせよ、7月のフジロックでは必ず、マストで観るつもり。思い切り泣きたいと思います。


『Praise A Lord Who Chews But Which Does Not Consume; (Or Simply, Hot Between Worlds)』/Yves Tumo

 「異形」という言葉で形容されるアーティストという面では、70年代のロックスターたちに存在が近い人なのかもしれません。初めて聴いた前作ではエレクトロ、R&Bの影響を感じていたのですが、今作ではクラウトロック、ポストパンク、グラムロックといった、デヴィッド・ボウイ的な雰囲気を感じさせます。コーチェラの配信でも、ロックスターのようなパフォーマンスでした。今、一番予測がつかないアーティストですね。こちらもフジロックのステージを楽しみにしています。


『e o』/cero

 前作で完全に異常リズムの向こう側まで行き切ったceroの新譜。一聴した時は、今回は聴き易い作品だなんて思っていたのですが、繰り返して聴き直せば直すほど、異常なリズムの組み合わせ、細部まで練り込まれた音の作り込みに仰天させられます。何でこの異様な作品を聴き易いと思ったのか不思議になりますが、聴き流すだけでも、物凄く心地好くてやはり聴き易いアルバムなんですね。この先も愛聴出来そうな大傑作だと思います。ceroは本当に時代を代表するバンドになっていますね。


『ÁTTA』/Sigur Ros

 昨年の来日公演も素晴らしかったシガー・ロスですが、新曲は全く演奏されなかったので、新譜はまだ先かと思っていたところに、サプライズリリース。キーボードのキャータンが復帰しつつも、正式なドラマーは不在のまま。そのためなのか、リズムは強くないアンビエント要素の強い作品になっています。『Valtari』という過去アルバムで既にやっている音楽性にも思えましたが、今作はそれ以上の心地好さで、聴く度にウットリしてしまいます。ストリングス、バンドサウンド、エレクトロの音が、境目なく融け合っていて、この世のものと思えない美しさ。もう新作が聴けないかと諦めていたので、とても嬉しい。


『PetroDragonic Apocalypse; or, Dawn of Eternal Night: An Annihilation of Planet Earth and the Beginning of Merciless Damnation』/King Gizzard&The Lizard Wizard

 毎回キンギザのアルバム取り上げていて、もはやいつリリースがあっても驚かないし、どんな音楽性でも驚かなくなっています。今作では笑っちゃうくらいのメタルサウンド。ドラムのフィルを入れるタイミングは異常だし、散々突っ走った挙句、ラスト曲の後半でエレクトロに切り替わるという仕掛けも、常に裏切りたくて仕方がないという感じ。今年、あと何枚作品を発表するつもりなのでしょうか。


『The Age Of Pleasure』/Janelle Monae

 ジャネール・モネイの新譜は、レゲエ、ダブに特化した作品で、これまためちゃくちゃ心地好い作品。新しい音楽性ではなくとも、ジャネモネの人間力があるので、とても新鮮に聴こえます。ほぼ全曲がシームレスに繋がっていて、DJプレイを聴いているような形でトータル感を出しているのも嬉しい。


『夢中夢』/Cornelius

 2021年のフジロック、ホワイトステージで魅せた人間味のある小山田圭吾としての演奏に、衝撃的な感動を覚えたのですが、今回の新譜でも正に人間的な音のアルバムになっていると思います。詞も、音も、機械的な部分よりも生きている生々しさに満ち溢れていて、前作『Mellow Waves』の発展形として、これ以上ない理想的なアルバム。M⑨『霧中夢』の現実感のない快感には、何度も浸りたくなってしまいます。


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