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今も夢に見る男の話

もはや呪いなのではないかとさえ思う。

以前、3回しか会ったことないけど今でも好きな男の話、というnoteを書いた。その男と音信が取れなくなって1年以上もたつのに、どうしても忘れられなかった。
自分の気持ちを整理して、胸を巣食う喪失感を昇華したいという思いから書き綴った。会えるのなら会いたいけど、追いすがりたいほど好きな彼はもうどこかに消えてしまったようだし(私が連絡する手段を消去してしまったし)、第一自分でもたかだか2か月程度やりとりしただけの相手にこんなに思い入れるなんて、どうかしていると思ったから。
好きだという気持ちはどうしようもなく事実だけど、どこかで清算しなければならないから、とりあえず胸の内を書きつづって、これで終わりにしたかった。なるべく深刻にならずに、なるべく客観的に書いた。まるで人ごとのように書いた。
そうこうしているうちに、そのうち彼以上に好きだと言える男に出会えればよかった。彼以上の何かを求めているわけじゃない。好きになればそんなものは関係なくなるのだから。
だけど残念ながら、そういう男は現れなかった。現れなかったというか、出会う努力をしなかったというか、その気力もなかったというか、そこまでの労力をかけてやり取りを続けたいと思う人も、いなかったというか。少なくとも、そういう男は私のそばにいない。なんかこの先ずっと、現れない気がする。

今、耳かきなんぞで遊んでいるところだけれど、一期一会で出会った男と別れ、家に帰って一人で過ごしていると、どうしてもあの男のことを思い出してしまう。
軽薄なヤツだと思う。多分嘘つきだ。他人に対して何か責任を持った対応ができる男だとは思えない。アウトロー気質なのか、少し、いや大分言動が危ういところも気がかりだった。少し感情のコントロールも難しい瞬間があるみたいだった。大人としてはだいぶ不出来な男だったと、思う。
だけど、いかつい見かけのわりに、人好きのする耳障りの良い声がどうしようもなく好きだった。危うい雰囲気と無謀さを楽しんでいるような彼の振る舞いに途方もなく惹かれた。まあ、見かけが好みだったというのは、否定できないけど。

そんなことを、割と定期的に振り返ると、どうしてか絶対に夢に見る。
起きた瞬間には色あせてしまう夢なのに、なぜかその男が夢に出てきたということだけは強く認識している。
もう2年以上会っていないのに、もう会えやしないのに、こんなことが繰り返されているので、会いたいと思う気持ちが今でも消えない。

私はあの男に呪われたのかとさえ思う。
いつまでたってもお前以上の男は現れないのだと思い込んでしまうような呪いに掛かっているのか?笑えない。きっとあの男は、今までそんな風に女を苦しめてきたんだろうなと、想像するに余りある。苦痛や憎悪を与えられるよりも、却って悪質だ。少なくとも、私はそう思う。

この先もきっと、そんな風に思いながら、私はあの男の夢を見るんだろう。
質の悪い、依存性の高い心地よい幻に縋りながら、現実に向き合えず、老いていくんだろう。
口では諦めたと言いながら、あの男の欠点を見つけて「思っているような男じゃない」と言い聞かせながら、それでもきっとそのうち会えるかもしれないと、心のどこかで妄信して…。


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