北へ向かう電車に乗っていた。
心地よい揺れの中で、
私はタブレットを取り出し、
マンガを読み始めた。

ヤバい。
何が？
フィール・ヤング8月号に掲載された
和山やまの「女の園の星」が。
クワガタからはじまる
「風が吹けば桶屋が儲かる」的展開は
汗ばむマスクの下で変顔をくりだし続けても
やりすごせない面白さ。
その気持ちを
本作のセリフから引用するなら、これだ。

「クワガタボーイ　マジ感謝。」

マジ感謝、の気持ちを込め、
単行本「女の園の星」１巻をポチる。
「セツコ」「本当の布袋」
「秘伝のペット」「バズーカ」
「ポロシャツアンバサダー」など、
パワーワードがいくつも繰り出され、
脳内をぐるぐると回り出す。
まずい。
何が？
マスクからただ漏れる笑いを止められない……。

込み上げる雑念（笑い）を払うべく、
パワーワードのひとつ、
“本当の布袋”について考えてみることにした。
…………が、正直よくわからない。
布袋の知識が圧倒的に足りなすぎるのだ。
だが、いまここで後ろ向きになったり
諦めたりしたら「本物の布袋」は廃れてしまう。

思い出せ、思い出すんだ。
そういえばどこかのインタビューで
「最新のHOTEIが最高のHOTEI」だと
本人が言っていた気がする（うろ覚え）。
最高の布袋は、
本当の布袋でなければ成り立たない。
ならば「最高のHOTEI」が
「本当の布袋」……？
でも、布袋は布袋であり、
生きているだけですでに
「本当の布袋」であるはず。
では「本物の布袋」はどこへ。

考えろ、考えるんだ。
えっと、確か去年、
元BOΦWYのドラムとベース、
そしての布袋の３人が数十年ぶりに共演して
「ほぼ実質BOΦWY」だとファンが歓喜したという
ニュースを見た気がする（うろ覚え）。
「ほぼ実質布袋」の布袋が何なのかがわかれば
「本物の布袋」像が見えてくるかもしれない。
「ほぼ実質布袋」、略して「ほぼ布袋」か。
なんだかフィギュアみたいだな……。
実寸、そして「今日から俺は！！」のように
髪の毛をバキッと立たせて固めて、
“ギュイーン！”のポーズをさせれば
「本物の布袋」っぽい。
ん？
「本物の布袋」っぽさって何だ？

そんなことを考えていたら
電車を乗り過ごしていた。

“本物の布袋”と
君（星ぼんやり彦）が言ったから
七月十五日は「本当の布袋」記念日。

2020年7月15日。
自分の人生でいちばん
「本当の布袋」について考えた日。
全然、そんなつもりなかったのに。
和山やま、おそるべし。